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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
下肢の痛みでわかってきたこと
128、股関節の痛み3

子供の股関節の痛み

股脱美人(美少女)  

 股脱(こだつ)とは、先天性股関節脱臼のことですが、ここではこの病気自体の話はしません。単純に、生まれつき、股関節が脱臼しているお子さん と考えてください。この病気、子供を専門に見る整形外科では、まだ多く診られるようですが、一般整形では、見る機会は少なくなりました。患者さんは、女性ホルモンがかかわっているとされ、女の子がほとんどです。
 今から20年以上前、私もそのような子供を専門に見る整形外科に勤務していた時の話です。当時から、股脱のひどいのは少なくなってきている と聞いていたのですが、ここには、重症例の方が何人もいました。重症とは、股関節脱臼が、何をしてもうまく戻らない状態の方です。軽症の方は、1歳ぐらいまで、リーメンビューゲルという、ひも製の装具をつけると治るのですが、悪い方は、それでも脱臼したままですので、入院して、脚を引っ張り続けたり、脱臼を整復した位置の四股のポーズでギブス固定したり、それでも戻らない時は、手術して整復させます。それでも戻らないと、幼児期に、骨盤を切って、股関節の屋根の部分を作る手術をします。それでも、股関節の適合(かみあわせ)状態が悪いと、若いうちから変形性股関節症になってしまいます。ここで言う重症例とは、このように、次々に治療をしているにもかかわらず、すでに変形性股関節症状態になっている10歳ぐらいのお子さんを指します。それまでは、重症というと、治療がうまく行かなかったため、成人になってから手術を受ける方でしたから、それよりもはるかに重症といえます。このような方を、手術をするため、あるいは、手術時にいれた固定用の金具を抜くため、入院してきた数人を診る機会がありました。驚くことに、診る(=見る)たびに、どの子も皆、可愛い、あるいは美人なのです。今考えると、なかには、若い頃のスピードの上原タカコ=多賀子?さんよりも美人の子供もいました。この病院は、入院して、治療しながら学業も受けることが出来るようになっていて、脳性麻痺(出産時の脳の障害で、手足が突っ張ってうまく動かなくなったり、目の動きや顔の表情にも障害が出て、美人美男子はほとんどいません。)などの長期入院の子供が多いのです。股関節以外は、全くの健常人ですから、他の男の子達から、モテモテでした。レントゲンで股関節だけがとてもひどい状態ですので、この病気がなかったら充分芸能人になれるのに とかわいそうに思ったものです。やはり、女性ホルモンが非常に強く働いているのでしょうか?

原因不明の子供の股関節炎

 風邪の後や、風邪の最中に痛みが来ることも多いのですが、前触れがなくても突然起こります。外来では、時々来られますので、決してまれではありません。血液検査や、レントゲン検査で異常が出ません。年齢も5歳未満から、10代前半ぐらいまでと幅広く、男女差もない印象です。5歳未満ですと膝が痛いといってくる場合もあります。痛みの程度も、朝痛かったが、今は大丈夫という軽い方から、歩く時脚を引きずる方、全く脚をつくことができない方まで、さまざまです。溶連菌感染症による関節炎が要注意と思いますが、血液検査でこの病気だったことは、ほとんど記憶にありません。膝など、違う関節の炎症の時がこの感染症だった記憶です。
 治療はまず、安静です。軽い方は、運動のみ禁止、脚が着けない方は、寝て安静にしてもらったり、松葉杖で悪い側の脚を浮かして歩いてもらいます。軽いと動けますので、とにかく安静が大事です。治りが悪い時は、入院して、脚を引っ張り続けて(牽引といいます)、安静を保ちます。ベットからほとんど動けなくなりますが、治りはよくなります。
初期は、ほとんど検査異常が出ませんので、治りが悪い時に、レントゲンの再検査、血液検査などを行って、他の病気がないか確認しています。

原因不明の大人の股関節痛

 股関節に痛みがあるにもかかわらず、レントゲンでは異常が出ません。股関節を曲げる方向(屈曲)以外で痛みや、動きの制限が見られます。屈曲方向の動きの制限や、痛みが出る時は、変形性股関節症の始まりの可能性があります。

 なぜ、股関節に痛みが出るのか。再び、独自の考えである腰脚症候群(腰痛11〜17 2007.4月)のお話です。腰脚症候群(ヨウコキャクショウコウグン)と呼んだ方がよいと考えます。首の周囲(首から腕に行く神経が出てくる鎖骨や、肩辺り)での障害は、頸肩腕症候群(ケイケンワンショウコウグン 以前は頚腕症候群とお話しましたが、同じことです。)というからで、それに対してこう呼ばせてもらいます。

