またまたお持たせしました。
前回は
筋肉が固くなって、関節や、背骨の動きが悪くなってしまう 原因不明の状態=病気?があるというお話しでした。
今回はそのまとめと+αのお話しです。
パーキンソン病では、顔の表情が乏しくなる、手が震えるなどの他の症状が加わります。
副腎皮質機能不全という病気もあります。副腎皮質からコルチゾール(ステロイド)の出が悪くなると筋肉の炎症が治まりにくく、筋肉痛が残って動きにくくなることがあります。が、だるい、気持ち悪いなどの他の症状が加わります。
あくまでも、これらのような加わった症状はなく、痛い、動きづらい、以外は、いたって他は元気な状態で、進行して動けなくなることはない状態の時の話です。
五十肩は、肩関節に腱板の損傷や炎症があっても、明らかな原因がなくても、痛いので動かさないのでいたら、肩があまり動かなくなってしまう病気です。
首では、首が曲がって固定してしまう痙性斜頸という病気があります。
腰では、腰が左か右に傾いてしまう方がいます。側弯症がなくてもです。
股関節では股関節の動きが悪くなり、腰や股関節に痛みが出ます。
腰部脊柱管狭窄症では、歩くと痛みが出て歩けなくなってきますが、下肢の筋肉全体が固くなって、さらに動きが悪くなる方がいます。明らかな脊柱管狭窄症がなくても、下肢全体が固くなって歩けなくなる方もいます。腰椎椎間板ヘルニアの方も痛い側の下肢の筋肉が固くなる方がいます。
交通事故では、動かすと痛いので動かさないでいると首が動かなくなる、次第に肩関節も動かなくなる(=五十肩と同じになる)方がいます。
線維筋痛症という病名があります。こちらも原因不明で、全身の筋肉痛と圧痛が診断基準ですが、この中にも動かすと筋肉痛が出て、動きが悪くなる方がいてもおかしくありません。
これらの状態=病気?は、原因があっても、原因がなくても(=原因が不明でも)筋肉が緊張して動きが悪くなる状態です。しかも、動かなくなってしまう原因も不明です。
この状態を 筋緊張異常症 といわせていただきました。この病名はどこにも記載がありません。ですが、健康保険の請求をするときに使用できる病名のリストの中に、筋緊張性障害という病名がありました。この病名は先天的に筋肉が固くなる、筋肉が固くなってどんどん進行する“まれ”な病気を言うのですが、障害という言葉はあいまいなので、少しでも筋肉が固くなる傾向があれば、使っても良いしこの状態に入るのではないか と考えられますので、最初に紹介させていただきました。
この状態がある事を念頭に治療を行っていくうち、さらにわかかってきたことがありますので、述べてみます。
決してまれなことではなく、誰にでも起こりうる状態です。
まず初期の症状です。
最初は、
動かしたときに痛みが出る です。
当たり前の症状ですね。
そして次第に痛みが強くなってきます。痛みが楽になってくる時は大丈夫です。
痛みが強くなってきている方で、
動かして痛みが出るので、痛みが来ないように動かさないでじっとしている と、数日から、1,2週で動かなくなる状態に陥ります。
ただし、動かなくなる まで進む方はごくわずかです。
動かなくなってしまうのではなく、動く範囲(=可動域)が制限される
方が多く診られます。
また、たいていの方は、動かないといけない状況ですので、
動かして痛みが出る ことが 2〜4週経っても、さらには、3,4カ月たっても、ちっともよくならない という症状です。
これでは
すべての痛みがそうではないかと思われてしまうので、
症状をもう少し詳しく述べます。
首腰肩肘などは、あらゆる方向に動かしたときに痛みが出る です。
首、背中、腰は、前後屈、側屈、捻ると、痛みが出る状態です。
首で上を向いたとき、斜め上を向いたときだけ痛みが出る、上肢に痛みが走る は頚椎の椎間板ヘルニアの可能性があります。
腰で、前屈した時だけ、後ろにそらした時だけ痛みが出る、下肢に痛みが走る は腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。
座っていると痛い、起きるとき痛い、歩くと痛い、前かがみの作業で痛い、物を持つと痛い 疲れがたまると痛くなる ではありません。
肘、肩などの上肢も、物を持つと痛い、使うと痛い、ではありません。
股関節、膝などの下肢は、上向きで寝ている状態で、動かしたときに痛みが出ます。
歩いて痛い、階段歩行で痛い しゃがむと痛い ではありません。
動かして痛いので、動かそうとすると、筋肉が緊張して動こうとすることに抵抗する状態 になっています。
日数がたってやや動きが悪くなって 固くなっている と自覚する方もいます。
