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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
足部の痛みでわかってきたこと
98、なかなか痛みが引かない足部の外傷の話2

 骨折などで形が変わると、腫れや痛みがなかなか取れないのが、足の特徴です。足は、歩くたびに体重が載る、負荷がかかる部分なうえ、小さい面積で支える形になりますので、形が変わると、なかなか腫れや痛みが引かなくなります。

6、足部の足根骨の関節の形などが変わって治る時
 
 前回の項目に6がありませんでしたが、今回に回しました。
 踵骨(赤丸1)が骨折したあと、つぶれたまま治る、(=距踵関節の変形治癒になります。)楔状骨(けつじょうこつ)(赤丸2)が変形して治る、第4,5中足骨が、やや脱臼したまま治る(赤丸3) などです。形が変わると、足は体重以上に負荷がかかるので、なかなかむくみが取れない、痛みが取れない、局部の腫れが取れない などの症状が、3ヶ月〜6ヶ月以上続くこともあります。

 治療は、痛みや腫れが広がっているときは、トリオ治療(ホームページ参照)を行っています。
 温冷浴(私の薦める治療40,41参照)を毎日行うことも効果があります。
 足底板装具(足痛79参照)をつけて歩く。
  これは、土踏まずを支えたり、つぼ刺激を利用して症状を改善する作用があります。当院では、簡易テーピング(足痛78参照)や、ギブスシーネで、足底板の代わりになるものを作って装着してもらっています。
 足趾の運動や、痛みが弱ければ、爪先立ちの運動(足痛92,96参照)をします。

8、足関節の骨折で、足関節の形が変わって治る時
 
 関節の形が変わって治ると、痛みがなかなか引かないばかりか、近い将来、足の変形性関節症になってしまいます。痛みが一度引いても、何年か後に再び、変形性関節症による痛みが出てくるという具合です。(足痛88参照)

 治療は、超音波治療、トリオ治療、スパーライザー治療(ホームページ参照)のどれかを行っています。
 簡易テーピングをしてサポートします。変形や腫れがひどいときは、固定装具をつけます。(既製品でいろいろあります。)
 関節運動学的アプローチによる治療(腰痛13、ホームページ参照)も効果があります。
 炎症が強く痛みがつらいときは、ステロイド剤=副腎皮質ホルモンを関節に注射します。
 軟骨の状態を改善するには、ヒアルロン酸の関節内注射が効果があります。しかし、足関節はもともと関節が小さいので、ヒアルロン酸のような、分子量の大きい、粘度の高い物質を入れると、打った後、3日ぐらい痛みが続くこともあります。
 筋肉トレーニングは、爪先立ちが良いと考えます。足関節を支える、下腿の筋肉を鍛えます。踵立ちは、足関節に体重が載るので、お薦めしません。

 常に歩行などで体重の何倍もの力がかかる下肢の股関節、膝、足関節の場合は、体重ほどの大きな負荷がかかることが少ない上肢の肩や、肘、手関節より、少しの形の変化で痛みが残る可能性が高くなります。このうち、股関節は関節面に直接変形を残すような外傷は少ないのです。膝と足の関節が、関節の変形を残す外傷が多くなります。特に足関節は、膝に比べて、色々な方向の動きがある反面、関節の安定性を保つ機構が少なく、荷重する面積も小さくなります。足関節の骨折のあとの変形治癒は、痛みを残したり、変形性関節症になる可能性が高く、正確な整復=手術を薦めることが多いのです。わたしは、どこまで手術をしないで楽になるか、手術をしないで治るかを専門にしている いわば、整形内科医です。それでも、足関節の外傷は、活動性の高い、若い方には、手術で正確にもとの形に戻すことを薦める場所のひとつになっています。
| 足痛 | 06:43 | - | - | - | - |
足部の痛みでわかってきたこと
97、なかなか痛みが引かない足部の外傷の話1
   (はっきりした骨折のない場合)

 今回は、足部の外傷の後、なかなか痛みがひかない時に考えられることを、足関節の明らかな骨折のない外傷を中心に挙げてみます。足趾の場合の話は 93でしましたので今回は述べていません。

1、固定安静が不充分な時
 
 A,靭帯の損傷がひどく、場合によっては断裂していても、ギブスなどのしっかりとした固定をしなかった場合。(剥離骨折ぐらいは含みます。)

 骨折=ギブスと考えていると、それ以外はすべて捻挫になり、あまり重症でないと思って、ギブスなどの強固な固定を望まない方が大勢います。特に腫れがあまりない場合はギブスは大げさです。しかし、あまり腫れていなくても、靭帯が切れている場合があり、しっかりした固定を行わないと、治りはかなり遅くなります。通常は、1〜2ヶ月で完治なところが、3ヶ月以上もなんとなく痛みが続きます。

 B,安静が必要な時期にどんどん使っている時

 ギブスで固定しても、その期間が短く、はずした後、どんどん使ってしまう時。
 絆創膏固定(テーピング)などの固定をしていても、指示よりも早めにどんどん使ってしまう時。
 自己判断で勝手に固定を止めてどんどん使ってしまう時。などです。
  特に、若い方に多く、痛みがなくなるとそのまま使ってしまう方も多く、腫れがいつまでも引かない方がいます。痛みが先に引いても、実際は治っていない=腫れが残っている ことも多いのです。やはり、3ヶ月か、それ以上ぐらい腫れが残って、治った となかなか診断できなくなります。

 このような場合の治療は、使う時、昼間はテーピングなどの固定(86足関節捻挫を参照)をしながら使うこと。痛みが出ない範囲の運動にとどめること。足関節の動きは、背屈、底屈方向だけ動かし、(図1)ひねりを加える動作を避けること。もちろん、当院で行っている超音波治療、スーパーライザー(レーザー)治療、トリオ治療(ホームページ参照)は早く治す効果があります。いずれにしても、根気よく痛みが引くまで治療を続けることです。どうしても治りが悪い時は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の注射を打って、炎症を抑えると改善すると考えられますが、上に述べたことを守らずに、どんどん使っていては意味がありませんし、そこまでの(注射の)治療をした方はほとんどいません。
図1
2、固定や安静が長すぎた時
3、自律神経の過敏状態を起こした時
4、腫れが引かない状態が1ヶ月続いた時