大腰筋の筋力が低下すると

 大腰筋は、前回の骨盤の模式図で腰椎から、骨盤の仙腸関節の前を通り、股関節に付く筋肉です。この筋肉は、股関節を曲げて、腿を腹に近づける動作の時に働きます。この筋力が低下(他の骨盤を支持する筋肉も含めて)すると、片脚で立って、もう片方の脚を充分腹の方にひきつけて挙げ続けることが出来なくなります。
 腰の前弯(そり身)が強くなって、でっちりになります。おなかの下の部分が出てきて、脂肪がたまってきます。中年女性の脚が細く、下腹部がたるんでいる体型がその例と考えます。

 大腰筋自体に痛みが出てきて、その筋肉が付く股関節部に痛みが出ます。股関節を動かすと引っ張られて痛みが出ます。
 仰向けに寝ていて膝をへそに近づけるように力を入れてもらいます。私の手で逆方向に押して、力比べをすると、痛みが出たり、手の力でも脚が動きます。(通常は手の力では、動かないぐらいの脚力があります。)
大腰筋が硬くつっぱってきて、股関節の動きに制限が出ます。まっすぐ曲げる方向(腿を腹に近づける方向)では、この筋肉は緩みますので、痛みと制限がありません。股関節自体が痛みの原因の時は、まっすぐ曲げても痛みがでます。

腰椎のそり身が強くなると

 立ち続けると下部腰椎の後ろの部分で痛みが出てきます。=姿勢性腰痛
このような方には、大腰筋の筋力をつける腿挙げの訓練,筺△修蠖箸魄飮するブリッジをしようとする格好△諒飮(30秒ぐらい)が役立ちます。膝をへそにひきつける腰痛体操は、そり身を減らす方向の運動で、筋トレにはなりませんが、弱くなっている大腰筋の代わりに?(=とともに)腰を支えている背部の筋肉のストレッチ効果があります。

そのまま腰痛が続くと前かがみになっても、腰のそり身が取れなくなります。
腰の椎間板が悪くなっても、(=長い期間で、腰痛が時々出ていた方が多いです。)、腰が動かなくなります。

 腰は、特に、第4,5腰椎、仙骨間の椎間板が一番動くのですが、ここが、前かがみになっても(前屈)そり身になっても(後屈)全く動かなくなります。
 腰椎が動かなくなると、動くところは、股関節と仙腸関節となり、前後屈を繰り返しているうちに、ここに負担がかかります。つまり、仙腸関節や股関節に痛みが出てくると考えられます。=腰の悪い状態が続いている方は、骨盤で痛みが出てくる ようになるのです。
 骨盤や股関節を支える筋肉にすべて負担がかかり、股関節の外側が痛くなったり、骨盤の左右の腹筋が付いている部分が痛くなったりします。
 大腰筋の周囲には、坐骨神経など下肢に行く神経も走っています。下肢の痛みが出ていても、MRI検査で、腰椎の中に異常がないときは、この部分での障害を考えます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、腰椎での病名が付かないので、いわゆる坐骨神経痛という症状が病名となります。また、坐骨神経(大腿の後面から下腿にかけての痛みが出ます。)以外の神経も走っていますので、腿の内側や、前面にも痛みが走ります。こちにゆく別の神経痛の病名が付くこともあります。

治療は

 先に述べた大腰筋の筋肉トレーニング、ストレッチ
 変形性股関節症と同じ、超音波治療(ホームページ参照)、仙腸関節の関節運動学的アプローチ(腰痛13参照)、大腰筋ストレッチ(腰痛14参照)、レントゲン透視を見ながら行う、仙腸関節のブロック注射(ホームページ参照)、
 それに加えてプロテック治療(腰痛34,35参照 2007.6,7月)です。この治療、腰椎骨盤の牽引治療+股関節の運動、大腰筋をほぐす運動治療になり、レントゲン上、股関節が悪くなく、動かすと痛みや、動きの制限が出る方に、お薦めしております。ただし、スカートをはいている状態ではやりにくいため、ズボンをはいてきてもらうようにしています。

| 下肢痛 | 09:12 | - | - | - | - |
下肢の痛みでわかってきたこと
127、股関節の痛み2

今回は、変形性股関節症のお話です。整形外科では、手術以外の治療方法(=保存的治療方法)が、さっぱりダメ?な領域です。

変形性股関節症は、進行を防ぐ有効な治療方法がない?