そして動かして痛いのは、関節や背骨そのもの ではなく、周囲を支える筋肉 と考えます。
五十肩は、動かして痛いので、上肢全体に力が入って、動かすときに肘まで固くなる。前回述べましたね。
→動かして痛い関節がある +周囲の筋肉に痛みが出ている=痛みが上下に広がってきている ときは要注意です。
★動かして痛いのですが、関節の炎症でもなく、筋肉の炎症でもありません。
→いわゆる炎症を抑えて痛みを取る=消炎鎮痛剤の痛み止め の効果があまりありません。
痛みはある程度治まりますが、痛みがなくなって楽に動くようになるところまで改善しません。
★筋肉は、脳からの指令で神経を伝わって動きます。筋肉が緊張するのも脳からの指令 と考えてください。
したがって、脳に悪く影響するもの、いらいら、緊張、ストレス、嫌なことが続く、交通事故でこうなったという被害者意識 治らないのではないかという恐れ 注射が怖いなどの痛みの対する恐怖感 など、すべて悪い方向に働きます。
まさに、痛みは気から です。
★原因がはっきりしている頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアでも、腰部脊柱管狭窄症の方でも、筋肉が固くなって動きづらくなっている方が、なかなか改善しない と考えます。
痛みを恐れずに動かしてよい のです。
動かすな! は、炎症が強い病気、腫れて熱を持つ関節炎、化膿や、骨折などの外傷の、ほんの初期の2,3日です。
後から出てきた痛みのときは、動かしてはいけない は間違い と思ってください。
もちろん、動かし方は、あります。
無理にぐいぐい動かす は悪化します。
次の3つの動かし方が必要です。
1、痛みが強くならないように、ゆっくり動かす。
痛くても、ゆっくり大きく動かす。
痛い方向にも少し位痛くても動かします。つらい時は痛くない方向=反対方向に動かしてから、痛い方向に動かします。動かすと痛いが、動きがあまり悪くなっていない方は、しょっちゅうストレッチや体操をする感じになります。
この運動により、痛みに慣らす ことで、痛の感じ方を減らします。
アレルギーの方が、アレルギーの原因物質に少しずつ慣らして改善するのと同じです。
2、物事に集中してじっとしていること、同じ姿勢を保つことは、筋肉が緊張します。固くならないように、じっとしていないことです。しょっちゅうあるいは常に、ゆすったり、ほぐしたり、伸びをしたり、もじもじしたり、とにかく小さく動いていることです。
もじもじ動けない時は、身体を傾ける、首、上肢下肢の位置を変える など、負荷のかけ方を少しずつでも変えてゆくことです。とにかくゆっくりでもポジションを変えてください。
スポーツ選手が、激しく筋肉を使った後、ゆっくり休む方がよいと思って、じっとしている これもだめです。同じ姿勢でスマホでゲームをしていたりすると、脳が緊張して、筋肉が緊張し、筋肉の疲労が取れません。
3、筋肉を力を入れずに動かす ことです。
軽くストレッチをする。軽く運動をする。とにかく力を入れないような運動は筋肉の血流量が増え、筋肉が柔らかくなりますし、関節液の流れも良くなり、動きはよくなります。
ヨガはうまく行うとよい効果がある方が多いです。
交通事故で後から痛みが出た方で、走ったら楽になった方がいます。動かして痛みがでていた首や肩が、動かしても痛くなくなってきました。しかし、自転車を漕いだらつらくなりました。ハンドルを持つと、上半身が緊張するためです。しかし、どんどん運動するうちに、自転車に乗ってもつらくなくなり、治りました。
筋肉の血流量を上げると、筋肉が柔らかくなる
のですから、お風呂で温めることはよいことになります。
そのあとシップを貼っても良いです。冷やすのではないかと思う方が多いのですが、湿布は冷やす作用はさほど強くありません。温めた後、冷やす を繰り返すことは血流がよくなって回復を早めます。温冷浴という治療があるくらいです。温めるのは全身 冷やすのは局部 と考えてください。
これらが、筋肉固くならないようにするための、自分で行う治療です。
すでに固くなっている方は、ほとんど動かなくても 1 を来る日も来る日も真剣に行ってください。
長引いている方は、とにかく自分でしつこく行わないと、よくなりません。
ただし、いっぺんにやると、多くやり過ぎると、筋肉の痛みが出ます。
少しずつ、毎日毎日、根気よくやることが重要です。
((すでに固くなっている状態が長く続いていると、動くようになると逆につらくなることもあります。