 どのようになるか、結果がほぼ共通なので、一まとめでお話します。
 2は、使わない、大事にしすぎるという意味です。
 3は、痛みが長く続いた時に起こしますが、原因もなく起こす方もいます。自律神経には、交感神経と、副交感神経があり、このうち、交換神経過敏状態が原因です。(3、痛みは気から理論編参照)いらいらしやすい方、神経質な方は起こしやすくなります。自律神経の調節が悪い方(めまい、たちくらみなどをおこす)は、副交感神経の機能が悪いほうですので、必ずしも当てはまりません。
 4は、3に関連しておこります。自律神経(交感神経)の過敏な反射で、外傷でなくても、痛みでむくみを起こすこともありますので、痛みがなかなかひかない時は、この神経の過敏状態も関係していると考えられます。
 結果は、以下のことが共通と考えています。
 使わずに、動かさずに大事にしすぎたり、自律神経の過敏反射状態が続くと、骨が萎縮(=弱くなる)します。足関節の外傷でも、その部分だけではなく、足先の骨までが萎縮してきます。まるで、その部分の局所の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。足関節や足趾の動きは悪くなります。使っていると、使いすぎると、痛みや、むくみが出ます。朝は大丈夫でも、夕刻になると症状がでます。普段よりも多く歩くと症状がでます。ひどくなると、皮膚がてかてかになって、赤黒くなることもあります。足関節や、足趾の動きがさらに悪くなります。
 このような状態になると、程度に差がありますが、3〜6ヶ月、ひどいと1年ぐらい症状が改善しません。

 治療は、適度の(やりすぎ、やり方が悪いと悪化します。)足趾の運動(92に述べた掴む運動)、足関節の運動(図1の方向に動かします。)、かなり改善したら、爪先立ちや、踵立ちの運動(92参照)も少し加えるとよいと考えます。
 温冷浴(私の薦める治療40〜)を行って、自律神経の訓練を行います。
歩く距離、使う範囲、運動や、負荷の程度は、痛みが出ないようにするまでとします。翌日辛くなったら、前日の運動はやりすぎと考えます。
 骨萎縮があるときは、骨粗鬆症の治療(72、骨粗鬆症の話9)を加えると効果が上がります。特に、カルシトニン製剤は、痛みを抑える神経を賦活しますので、痛みの改善には有用です。局所の骨萎縮の改善にも、骨密度を改善するビスフォスフォネート製剤(朝一番で飲む骨粗鬆症の薬)が有効なのではないかと考えられますが、使用経験はありません。
 リハビリは、当院では、ピンポイントでなく治療範囲をある程度取れるトリオ治療を行っています。

5、足関節の捻挫のあと、距踵関節(きょしょうかんせつ)で痛みが出てきている時

 足関節の捻挫をかなり前にして、そのまま様子を診ていたが、なかなか痛みが引かないといって来られる方の中に時々います。特に最初はそんなひどくないと判断したので、医者に診てもらわなかった=治療をしっかりしなかった方に診られます。距踵関節はあまり強くない方がいて、外傷がなくても、踵や、アキレス腱に痛みが出やすいことは述べました。(足痛77参照)外傷がきっかけで、痛み出だすのは、足をかばって、いつもと違う歩き方、違う体重のかけ方をするためと考えられます。足のくるぶしの下端と同じぐらいの高さにありますので、足関節の痛みがそのまま残っているように診えますが、足首の前後に痛みが出ていたり、踵に痛みが出たり、アキレス腱に痛みが出たりします。
 治療は、距踵関節を安定させるようにテーピング固定(足痛78参照)や、超音波治療を行っています。

7、足関節の外くるぶしの一番大事な靭帯(=前距腓靭帯)断裂で、切れた靭帯が関節の方にめくれ込んでいる時

 足関節の内返しを制動する上で、一番大事な靭帯が、図の靭帯(前距腓靭帯=ぜんきょひじんたい)です。まれですが、この前距腓靭帯=ぜんきょひじんたいが、足関節の中の赤い矢印方向にめくれ込んでいると、痛みが引かず、体重もうまく載せられません。足関節の靭帯が切れた場合、すぐに体重が載せられないこともありますが、少なくとも、1ヶ月以上も体重をかけると痛みが続いて、充分に体重を載せられない と言うことはまずありません。この靭帯の損傷では、比較的に早く(通常1週間以内に)体重がかけれるように、歩けるようになるのです。

 なかなか体重をフルにかけることが出来ない靭帯は、図の前脛腓靭帯(ぜんけいひじんたい)の方です。青い矢印のほうに体重が載るためです。ひどい損傷ですと、6週間ぐらい体重を充分に載せることが出来ません。
 治療は今までの超音波治療、トリオ治療、レーザー治療、足関節の運動(図1)などで経過を診る、関節の中に麻酔の注射をして、靭帯の引っ掛かりをとる治療を試みる、いずれにしても、動かしているうちに引っ掛かりが取れる可能性がありますが、経験がありません。

 私が経験したのは、西窪病院勤務医時代の10歳ぐらいの女の子と記憶しています。経過を診ていっても、なかなか体重が載せられないので、思い切って手術を薦めました。中をあけてみたところ、切れた前距腓靭帯が、関節の中に挟まっていたのです。その靭帯を引っ張り出して、縫い合わせた後は、固定を行って、順調に治っていきました。
 開業してからも、同じような女の子の例がありました。数週間経っても体重が載せられないのです。今回は、エコーで靭帯がめくれ込んでいるような像が見て取れましたので、手術紹介を薦めたところ、来院されなくなったので、その後どうなったかわかりません。
| 足痛 | 18:27 | - | - | - | - |
足部の痛みでわかってきたこと
96、母趾の痛みに関連して

前回の話に関連して述べます。

1、母趾の痛みや障害を予防する運動

 陥入爪の障害だけではなく、母趾の障害による痛みには全て共通すると考えます。
 IP関節(=第一関節)を曲げることが重要です。
 母趾を伸ばしたままつま先立ちをすると、体重は、MP関節(=第二関節)に強く乗るため、前回お話した、母趾の付け根の関節(=MP関節です)が痛くなる方は、逆効果です。IP関節を曲げて、足趾を踏ん張る形の爪先立ちは、MP関節にも、じかに強い負荷がかかりにくくなります。このように踏ん張って爪先立ちの練習をすることが、母趾の痛みの予防にもなると考えています。
 もちろん、足趾を曲げたり伸ばしたりして、足趾の力で尺取虫のように前進する
井口 傑先生の薦める運動が出来ればベストです。