 膝に比べると、股関節は変形性関節症の方は少なくなります。しかし、いったん変形性関節症になって、進行するタイプですと、膝のように進行を防ぐ方法がほとんどない のが現状です。出来るだけ使わない=歩かない しか、進行を防ぐ方法がありません。そこで、出来るだけ無理をしないようにして、手術にならないように持たせるしかない と言われるのが通常です。
少しでも、進行を遅らせる方法を述べます。が、いずれも、変形が進みすぎると効果がなくなりますので、ひどくなる前に、食い止めるしかありません。膝の場合と同じで、進行が進みすぎて、症状が強くて歩けない方は、手術 しか歩けるようになる方法はなくなります。

膝を固定する装具のように、股関節を固定、荷重をサポートする方法は難しい。

 股関節は、骨盤と大腿、両方を固定したり、サポートしたりしなければならないため、膝のときより、装着方法が手間ですし、長く使い続けることが辛くなります。大腿と骨盤をゴムバンドで固定すると、足や膝と同様に負荷が軽くなり、有効と考えているのですが、実際に装着し続けることは難しいようです。

筋肉トレーニングは、変形が進行すると痛くて出来なくなる。

 変形が進まないように筋肉トレーニングは重要です。股関節を曲げる大腰筋、後ろに反らす、あるいは、外に開く殿筋のトレーニングは、それぞれ立位で30秒位、力を入れ続けるように行うこと+習慣付けることを薦めます。ただし、力を入れ続けるので、繰り返し動かすことがなくても、股関節の動きが伴いますので、進行した例には、痛みが伴って出来なくなります。あくまでも進行する前に鍛えるのがよい のです。

動きの悪くなった股関節の、動きをよくする治療は、痛みを伴って出来ないことが多い。
 
 通常のリハビリテーションの方法ですと、痛みを伴って、進行例では、出来なくなります。関節運動学的アプローチ手技で、ある程度の進行例までは、関節の状態を改善させることが出来ます。動きの方はあまりよくなりません。ただし、年単位で行い続けることが必要なことと、進みすぎると、やはり出来なくなります。

ヒアルロン酸関節注射は、股関節でも有効

 健康保険の適応はありませんが、股関節にヒアルロン酸を注入することは、有効です。ただし、膝と違って、関節内にきちんと薬を入れることは難しく、通常は、レントゲン透視を見ながら、造影剤を入れて、股関節に入っているかを確認する必要があります。この手技は、私にとっては、西窪病院勤務医時代から行っていて慣れていますので、透視装置があれば、造影剤無しでも行うことが出来ます。=透視装置を備えた今の医院で行っています。
まず、針に麻酔剤を詰めた注射器をつけて、麻酔剤を関節内に入れます。関節内に入っていれば、注射器だけをはずすと、針(の注射器との接続部)から、麻酔剤が逆流してこぼれ落ちます。関節内は圧力が高く、余計に薬を入れて、さらに圧をかけると、必ず逆流します。逆流がないときは、関節内にきちんと入っていません。(過去に何度も関節造影の検査を行ってきましたので、この事実は確認しております。)確認できたら、ヒアルロン酸を詰めた注射器をその針に接続して、そのまま注入します。
 ただし、荷重部分の変形があまりに強いと、その部分に薬が回らないようで、効果が薄くなります。かといって、変形の強い部分へ側方から直接注射する方法では、まず関節内に入りません。また、変形が進みすぎると、関節の袋が小さくなりすぎて、従来の挿入部位からも、うまく関節に入らなくなります。これは肩関節でも同じで、関節の袋が小さくなっている=動きが非常に悪くなっている ことが特徴です。この方法も、変形があまりに進みすぎていると、うまく入らないので効果がでない と言うことです。

仙腸関節から大腰筋に痛みが出ていて、辛くなっている方が非常に多い。

 レントゲン上かなり進行した方でも、仙腸関節から大腰筋に痛みが出ていて、つらくなっている方が非常に多い と言うことです。この事は、全く整形外科では言われておりませんが、治療をすることで、驚くほど、痛みが改善する方がいます。
 治療は、仙腸関節の関節運動学的アプローチによる治療手技(腰痛でわかってきたこと13参照2007年4月)と、私が行っている大腰筋ストレッチ(腰痛でわかってきたこと14参照2007年4月)です。この方法は、大腰筋を引っ張ると同時に、股関節を引っ張ったり、緩めたりして、圧を変化させる関節運動学的アプローチの考えにも当てはまっています。進行して、股関節の動きがかなり悪くなっている方は、関節運動学的アプローチに準ずる方法を行っても、なかなか股関節そのものを動かして改善する方法がうまく行えません。そのような方にも、この方法だと、股関節を引っ張ったり、緩めたりするだけで、曲げたり、ひねったりしませんので、行えます。