膝の悪い方は、動くようになると、動きがよくなって、歩きがよくなって逆に膝に負担がかかって痛みが増すことがあります。動きがよくなっても、大事に使うことが重要です。
上肢も下肢も固い方が、柔らかくなると、動きがよすぎて、痛みが出てくることもあります。
固くなることで痛みが出ないようにバランスを取っている方もいる と考えています。))
いよいよ医院で受ける治療の話
当院で、筋肉を温めて血流を良くする器械は
マイクロウェーブ(極超短波)の治療器械 です。大きい範囲に当てる、体から放して当てるので、刺激が一番少ない治療です。
今までの当院での治療器械で、筋肉を動かす作用のあるものは、
牽引治療
筋肉をストレッチします。首と腰に行います。
水圧式マッサージベット
筋肉を叩いて動かして、血流を上げます。全身行うことができます。
プロテック治療
腰を牽引しながら、股関節、骨盤周囲の筋肉を動かしてほぐします。肩も一緒の動かすようにしましたので、上半身にもある程度効果があります。
動かす治療 にさらに力を入れてみました。
この目的で導入した新しい器械です。
じっとしていても、筋肉を動かす治療器械です。
GTES =BSES(Belt electrode Skeletal muscle Electrical Stimulation)
腹部、大腿、下腿あるいは足部 にベルト電極をまいて、脚全体に電流を流します。
EMS(Electrical Muscle Stimulation)のようにギュっと筋肉を動かして休んで、また動かす 電流の流し方と 常に低周波数でゆするように筋肉を動かす2種類があります。
もともと前者は歩けなくなった方の歩行改善目的で、後者は、むくみや糖尿病などの運動治療目的です。が、ともに筋肉を動かす、ゆすることで、筋肉の緊張を改善する効果があります。また、筋肉疲労や筋肉痛などのクールダウン効果もあります。
下半身用ですが、胸部と上腕、前腕あるいは手にベルトをまくと、上肢にも使用が可能です。
五十肩で動きが悪く、他の治療でなかなか改善が悪い時は、この治療器械が一番効果があるようです。上肢、下肢の骨格筋を動かす治療器械なので、首、背中、腰を動かす作用は弱いのですが、交通事故後の首肩背中腰が痛い方にもよく効く方がいます。
ポラリスカイネ
こちらは大きめの吸盤を二つ付けて、その間に電流を流して、筋肉を動かします。低周波で動かして休む これを繰り返して、ちょうどEMSと同じように使うことができます。動きの悪い箇所を部分的に治療できますし、GTESは首がほとんど動かないので首にも使うことができます。
一台で、数人同時に治療することが可能です。
EMSとは、
シックスパッドやバタフライアブスなど、貼っておけば、電流で腹筋を動かして鍛えて脂肪を燃焼させる コマーシャルでよく見る アレです。筋肉トレーニング以外にも
低周波で筋肉を動かせば、ゆする運動と同じに、筋肉の緊張が取れるのです。
当院に以前からあるトリオ治療器でもできるのですが、通電が安定せず、セッティングに時間がかかったため、ポラリスカイネ というセッティングが楽でEMSと同じ電流を流すことのできる器械を購入しました。
ベットサイドの膝から下を垂らして足首におもりを付けて、
そのまま引っ張ったままにする大腰筋ストレッチ治療も開始しました。
どんな場合、どの治療がよいのか
大まかな目安を述べます。
体中全身が 固くなる、緊張する、痛い 方は、水圧式マッサージベットです。
少しでも動かすと極端に痛みが出る方は、マイクロウェーブです。
股関節が固く、どんどん動かした方が楽になる腰痛の方は、プロテック治療です。肩関節も同時に治療可能です。
牽引は引っ張ると楽な方に行います。
首は診察で座ったまま引っ張って気持ちよい方に行っています。
腰は診察でベットサイドに膝から下を垂らして引っ張って楽な方が、牽引治療の目安です。
腰を引っ張る骨盤牽引は、股関節を曲げて引っ張ります。
股関節を伸ばして引っ張った方が楽な方は 先程述べたベットサイドで膝から下を垂らす治療を行っています。
下肢全体が固い方、歩くことが困難になっている方は、GTES治療です。
首、肩、肘、膝、股関節、腰痛の部分的な痛みの方は、ポラリスカイネ治療です。
膝、肘、股関節の動きが悪い方は、この二つのどちらも効果がありますが、五十肩の方と同じように、ベルトを巻いて筋肉全周を動かすことのできるGTESの方が効果があるようです。
ただし、GTES治療は、肌に直接ベルトを巻くので、着替えとセッティングに時間がかかる上、一台で一人ずつしか行えない ため、予約制にさせていただいていますので、全員に行えない現状です。