 運動は、やる開始時期を間違えないことです。やりすぎないことです。やり方を間違えないことです。運動を行って痛みが増す場合は、このうちのどれか、あるいは幾つかが間違っていると思ってください。そして、一生続けられるように、習慣付けることです。やめてしまっては、力が落ちて元に戻ってしまう可能性があります。

開始時期
 痛みがひどいときは、安静、固定です。歩いたり、動いたり、使ったりすることも控える時期です。目安として、少しでも力を入れて痛いときは、まだ です。
 痛みが楽になってきたら、負荷の軽い運動を始めます。足趾の場合は、物を掴みあげる運動です。
 痛みがなくなってから、負荷の強い運動を行います。足趾の場合は、爪先立ちの練習です。

やり方と回数
 繰り返し行うよりも、力を入れ続けてください。足趾の場合は、片足ずつ、30秒ぐらい力を入れて保持することを、1日2回ずつ行えば充分です。力がついたと感じるのは、3ヶ月先でかまいません。すぐによくなろうとして、頑張らないでください。

習慣付けるには
 つま先立ちなら、洗面しながら、歯を磨きながらやるなど、いつも必ず行っていることと同時に、必ず行うように癖を付けることが重要です。1、2分ですぐ終わることも重要です。足趾で物を掴む運動は、テレビを見ながら行うなどで、癖をつけてみてください。(足趾を踏ん張って爪先立ちをすれば、こちらは行わなくても充分と考えています。)一般に行われる10分〜20分かかる運動類すべて、最初の何年?何ヶ月?間はやり続けることが出来ても、一生涯やり続けることはできないと考えています。


母趾の痛みの話からはそれますが、前回の感染の治療に関連して

2、感染を抑える、化膿を改善する薬の話

 前回、抗生物質では、効かない細菌があると言うことを述べました。一方、市販薬のオロナイン軟膏は、消毒薬で、すべての細菌に効果があるので、清潔に使えば、有効と言うことも述べました。医師の処方薬は、抗生物質ですので、効果がない細菌が多くなっていることが最近の問題です。皮膚からの感染は、ぶどう球菌と呼ばれる種類の細菌の感染が多く、その中で抗生物質が効き難くなっているものをMRSAと呼びます。膿や浸出液で、細菌培養を行って、感染している細菌の種類を特定して、どの抗生物質が効果あるか調べる方法はあります。しかし、実際は培養を行っても細菌が繁殖せず、わからないことも多いですし、陥入爪の感染は、浸出液、膿が出ることも少なく、ほとんど調べることが出来ないのが通常です。そこで、抗生物質は、ぶどう球菌に効きがよいものを選びます。まず、塗り薬として、消毒薬と一緒に塗ります。それでも改善が悪ければ、内服します。さらに改善が悪ければ、筋肉注射します。さらに改善が悪ければ、点滴します。ただ、注射を嫌がる方も多く、そのような方には、漢方薬を使うこともひとつの方法です。

 漢方薬は、抗生物質のように効き方が鋭くない反面、この菌には効かない と言うこともありません。皮膚からの浅い場所の感染では、かなりの効果があります。特に、抗生物質との併用が経験上最も効果的です。抗生物質+漢方の併用で、あるゆる細菌に有効になるためと考えています。
 私の場合、使用する漢方薬は、ハイノウサンキュウトウ ツムラ(薬の会社名)だと122番 +センキュウチャチョウサン ツムラだと124番 の2剤併用です。122番は、文字通り、膿ノウを排ハイして、散(サン)らす薬です。124番はチャ(茶葉)が入っています。茶には、カテキンが含まれています。カテキンはあるゆる微生物に有効です。風邪のウイルスから、化膿を起こす細菌までです。(ですから本来は、風邪の時に使います。)122番単独よりも、124番を加えた方がより効果的です。(この124番の薬の使い方は私のオリジナルです。)自分で試して効果があったので、思いきって患者さんに投与してみましたが、やはり効果があります。化膿を起こしそうになったときに、予防的にこの漢方薬を飲んでも、効果があります。

抗生物質(筋肉注射、点滴もしました。)と漢方薬の併用でも改善しなかったので、入院治療を紹介した足関節周囲の感染と思われた例

 後日、担当の先生(と言っても私の友人ですが)と話をして、ただの感染=化膿ではありませんでした。壊死性筋膜炎といって、組織が死んでゆく病気だったのです。このような状態ですと、もはや、抗生物質は効果がありませんし、漢方薬を加えて利きを良くしても同じです。治療は、死んだ組織を取り除く手術しかありません。手術の方は、壊死が広がっていて大変だったとお聞きしました。
| 足痛 | 16:21 | - | - | - | - |
足部の痛みでわかってきたこと
95、母趾の痛み2

4、陥入爪と爪の周りの感染

 母趾の障害に多いのが、爪の形が悪くなる、陥入爪、巻き爪と呼ばれる状態で、爪が皮膚に食い込んで、化膿(=感染)してきます。実は私もこの陥入爪の状態で、油断していると、感染してきます。治療方法は、現在新しい方法がいろいろ考案されています。基本的な考えは、感染してるときは、まずそれを改善させること。次に、化膿を起こさないように、爪の形を変える(化膿=感染 が軽い時期にも行えます。)ことです。麻酔して簡単な手術になることが多く、出来れば避けたいと願っている方が大勢います。そのような方は、かなりひどい化膿=感染でも、根気よく、消毒を繰り返していけば、場合により何ヶ月もかかりますが、治ってきます。爪の形を変えなくても、何とか治ると言うことです。が、そのようにならないように日ごろの心がけ、注意が重要です。ここでは、自身の経験上に基づく、予防の話を主にします。 