 これ以外にもここが痛みの原因となっている証拠?を述べます。
 股関節の中にヒアルロン酸注射を行ったあと、骨盤の後ろ側の痛みだけが残る方がいます。つまり仙腸関節の痛みが残ると言うことです。
 仙腸関節にレントゲン透視を見ながら、直接麻酔剤を注射すると、かなり症状が和らぎます。ただし、腸骨の後ろの部分の変形が強かったり、仙腸関節そのものの変形が強いと、この関節にもうまく入らなくなります。
 股関節は座った位置では、体重が直接載りません。腸骨から坐骨に荷重が逃げるからです。にもかかわらず、座っていると痛みが辛くなる方がいます。これは、股関節そのものの痛みではなく、仙腸関節の痛みと考えます。座っていると、仙腸関節には重みがかかるからです。股関節に重み=負荷がかかるのは、立っていたり、歩いている時です。歩くと痛くて歩けない これが股関節そのものの症状と考えます。

器械によるリハビリテーション(=消炎鎮痛処置)は、超音波治療(ホームページ参照)がある程度効果がある。

 股関節は、身体のかなり深部にあります。皮膚の表面を流れる、低周波の電流刺激装置よりは、身体のより深部まで到達できる超音波や、レーザー光線の方が効果が高いと考えます。レーザー光線は、照射範囲がピンポイントでそのまま深部へ直進しますので、きちんと部位をマークしておかないと、患部から外れる可能性が高いのに対し、超音波は皮膚のある程度の範囲を動かしながら当てることが出来ます。深部へもある程度の広がりをもって到達しますので、患部から外れる可能性は低くなり、厳密に=神経質に皮膚の照射部位を決めておかなくても大丈夫です。

レーザー光線治療(=スパーライザー治療 ホームページ参照)もよく効く話を追加します。

 股関節に石灰が溜まっていると、急に痛みが強くなって歩けなくなることがある。(股関節の注射の図参照)

 通常、骨ではないところに、余計に溜まります。レントゲンでこのカルシウムの沈着(=石灰化)は写るので診断できます。なぜこのように溜まるのかわかっていません。また、石灰が溜まっていても、症状がないことも多く、なぜ、急激に炎症を起こして激痛がくるのかもわかっていません。ひねった などの軽い外傷の後に起こることも多いです。この石灰沈着は、実は、肩に起こることが多く、症状は、急に痛くなって肩が全く動かなくなります。
 一番効果的な治療は、石灰沈着部分に、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)を注射することです。レントゲン透視を見ながら正確にその部分に注射できると、劇的に改善します。注射が怖くて受けれない方は、レーザー治療がかなり効果的です。石灰沈着部分に正確に当てるようにマークをつけておいて照射します。正確に当たれば、一回治療を受けるたびに改善してゆくのがわかります。

変形性股関節症の人工関節置換手術は、膝の人工関節置換手術よりも、結果が悪くなる可能性が高い?

 この人工股関節置換手術は、結果の悪い話ばかりが人づてに伝わって、手術を受けたくない と訴える方が多い手術です。
 膝の人工関節置換手術は、医療用電動のこぎりで、悪い部分の軟骨と、骨を切り取って(=削り取って)人工の関節をはめ込んで骨用のセメントで固めます。(ゆえに整形外科は大工だ と言われます。)手術道具には、削る方向をガイドしてくれる装置も付いている上、手術道具の営業業者が、どの道具を使うか、順番に説明してくれるので、その通りにやれば、ある程度整形外科の手術をこなしている方なら、誰にでもできます。したがって、一度この手術をしてみて、つまらないので2度とやりたくない という先生もいるくらいです。大腿の付け根で、血液を止めておいて手術できるので、出血も少なくてすみます。
 一方、股関節の人工関節置換手術はそうは行きません。大腿骨側には、骨の中を削って、ステムを入れる穴を作成し、次に臼蓋の方も削ってから、それぞれに人工のものをはめ込まなければ出来ないのです。その間、膝のように血を止めておくことができないので、骨の方からどんどん出血して、(骨は血液を造るところですので、時間がかかる程、出血もかなりのものです。)輸血が要るのが通例です。大腿骨の中を削ることは、頚部骨折後の人工骨頭置換手術と同じ要領で、慣れている先生は多い(前回の頚部骨折の項で述べました。)のですが、臼蓋側は、慣れていないと、削り方が足りなかったり、人工の臼蓋にはめるカップの方向や、角度が違ってしまい、結果がさらに悪くなります。
 この差が、手術後の成績に表れているようです。結果が悪いのは、股関節の人工関節手術に多いのは事実です。ただ、この手術を多く行っている先生なら、方法がパターン化された手術なので、成績はよいはずです。
| 下肢痛 | 20:59 | - | - | - | - |
下肢の痛みでわかってきたこと
126、股関節の痛み1