 まず、足先は、体中で一番不潔になりやすい場所と言われ、常に清潔に保つことが重要です。これは、水虫(=白癬)の予防にもつながります。毎日、足趾の間を洗うことと、巻き爪のある方は、爪が食い込んでいる部分の皮膚を広げて、石鹸で洗って、シャワーで洗って、清潔を保つことをお薦めします。化膿がひどいときは行えませんが、ある程度治まって落ち着けば、行うことが出来ます。化膿がひどいと、不良肉芽(にくげ)と呼ばれる、赤っぽいじゅくじゅくした組織が増殖してきます。触ると非常に痛く、臭いにおいを放つこともあります。しかし、連日、消毒をしてゆくと、次第に乾燥してかたくなってきます。そして吸収され、小さくなってゆきます。化膿がひどいと浸出液がでますが、よくなると、乾燥してくる感じになるのです。その乾燥期には風呂場で洗って構わないと判断しています。(不潔な湯船に 漬けるのはもう少しあとがよいでしょう。)
+一般的に言われている爪の切り方は、
 角を深く切らないことです。四角い形に爪を保つことがポイントです。角に食い込む爪がないほうが、刺激されないし、よく洗えて清潔を保てるような気がしますが、逆に爪が伸びるときに、皮膚に食い込んで、痛みや感染を起こします。

 次は、趾先の筋肉トレーニングです。足趾が広がらない方は、趾の間が、不潔になりやすいので、広げる練習をしてください。さらに、外反母趾の項目でも述べましたが、母趾の第一関節を曲げる運動をしてください。ひどい化膿があるときは行わないでください。安静が重要で、歩くのも控えてください。少し痛みがあるときは、タオルを掴みあげる、出来る方は、毛布などの厚手の布を摘み上げる練習をしてください。完全に痛みがなくなってからは、爪先立ちで、足趾を曲げて踏ん張る練習をしてください。第一関節を曲げて力を入れると、食い込んでいる皮膚は、広がる方向に引っ張られます。逆にのばしたままで、力を入れると、皮膚は食い込みますので、曲げて力を入れることが大事です。これは、巻き爪で化膿している方に、母趾の第一関節を曲げづらい方がいることで、私が気づいたことです。私自身も、曲げる力は強くなく、毛布などの厚手の布はなかなか摘んで持ち上げられませんので、大事なことだと考えています。

 最後は、化膿しかかったときに、すぐに、抗生物質入りの軟膏を塗って、バンドエイドで止めて保護することです。市販薬の消毒薬の軟膏(=オロナイン軟膏)でも結構です。オロナイン軟膏は、ヒビテンと言う消毒薬と同じ成分で、かゆみ止めなどではなく、消毒薬です。抗生物質と違い、効かない細菌(MRSAなどと呼ばれます。)などはありませんので、細菌の種類に関係なく使うことが出来ます。ただし、指でつけると不潔ですので、必ず清潔な綿棒でつける習慣にしてください。指を容器に入れるだけで、残りの軟膏も不潔になりますので、必ず綿棒を使いましょう。軟膏なら、傷がなくても皮膚の上から浸透しますし、効果が持続します。マキロンなどの消毒薬は、皮膚下には浸透しませんし、塗ったときにしか 効果がありません。

 いずれにしても、予防が大事です。ひどくなってしまってからでは、消毒の処置だけではなかなか治りません。
| 足痛 | 09:52 | - | - | - | - |
足部の痛みでわかってきたこと
94、母趾(=1趾)の痛み1

1、外反母趾の痛みに隠された、変形性関節症や、高尿酸血症

 母趾(=1趾)の付け根の関節の部分(下図の赤丸)の痛みを訴えてこられる方は多いのですが、必ずしも、外反母趾とは限りません。多いのが、その関節の変形性関節症です。レントゲンで、軟骨が磨り減って関節の隙間が狭くなっていたり、関節の骨の輪郭が不整(でこぼこ)になります。(正常な関節の骨の輪郭はきれいな曲線です。)特に男の方は、外反母趾になっている方は少なく、変形性関節症や、あるいは、痛風発作の前触れで痛みが出ている方が多く診られます。
 外反母趾は、趾の付け根の関節=中足骨の先端の関節の横のアーチが弱くなり、左右に広がって、関節に負担がかかって痛みが出ます。ところが、変形性関節症では、横アーチが崩れなくても、痛みが出て、その部分の関節がやや腫れて太くなってきます。女性には外反母趾と変形性関節症の双方合併している方も診られます。
 痛風発作は、男性の方がほとんどで、母趾の付け根の関節に起こることが多いです。激痛で、赤く腫れ上がることが特徴で、はっきりわかることが多いのですが、軽いと、痛風と気づかないことも多いです。高尿酸血症(=血液中の尿酸と言う物質が高くなります。)、があり、尿酸の結晶が多くなって、血液中に溶けきれなくなると、関節に出てきて、発作を起こします。典型的なものが、赤く腫れ上がる激痛ですが、軽いと、痛みが出てくるだけでそのまま治るときもありますし、その後に激痛発作になることもあります。

高尿酸血症+高脂血症の話をもう少し詳しくします。一般的に言われている原因、治療、予後(放って置くとどうなるか)などは省略します。

 痛風もうひとつの発作?の形は、尿酸の結晶に誘発されて水が溜まるタイプの関節炎です。こちらは、関節に水がたまり、腫れが強いのですが、赤くなることはほとんどなく、激痛よりは少し軽い痛みです。母趾の付け根の関節に起こることもありますが、多いのは膝や足関節です。また、高尿酸血症があると、調子が悪い時に、あちこちの関節痛が出やすくなります。これらは、はっきりした関節炎ではなく、痛みも軽いのですが、痛風発作になる可能性がある前状態と考えています。男の方に多く、女性の方で、関節に症状が出る方はまれです。
 また、尿酸が高くなる方は、高脂血症になっている方がしばしば診られます。特に中性脂肪が高くなる方が多いです。男性に多く、体質的なものと考えています。実は私もこの体質です。私の場合は、コレステロールが高くなります。このような方は、尿酸を下げる薬を飲んで尿酸を下げると、逆に中性脂肪の値が高くなることが多いです。(10年以上前にこのような現象になぜなるのか、内科の先生に尋ねてみましたが、わからないとのことでした。)さらに、尿酸は下がっていても、中性脂肪が1〜2ヶ月の測定ごとに大きく変動します。=中性脂肪は、150mg/dl以下が正常なのですが、200以下の正常に近い方でも、尿酸を最初に下げたときに、250以上にあがってしまい、その後も、尿酸が正常範囲の値に下がっていても、中性脂肪のほうは200〜400ぐらいを変動したりするのです。中性脂肪を下げる薬を追加してコントロールしてもこのようになることもあります。高コレステロールには良く効く薬はあるのですが、純粋に中性脂肪だけを下げる薬は良いものがないようです。内科専門でもない( 私の内科は漢方薬治療です。残念ながら、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病は漢方薬では太刀打ちできませんので、正直言って専門外です。)のですが、一番新しい西洋薬まで使ってコントロールに四苦八苦しています。

2、若い方では種子骨(しゅしこつ)の痛み


 母趾の足底側には、種子骨と呼ばれる小さな骨が二つついています。(母指の手のひら側にも同じくついています。)特に若い方で、運動する方はしばしばこの部分が痛くなります。さらにその中には、ときどき種子骨の片方が、もともと二つに分かれている方(分裂種子骨)がいます。分裂している(=分かれている)部分は、骨折ではなく、もともと存在していて、骨より弱い繊維性の組織でつながっていますので、負荷に弱く痛みが出だすと考えています。

 治療に関しては1,2も共通です。リハビリは、小さい部分に照射できるスパーライザー(レーザー)治療や、トリオ治療、超音波治療を行っています。痛みや炎症が強いときは、消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服が効果的です。さらに、簡易テーピングを行うと歩くときのサポートになり、治りが早くなります。よほどひどい方は、関節内にステロイド剤(=副腎皮質ホルモン)を注射します。当院では、レントゲン透視を見ながら行えますので、より確実に入ると考えています。

3、まれに腰椎椎間板ヘルニアのときがある。

 母趾が痛い と訴えてこられた方の中に、まれに腰椎椎間板ヘルニアの方がいます。痛いのは、足の1趾なのですが、悪いのは腰です。腰椎の中には足先まで行く神経が走っていて、椎間板が出っ張って(=ヘルニアといいます。)その神経を圧迫すると、腰ではなく、神経が行っている先に痛みが出るのです。通常は足先だけではなく、神経の走る部分に沿って、もう少し広い範囲に痛みが出ますが、母趾だけの痛みもまれにあります。神経が圧迫されると、母趾を反らす(=背屈する)弱くなることもありますが、外反母趾などの母趾の付け根の関節の障害だけでも、反らす力が弱くなりますので、診断に注意が必要です。

次回は陥入爪のお話です。
| 足痛 | 14:47 | - | - | - | - |
足部の痛みでわかってきたこと
93、足趾の外傷、骨折は治り難いことがある

今回は、足の指(足趾)の怪我の診察経験上からの話です。

1、体の外側に当たる4、5趾の怪我をしてくる方が多いようだ。
 体の中心に近い、内側に位置する、1趾(母趾)は、常に体重が強くかかり、意識も強くいくので、怪我をし難いのですが、外側に当たる4、5趾は、足を送るときに、無意識にたんすの角に当てたり、引っ掛けたりして、怪我をしやい場所です。その場所が極端に多いわけではありませんが、ぶつけやすい方もいますので、注意が必要です。

2、血流が悪くなるため、治りが悪くなる
 足の甲の骨(中足骨)までは、血流がよいので、骨折しても、早く骨がつくことが多いのですが、足趾の部分になると、急に血流が悪くなる方が多く、特に、最も先端の末節骨は、つきが悪くなります。これは、手の指にもいえます。教科書では、治りがよいように書かれていますが、実際は、指先になると、骨折がつく(骨癒合)のに時間がかかるのです。

3、骨折がなくても、腫れが長く残る。
 2に関連して、治りが悪いので、骨折がなくても、2ヶ月ぐらい経っても、なかなか腫れが取れないこともあります。しかし、腫れが残っても、症状が先に取れるますので、あまり不自由がない場合が多いです。

4、足趾は、細かい動きをしませんので、手の指と違い、骨折をして形が変形しても、変形が残ってもあまり差しさわりがないのが通常です。つまり、手の指と違い、手術をして治すことが、ほとんどなくなります。

5、骨折がわからないことがある。あとから骨折線が見えてくる。
 通常、正面と側面、正面と斜め方向など、2つの方向で、レントゲン撮影(=2回撮影します。)をして、骨折があるかないか判断します。このレントゲンの撮影方向のみでは骨折線がわからないこともあります。別の角度で撮影すると、骨折が見えることがある
のです。しかし、どの方向で撮影してもレントゲンでは異常がなく、痛みが長引くので、3週間ぐらい経ってから、再び撮影したら、同じ方向の撮影でも、骨折線が見えることもあります。特に次の6の場合などがそれにあたります。

6、 4,5趾の、俗に言う第1関節は癒合している方がいる、場合により、3趾も癒合している方がいる。


 図の赤いラインの関節が、その部分に当たります。通常、母趾以外の趾の骨は、関節が二つあり、骨は3個あるのですが、関節がひとつで、骨が2個しかない ということです。5趾だけがその形になっている方、4と5趾がその形になっている方、3,4,5趾の3本がその形になっている方もいます。
 そのような方の怪我では、その赤いラインの部分の骨折が多く見られます。本来関節である赤いラインの部分を骨折するとどうなるかと言いますと、時間を追ってレントゲンを撮ると、骨折線が、2〜3週間で、離れてゆく場合があるのです。5で述べたように、最初わからなかった骨折が、離れてゆくので、はっきりわかるようになる。最初は、ひびぐらいの軽い骨折(ひび という病名はありません。ひび=骨折の軽いもので骨折と言う病名がつきます。)が、そのままついてわからなくなるどころか、離れていって、はっきりした骨折となる。と言う具合です。離れてゆく=本来あるべき関節になろうとする と考えています。その後は、3ヶ月ぐらい経ってから、徐々についてくる場合と、そのまま関節のようになって(=偽関節といいます。)1年以上骨がついてこない場合があります。2で述べたように、つきにくいためもありますが、骨折線が離れてゆくのですから、なかなかつかないことも理解いただけると思います。当院では、骨が早くつくように、トリオ治療を行っていますが、それでも、このような結果です。皮膚の外からのギブスや、シーネなどの固定を行っても、強固な固定は出来ませんので、テーピングだけで固定を行った時と比べ、結果にあまり差はないと考えています。
 骨折がつかないとどうなるかと申しますと、実はこれがあまり不自由ではないのです。腫れが残っていても、時々痛い、体重が極端に載ると痛い、ひねると痛いなどぐらいで、非常に困っている方は、経験がありません。手の指の先端の末節骨も、骨折が、3ヶ月以上もなかなかつかずに骨折線が見えているにもかかわらず、症状がなくなり、来院されなくなる方がほとんどです。ただ、1年後過ぎぐらいに反対側の指を怪我していらしたときに、一緒にレントゲン撮影をして、確かめたところ、ついていることも多いです。
 つまり、骨折線が見える=骨が全くついていない ではありません。レントゲンでは骨がついていないのですが、実際は、その部分は、骨ではない組織(=繊維化した組織で、治る途中の過程)でついていて、あまり動かないため、痛みも出ないと考えています。治る途中の過程の方は、時間がかかっても待てば、治る=骨がついてくる と考えています。
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足部の痛みでわかってきたこと
92、外反母趾と前足部の痛み3