今回から、股関節の話をします。まず、歩けなくなる可能性のある、骨折の話からです。

寿命も縮まる?大腿骨頚部骨折

 比較的若い方(中年前ぐらい)でも生じることはありますが、主に、高齢で、骨が弱くなってくると、脚を伸ばしたまま、横方向に転倒した時に生じる骨折です。特に、年齢平均よりも骨が弱くなる骨粗鬆症の状態がひどくなると、脚を伸ばしたまま、転びそうになったとき、踏ん張って、ひねっただけでも起こす可能性があります。この骨折が問題とされるのは、外傷後に歩けなくなる、寝たきりになる可能性が高くなることです。そのため、出来るだけ早くから動けるように、歩く練習が出来るような治療を選びます。つまり、できるなら、手術して、強力に固定して、骨がつく前から動けるように、歩けるようにします。それでも、手術後歩けなくなる方がでます。ちゃんとした理学療法士に、毎日歩行練習などをきっちり受けられればよいのですが、マッサージ師が行っていたりすると、歩けなくなる確率が上がると考えます。以前、勤めていた西窪病院でも、手術後のリハビリを、担当のマッサージ師の方にお願いしていたところ、歩けなくなってしまいました。そこで、すべて私自身が手術後のリハビリを、病棟回診中に行うようにしたところ、看護師たちも協力して行ってくれるようになり、それ以降、歩けなくなった方は、ほとんど記憶にありません。皆、歩けるようになって退院した印象です。
 動けなくなると、残りの寿命はあまり長くないと考えます。抵抗力が落ちて、肺炎などの感染症や、腸閉塞などにかかりやすくなるからです。もともと高齢の方が起こす骨折ですので、天寿と言われれば、そうなのかも知れませんが、20年ぐらい前のデータでは、手術後の平均寿命は3,4年と記憶しております。

骨がつかない内側型の骨折は人工骨頭置換手術をおこなうが。・・・・

 図のように、大腿骨頚部には長さがあり、骨頭(こっとう)に近い部分の骨折を内側型(大腿骨頚部内側骨折)とよびます。転子に近い部分を外側型といいます。外側型と転子部の骨折は、骨を固定する手術を行いますが、内側型は、骨頭へ行く血管が切れている可能性があり、そのまま止めても、骨がつくための血流が悪い上、固定力も弱く(骨頭は長さも短く小さいので、スクリューなどを、深く強くかませることが出来ませんので、固定力はどうしても低下します。)、うまく骨が付かない可能性が高い。+骨頭部分が血流不全を起こして骨壊死(大腿骨頭壊死)を起こす可能性があります。そのようになると、高齢ですとまず歩けなくなってしまうので、最初から、骨頭部分を取り出して、人工の骨頭(磨耗しないように金属で出来ています。)に換える(置換する)のです。=人工骨頭置換術。
 このタイプの骨折を起こす方は、比較的多いため、この手術を行う機会は整形外科医では、かなり多くなります。そのため、慣れると手術は比較的短時間で、出血も少なく、うまく行える場合がほとんどです。慣れていないと、ステムの挿入が骨の中心に来ていないために、その尖端で再骨折したり、痛みが残ったりします。また、人工の骨頭が、臼蓋(きゅうがい)から外れる=脱臼をおこして、再手術になったりします。
手術がうまくいった場合は、組織が落ちつく2週後の時点で、歩行練習を始めることが出来ます。(歩行開始時期は、状況や、執刀医の方針によって違います。)骨を固定する手術の時より、早く歩行練習が出来て、早く退院も可能です。うまくいった場合は、何事もなく、10年、20年経ってもOKです。