今回は、私が行っている治療を述べます。

 当院で行っている超音波治療や、トリオ治療、スパーライザー治療などは、小さい範囲の局部に行うことが出来ますので、これらを受けることで、痛みが早く治っています。
 装具を用いる治療の代わりに、前足部をサポートしたり、矯正したりして、痛みを和らげる目的で、簡易テーピングを行っています。
 テーピングの利点は、装具と違って、ひどい変形の方でもつけられます。
歩くときも、寝ているときも、区別なく着けられます。ただし、矯正力は強くありませんので、テーピングをしていても、変形を進めるようなきつい靴を履いているのなら、意味が余りありません。また、かぶれる方は、残念ながら、つけることができません。

1,横アーチを支える簡易テーピング

 横アーチがくずれて、開張足となり、いろいろ障害となるなら、それが崩れないようにテープで固定します。ただし、この方向にテープで引っ張ると、痛みが増す方もいますし、足底のパッドがないほうが楽な方もいますし、逆の方向に=逆方向のアーチを作るように引っ張ったほうが、楽になる場合もあります。
 固定は、体重が載るときのアーチを支えるのが目的ですので、横アーチのサポートだけでしたら、夜寝ているとき以外に行いますが、次の矯正目的のテーピングとともに、常時着けておくのも効果があります。

2、外反母趾や、足趾の変形を矯正するテーピング

 横アーチを支えるテーピングにプラスして、曲がっている足趾の変形を、矯正する方向にテープで引っ張るように固定します。母趾に限らず、2,3、4、5趾に行うことも出来ます。こちらの固定は、矯正目的ですから、常にし続ける方がよいです。1年以上続けて、足趾の変形がかなり改善した方もいますので、この簡易テーピングだけでも、しつこく行い続ければ、変形が改善する可能性が高いのです。

 症状が軽い方は、テーピング無しでも超音波治療、トリオ治療、スーパーライザー治療と、しっぷ薬を使うぐらいで充分ですが、
+以下のことが予防にもなり、痛みが改善したら、同時に行うことが重要です。

3、筋力トレーニング
 筋力が弱くなって、横アーチがくずれるのなら、筋力を回復させることが重要です。
 痛みが強いときは、安静と、テーピング、+しっぷ、痛み止めの内服などをおこない、痛みが和らいできたときに、行い始めます。体重をかけずに行える、足趾を伸ばして広げる運動と、物を掴む運動から開始します。タオルのような薄いものからはじめて、つかめるようなら、毛布のような厚手のものを掴む練習をします。(前回の開張足の原因の3を改善する、足趾の関節の曲げる運動になります。=足の甲の中の筋肉のトレーニングになります。)
 さらに痛みがなくなってきたら、爪先立ちの練習を加えます。足趾に力を入れ踏ん張るように行う(これも前回の開張足の原因の3を改善する、足趾の関節の曲げる運動になります。=足の甲の中の筋肉とともに、足のアーチを支える下腿の筋肉のトレーニングになります。)ことが大事です。片足ずつ、30秒ずつ爪先立ちを保つように行ってください。力を入れ続けることが大事です。やりすぎもよくありません。歯を磨きながら行ってみてください。1日左右2回ずつで充分です。2.3ヵ月後に力がついていればOKです。
 トレーニングをして、痛みが強くなる場合は、やりすぎや、回復状況がよくないのに、早く始めすぎたためなどが考えられます。トレーニングを軽くしてください。

 これらの筋肉トレーニングは、前足部の痛みとは限らずに、すべての足の痛みに有効です。踵周囲に痛みがある方は、さらに、片足の踵立ちを、30秒ほど持続的に行うことを加えます。ただし、痛みが治まってから出ないと、痛みが悪化する可能性がありますので、注意してください。

補足
A,片足での爪先立ち、踵立ちは、実は、腰椎の椎間板ヘルニアなどにより、下肢へ行く神経が圧迫されて、筋肉麻痺があるかないか調べる診察方法のひとつです。左右比べて、片方だけが、力が入りにくいときは、神経が圧迫されて、麻痺している可能性もあるということです。

B,大学の大先輩である、足の外科専門の 井口 傑 先生がテレビで話されていた、足趾を曲げたり伸ばしたりして(=足趾を尺取虫のように動かして)、その力で床を掴んで前進する運動ができれば、まず、足の痛みとは無縁でしょう。慢性的に痛い方や、外反母趾などの変形が進んでいる方は無理だと思いますが、足の痛みや障害が来ないようにするためには、究極の目標となる運動です。是非試してみてください。

C,魚の目を取っても、足の形が変わらない限り、また出来る

 魚の目に、スピール膏と呼ばれるものをはって、数日間ふやかしてから、ほじるように目を取ります。麻酔無しでも、あまり痛みもなく、うまくいきますと、かなりきれいに取れて、一時的には治るのですが、時間がたつと、また同じように出来てしまいます。それを防ぐには、その部分に、体重の負担がかからないようにすればよいのですが、簡易テーピング矯正固定を行うだけでは不充分なようです。患者さんがそのことを理解して、しっかり行い続けられないこともあります。より強力に、足の形を矯正したり、体重が載らないような工夫も必要ですが、それを患者さんが行い続けることもまた大変と考えています。
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足部の痛みでわかってきたこと
91、外反母趾と前足部の痛み2

まずは、一般的に行われている治療について

1、装具による治療

 外反母趾用の装具は、売っている物もいくつかあります。私は、所沢に住んでいるので、少なくとも、西武デパートのロフトには売っていました。東急ハンズや、大きなスポーツ用品店にもあると思います。勤務医時代は、義肢装具製作業者に病院に定期的に来てもらっていましたので、いろいろ造っていましたが、今は来てもらっていませんので行っていません。


A,形を矯正する装具
 簡単なものは、シリコンゴム?製の1趾(=母趾)と2趾の間に挟むものがあります。軽い外反母趾の方は、これを挟むだけで、ある程度矯正になります。靴の中に入りますので、常時着けることが出来ます。
 本格的に矯正するものは、硬いプラスティック製で、前足部につけて、母趾を内側=足の中心より離れる方向に引っ張ります。かさばりますので、靴の中に入りませんし、体重をかけていると、壊れる可能性もあり、夜間に着ける装具になります。常時着けられませんので、これ単独だけでは、効果が不充分と考えます。

B,足底に着ける装具
 前足の足底の中央部に、中足骨パッドと呼ばれるふくらみをつけた足底板装具です。こちらは、開張足をサポートする形になります。同時に土踏まずを高くしてもよいです。歩くとき、つまり昼間につけます。母趾の形の矯正力はありませんので、同時に、母趾と2趾の間に挟む装具を使用するのが理想です。
 さらに、夜間は、プラスティック製の矯正装具を着けると、ベストと考えますが、3種類購入しなければなりませんので、お金がかかります。

さらに完璧を期すなら、靴も足の形にあったものがお薦めです。
C,外反母趾用の靴
 母趾が圧迫され変形が来ないように、先が丸くなった感じの靴です。既製品もあります。専門の靴屋で、オーダーすると、非常に高価ですので、義肢装具製作者に作ってもらうほうが、安上がりです。(足痛の80、足底板に代わるもの2で述べました。)これですと、中足骨パッドも底につけられますし、土踏まずも挙げられますし、母趾と2趾の間にはさむ装具も着けてはくことが出来ます。母趾の形の矯正にはなりませんが、足にフィットすると、歩くときにかなり便利です。

 ただし、あまりに変形が強い方は、これらの装具療法では、対処できません。矯正する装具を着けると、当たっているところが、すれて、傷になってしまいますし、逆に痛みも出てきて、着けることが出来ないのです。
 そのような方は、もはや手術しか治す方法がないのですが、形がかなり悪くても、あまり不便なく日常生活を送れる方も多く、放置している方も大勢みられます。痛みが強く、日常生活に不便を感じている方が、手術を考えればよいと思います。

2、外反母趾の手術は、術後の回復に時間がかかる

 手術自体は、なれている先生なら、あまり時間もかからないのですが、通常、骨を切って、矯正して、またつなぎますので、その骨がつくまで、時間がかかるのです。普通に歩けるのに、手術後6週以降になり、運動に復帰するには、3ヶ月位見る必要があります。まして、同時に両足手術すると、手術後、数週間歩けなくなります。(=車椅子移動です。)
 足の見た目は、第1中足骨を短くして矯正すると、形が非常によくなり、大変喜ばれます。整形外科の中で、唯一、美容外科的な感覚のある手術です。ただし、若い女性で、外反母趾の見た目が悪いので、手術で治してください と来院された方もいましたが、手術後の回復に非常に時間がかかるため、仕事や、日常生活に差しさわりがでて、通常は、美容外科的な感覚ではできません。
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足部の痛みでわかってきたこと
90、外反母趾と前足部の痛み1



足の前の部分の痛みは、赤印の部分に多く診られます。中足骨の部分は、足の甲に当たります。

まず、一般的に言われていることは、


中足骨の足先の部分の関節を横につないで、支えている靭帯(=靭帯よりは弱い組織なので支帯と呼ばせてください。)が弱いため、体重を載せることで、通常より左右横に広がることです。これを開張足といいます。
土踏まずのアーチが、足の縦のアーチに対して、この部分は、横のアーチを作ります。この足の甲の先端の関節を横につないでいる支帯は、この横のアーチを支えています。この支帯が弱くなると、体重が足先に載るたびに、この部分が左右に広がり、横のアーチが崩れます。そうすると、普通よりも、足先の中央部に体重がかかり、その部分の関節の痛みや、足の裏には、その部分にたこや、魚の目ができるようになるのです。
また、足の甲の先端の関節は、足の指の付け根の関節にあたります。この部分が左右に広がると、足の指、特に、親指に当たる1趾と、小指に当たる5趾は、左右にそのまま広がる形になります。ところが、靴を履いていると、広がることが出来ず、足の中央部に向かって圧迫されるようになるのです。このような状態が続いて出来るのが、外反母趾です。(=小趾内反)
補足
第1中足骨が赤矢印の方向に広がると、第1趾は、足の中央部の逆方向に押されて外反母趾になるのですが、中足骨の付け根(甲の中央部)の楔状骨(けつじょうこつ 図より上方に位置するので、見えていません。)も広がるように負担がかかる場合があり、前回お話したように、痛みが出る方がいます。

前足部の痛みや変形が起こりやすくなる開張足の原因

1、横アーチを支える靭帯(=支帯)が弱くなることが、その主な原因と考えていますが、この支帯が、体質的に弱い女性が、なりやすい印象です。リウマチの方は、炎症により、この支帯が弱くなり、開張足から外反母趾になりやすくなります。

2、外反母趾は、第1中足骨が長く、第1趾が、2趾に比べて長い方が、なりやすくなります。(エジプト型の足といいます。手術になるひどい方は,この骨を短くしますので,形がよくなります。)2,3趾の付け根の関節が痛くなる方や、その部分の足底にたこや魚の目が出来る方は、中足骨の長さが関係しているかどうかはわかっていません。今、計測している先生がいますが、経験的な印象としては、短い、長いに無関係のようです。

次は、私の経験上から、考えていることです。


3、ひどい外反母趾の方の特徴として、足の指(=足趾)の、特に1趾の関節の曲がる力が弱くなっています。変形の結果として、1趾を曲げる腱がうまく働なくなるため、曲がりが悪くなりますが、曲げないでいると、機能が衰えて、より変形しやすくなると考えています。手の指は、努力しなくても、広げて次に、指の関節を曲げて物をつかむことが簡単に出来ます。ところが、足趾は、物をつかむ必要がないため、普通の歩くだけの生活だけでは、その機能が退化してゆきます。そして、物を掴みにくくなるだけではすまずに、ついには、趾の関節が曲がらなくなってしまうのです。