 しかし、どうしても、長い間経過すると、ステムのゆるみが出て、痛みが出たり、脱臼を起こしたりする可能性があり、自分の骨が残っていた方が、よいに決まっています。そこで、比較的若い方は、このタイプの骨折でも、自身の骨頭を残してそのまま固定する手術をする場合もあります。骨頭の壊死を避けるために、体重を載せることを、長期間待ちます。その間は、松葉杖で手術した脚を浮かせて、良い方の脚だけで歩いたり、手術した脚に長下肢免荷装具と呼ばれるものを着けて歩きます。(この装具は、骨頭に体重が載らないように、坐骨(尻の下の部分左右に触れる骨)で体重を支えるようになっています。)それでも骨がつかない場合は、骨移植術といって、自分の骨盤の骨をとってきて、骨折部に埋めて、骨がつくことを促す手術をしたり、骨頭が壊死してきたら、人工骨頭に取り替える手術をします。高齢な方では、松葉杖で脚を浮かして歩いたり、長下肢装具を着けて長期間歩くこと、ましてや再手術を受けることは無理と判断して、最初から人工骨頭に取り替える手術をするのです。

高齢の方の、内側型の骨折でも、人工骨頭の手術をしない場合もある。

 図2のように、骨折が不完全な場合で、荷重側(体の中心より外側)にはまり込むタイプの骨折は、そのまま体重を載せても、骨が付いている部分が残っていますので、骨頭が体の中心側(=内側)に落ち込むことがないので、スクリューで固定するだけで(あるいは、うんと軽いと、そのまま固定しなくても)、すぐに(あるいは1〜2週間後から)歩いても大丈夫です。すぐに歩く練習が出来ることが高齢では重要です。・・・が、図3のように、骨折が完全な場合は、脚をひねった時などに、骨頭が内側に落ち込む可能性があり、(こうなった場合は、人工骨頭置換術になりますので)最初から、人工骨頭に換える手術をするのです。
 実は、この2種類は、レントゲンだけでは、区別しにくい場合があり、手術方式を間違えると再手術になりますので、最初からすべて、人工骨頭に換えてしまう場合が多いようです。しかし、今は、MRI検査で、骨折の状況が完全か不完全かレントゲンよりわかりますので、判断しやすいと考えています。


話が出た、大腿骨骨頭壊死 と言う病気にも触れておきます。

 骨頭の部分の骨が死んでゆく病気です。
 原因不明のこともありますが、先ほど述べた頚部骨折以外にも、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期間使っていたり、アルコールの飲みすぎなどでも起こります。故 美空ひばりさんもこの病気だったようです。治療は、死んでいった部分に体重をかけないようにすることですが、修復するまで体重をかけないようにするので、長期間に及びます。上で述べたような松葉杖や、長下肢装具を使うことは理論上正しいのですが、続けられない場合も多いと考えます。進行してくるようですと、死んでいる部分に体重がかからないように骨を切って骨頭を回し、死んでいない部分に体重が載るようにする手術、さらに進行をすると、広い範囲で骨が壊れてきますので、人工の骨頭に取り替える手術を、ここでも行います。
ついでに、5歳ぐらいから10歳未満ぐらいまでのお子さんにもこの部分の骨頭が壊死してゆく病気(=ペルテス病と言います)があります。治療は同じく、体重をかけないようにすることです。自然経過で治癒するのですが、その間に体重をかけていると骨頭が変形して、将来、変形性股関節症必発です。お子さんですので、手術することなく、装具を着けて過ごす事になります。
いずれにしても、どちらも、頚部骨折に比べてはるかに 稀 です。

余談
寿命があまりないという話に関連して

高齢な方で、足先から腐ってくる=余命があまりない

 糖尿病で、あるいは、糖尿病などで動脈が詰まって腎臓の機能も落ちて、透析している方も、動脈自体が自然に詰まってくる閉塞性動脈硬化症でも、足先から腐ってくる状況に進んでいる方は、余命があまりない ということです。足が腐ってくる場合、通常、足を切断する手術を行います。そのまま腐った組織を残していると、死んだ組織が感染したり、死んだ組織からの毒素が全身に回ってさらに寿命が短くなると考えてください。手術をした後は、義足を作って、歩く練習を行い(=リハビリテーションを受ける)、歩ければ退院する という治療で、およそ3〜4ヶ月かかります。腫瘍や、外傷で切断した方は、この経過になります。私は、この病気による切断で、元気になって退院された方(比較的若い方は別です)の記憶がほとんどありません。手術後、まもなく亡くなられた方、義足を作成中に、完成する前に亡くなられた方、などです。人間、体の一部が腐ってくる=体がもう既に寿命です。と言うことを表しているようです。
| 下肢痛 | 20:28 | - | - | - | - |
下肢の痛みでわかってきたこと
125、膝の痛み12