4、3に関連して考えると、物を掴む力がなくなる=筋力が弱くなるということです。どこの筋肉かというと、中足骨の間にある筋肉です。足の中にある筋肉が、足趾を動かして、踏ん張ったり、物を掴んだりする役目をしています。この筋力が弱くなっていると、開張足になりやすくなり、外反母趾や、2,3趾の付け根の関節痛や、その部分の足裏の、たこや魚の目ができやすくなるということです。
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足部の痛みでわかってきたこと
89、足甲部の痛み

 今回もまた、外来患者さんでよくみられるものと、経験に基づく意見を述べます。

図1

外側の痛み

足関節捻挫と同時に起きる、踵骨と立方骨の間の靭帯損傷、剥離骨折(図1赤丸1)
 元論、この部分の損傷のみの方も多いです。
 外くるぶしの靭帯の損傷(=足関節捻挫)がなければ、この関節はあまり動かないので、剥離骨折があっても、ギブスなどのしっかりした固定が必要ない場合もあります。そのような場合は、簡易テーピングと弾性包帯固定をしています。治りも、動きが少ない分、足関節捻挫よりも通常早いです。

図2
第5中足骨底部の骨折(図1赤丸2)
 昔は、下駄を履いてひねったときに起こす骨折といわれ、下駄骨折といわれています。
 部位によって、非常に骨がつきにくく、骨折が離れているときは、手術をしたほうが早く骨がつきます。(図2黒と赤のライン)離れていなくても、ギブス固定をしても、次第に骨折部分が離れてゆくこともあります。(=骨折していても、必ずしもギブス固定は必要ないことになります。簡易テーピングと、弾性包帯固定で充分な場合も多いです。)ただし、骨折がなかなかつかなくとも、症状はなくなる方も多く、骨折線がまだ見えるのに、症状がないため来院されなくなる方もいます。

第4中足骨の底部の捻挫(図1赤丸3)
 第5中足骨の骨折がない場合、この部分を傷めることが多いです。ほとんどの方が、軽いのですが、 重症な場合もあります。重症な方は、第5中足骨を骨折しますので、少ないのです。甲側に少し脱臼することもあります。この部分は、レントゲンや、透視装置でも、横方向からですと、中足骨が重なって、脱臼しているのか、ゆるみがあるのかわからないため、(図2)6週間ぐらい痛くて足がつけないときは、重傷のほうと考えます。エコー(超音波診断)ですと、よいほうの足と比べて、関節の段差や、動かしたときの緩み具合でわかると考えていますが、重症例が少ないため、今後の経験になると思います。(=ゆるくて、甲側に脱臼するようでしたら、手術で正確にもどした位置で止める固定をした方がよいはずです。)

 以上の部分は、お子さんでもよく怪我しますが、関節が大人より柔軟な分、骨折になることは少なく、重症例もほとんど経験がありません。また、怪我をしていなくても、激しい運動をしているお子さんは、10歳前ごろから10代にかけて、自然に痛みが出る方もいます。踵の周りの関節や、他の足根骨(といいます)の周りの関節があまり強くないため と考えています。


図3

内側の痛み

外脛骨(がいけいこつ)と偏平足(図1赤丸4)
 足関節のすぐ前下方の内側が出ている方は、足の舟状骨(しゅうじょうこつ)のすぐ内側に、外脛骨と呼ばれる骨があることがほとんどです。(図3)男性よりも、女性に多い印象で、珍しくありません。この部分は、捻挫しても、しなくても激しい運動をしている方は、10歳前から10代にかけて痛みが出ます。下腿からの筋肉の腱や、内くるぶしからの靭帯が付いているため、怪我や運動で、引っ張られ、骨のつなぎ目が弱いために、痛みが出だすと考えています。この筋肉の腱が、足底まで回っていて、土踏まずのアーチを上げる作用をしているため、この部分が出ていると、腱の力がうまく伝わらずに、偏平足になりやすくなります。
しかし、痛みが出るのは、若い方がほとんどで、30代の女性で痛みがあって診たのが、高齢の方と記憶しています。
通常は、安静と、超音波治療やトリオ治療、+簡易テーピングで、土踏まずを挙げたり、横方向の固定したり、弾性包帯固定を追加する(+足の筋肉トレーニング 後述予定)ことでよくなり、手術をして、骨を除去する、骨を癒合させる という処置までは通常いたりません。

楔状骨(けつじょうこつ)の関節の痛み(図1赤丸5)
 10代では、激しい運動をすると痛みが出たり、ひねったときに傷めることがあります。大きな怪我で、離れたり、ゆるみが出たりする場合は、手術的に固定します。(図3A)
 壮年〜老年の方は、第1、第2中足骨が体重を載せると広がる方(外反母趾になる原因です。 後述予定)(図3赤矢印)は、甲の中央部まで負担がかかっていると考えられ、この部分を痛がる方もいます。
 この骨と、第1中足骨の間(図3B)は、バレエをしている方は、トウで立つときに、足底方向に強く曲げてバランスをとりますので、痛みや、変形を起こします。壮年〜老年でも、自然に変形が来て痛みが出てくる方がいます。
 同じく、超音波治療やトリオ治療、+簡易テーピングで土踏まずを挙げる方向と、縦方向や、斜め方向に引き上げる固定や、弾性包帯固定を追加する(+足の筋肉トレーニング)で、よくなります。

疲労骨折は最も細い、第3,4中足骨の中央部に多い。(図1赤丸6)

 激しい運動をしている10代の方がほとんどです。
 レントゲンで骨折線が見えずに、気づいたら、仮骨(かこつ=骨折のあとに新しく出来る骨)ができている方もいますので、この部分の痛みが起こったらレントゲンで異常がなくても要注意です。 どちらか、一方の方、時間を経て、両方に起こしてくる方や、初診時に、レントゲンですでに仮骨ができてきている方もいます。
 明らかな外傷で起きるのではありませんので、ギブスは必要なく、安静、簡易テーピングをおこない、トリオ治療や超音波治療を行って、骨癒合を早めています。
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