今回は、まだ話していないことを補足します。

骨粗鬆症と膝

膝が悪くなる=軟骨の障害

 膝自体の痛みの原因(腰、股関節、骨盤が主な原因の膝の痛みもあります。)は、多くの場合が、膝の軟骨あるいは、靭帯などの骨以外の軟部組織が悪くなって痛みが出てきます。骨が悪くて痛みが出る場合は、膝の痛み8で少し触れた、軟骨の直下の骨が死んでゆく骨壊死や、軟骨が磨り減ってほとんどなくなり、骨と骨がこすれて、骨が壊れてゆくほどの高度に進行した変形性関節症や、軟骨が解けて、さらに骨も解けて壊れてゆくほどに進行した慢性関節リウマチ、まれには、骨腫瘍のこともあります。いずれも、頻度は少なくなります。

 変形性関節症は、軟骨が磨り減る、それを補うように骨がとがってきたり、硬くなってくる変形を起こす、軟骨がほとんどなくなるほど進むと、骨と骨がこすれあって、骨も壊れてくる、 という具合に進行します。
 慢性関節リウマチは、炎症が強く、軟骨は解けるように減る(=磨り減る速度が早い)、次に、骨も解けて、骨が壊れてくる(修復しようとする骨の変形もありますが、壊れる方が強い) という具合に進行します。

膝のレントゲンで骨が弱いのもわかる=骨粗鬆症がかなり進んでいる

 レントゲンで膝の周囲の骨が弱くなっていることがわかる方もいますが、この場合は、骨粗鬆症がかなり進行している可能性が高くなります。骨だけが弱くて、軟骨が磨り減って、骨がとがってきたりする変形はあまり起こしていないこともあります。

骨粗鬆症の治療は膝の痛みにはあまり効かない

 骨が弱くなってきて膝の痛みが出ている方は少ない ので、骨粗鬆症の治療で、腰や、腰から下肢への痛みは取れても、膝の痛みだけが残る印象です。膝の痛みの主な原因は、軟骨の障害だからです。

膝に水が溜まる2

 前回の膝の痛み8での話は、膝の関節の中に水が溜まった時の話でした。
今回は、膝の関節の外、皮膚の下に水が溜まった時の話です。

膝蓋骨の表面に水が溜まる

 同じように、関節の外に水が溜まるところは、膝以外にも、肘頭(ひじがしら)や、足の外側の前などにたびたび診られます。経過や治療は共通です。

 関節周囲の皮下には、潤滑に動くように滑液胞(かつえきほう)という袋状の組織があり、そこに水が溜まります。原因がわからないこともありますが、膝頭をこすっていると炎症を起こして、水が溜まることが典型です。痛みもなく、悪いものでもないので、しばらく放置しても構わないのですが、毛穴から細菌が入って感染すると、赤くはれて、強い痛みを伴います。このようにならないためにも、治療を薦めます。
 水のたまりが多くない時は、厚手の弾性包帯で圧迫し続けると、次第に改善することがあります。トリオ治療器で微弱な電流を流して修復を促すと、さらに改善が早まります。水が多く溜まっている時は、水を抜いてから同じく弾性包帯で圧迫し続けます。風呂に入る時や、巻きなおすとき以外は、寝ている時も、圧迫し続けることを薦めます。包帯をしないで関節を動かしているだけで再び水が溜まってくるからです。軽いと、一回抜くだけすみますし、通常、4,5日に1回のペースで、3〜4回抜いて圧迫し続けると水がたまらなくなります。水がたまらなくなっても、包帯を取って関節を動かすとまた水が溜まることがありますので、水がたまらなくなってから、さらに2〜3週間は包帯で圧迫し続けることを薦めています。


膝の後ろに水が溜まる

 膝の後ろがはれてきます。この腫れを気にする方は多いです。エコー検査(超音波検査)で確認が必要です。中には、腫れていても脂肪が厚いだけの方がいるからです。通常、症状はほとんどありません。毛穴から細菌が入って感染することもほとんどありません。関節液がそのまま溜まるタイプと、ゼリーが溜まる(ガングリオンと呼ばれるものと同じです。)タイプがあります。
 こちらは、関節の後ろに別の袋が出来ます。関節の中とつながっていることが多く、水を抜いて、弾性包帯で圧迫し続けても、関節から液が補充されますので、また水が溜まってきます。そのため、症状がない場合は、治療をしないで、経過を診るだけにしています。膝の後ろには、神経や、血管が走っていますので、痺れが出たり、圧迫感が強い場合のみ治療をします。経験上、症状を改善するにはトリオ治療と、やはり持続的な弾性包帯による圧迫固定が有効です。
 腫れを取り去るには、手術を行いますが、整形外科医が、腰痛麻酔(下半身麻酔)で、下肢に行く血を止めた上で、神経血管をよけながら、膝の関節の後方までみて、関節と通じている穴まで塞ぐ必要があります。2,3日の入院も必要です。手術しても再発することがあり、(特にガングリオンなど)ましてや、外科の先生が、局部麻酔で日帰り手術を行った時は、まず再発しますので、外科で治療することは、お薦めしません。
| 下肢痛 | 17:24 | - | - | - | - |
下肢の痛みでわかってきたこと
124、膝の痛み11

膝を保護する、固定する

今回は、膝を直接保護する方法について私の考えを述べます。

膝の弾性包帯固定は膝の安静を保つためのもの

 通常の包帯より厚めで伸びる包帯を弾性包帯といいます。この包帯を膝を伸ばして巻きつけることで、膝は曲がりにくくなります。巻いたままで、走ったり、激しく膝を動かすと、緩んで落ちてしまいます。弾性包帯を巻いたからには、膝を無理に曲げない、緩んでしまうほど使わないことです。安静にすることを目的に巻くのです。それに対して、はくタイプの簡単なサポーターは、運動をする時に膝をサポートするものと考えてください。サポーターをつけても膝を曲げることが出来ますし、走っても、落ちたりしません。

膝をぴったりサポートするには、サポーター類より簡単なテーピングの方がよい

 はくタイプのサポーターは、膝全体を包むだけで、膝蓋骨の下を部分的に支えたり、膝蓋骨の上に付く筋肉を部分的にサポートすることが出来ません。マジックバンドで止めるタイプや、しめるベルトが着いている装具型のサポーターは、膝蓋骨の上下などを部分的にサポートする作用がありますが、膝のサイズにぴったり来ない箇所が出てきて、動かすことで遊びが生じます。
 それに対して、皮膚に直接貼るテーピングは、膝が動いてもサポートが緩むことはありません。しっかり行えば、サポーター類よりも有利です。ただし、皮膚が弱い方はかぶれ 易く、持続的に行えない欠点があります。そのため、アンダーテープを巻くのですが、巻いていない部分にテープが当たるとかぶれることと、巻くのにさらに手間がかかるようになります。テーピングというと、専門家が行って、自分では換えられないイメージがありますが、当院では、自分自身や、家族に取り換えてもらうように簡単に行えるテーピングを行っています。

当院で行っている膝の簡易テーピング

少しでも覚えやすいように、止める方向は、縦と横方向だけにしている。

 正式なテーピングは膝の回旋(ひねり)を抑えるようにらせん状に巻きつけますが、テープを大量に使うこと、自身や、家族で換えるには、やりにくい、覚えにくいため、当院では、よりしっかり固定が必要な場合を除いては行っていません。

横方向のテーピングは、膝蓋骨のすぐ上下を抑えることが基本

 膝蓋骨のすぐ上と、すぐ下を抑えます。膝蓋骨から離れると、サポート力が落ちます。
 膝蓋骨の下側は、下腿を内旋(足先を内側に向ける方向にひねる)するように外から内に引っ張ってはります。図の _実椶鯑眄した方が前十字靭帯が緊張して膝が安定する と以前膝の大先生から教わったことをそのまま踏襲しております。膝蓋骨の上側は、逆に内から外へ側に引っ張って止めます。図の◆,海諒向が膝蓋骨に付く大腿四頭筋を緩めて、筋肉からの衝撃を抑えることが出来ます。

 縦方向のテーピングは、膝蓋骨のすぐ左右を抑えて、膝蓋骨が左右にぶれないように安定化させます。重力に逆らって、下から上へ引っ張り上げます。図の

 この二つを組み合わせると、下腿が前方向にすべることを制限できて、=前十字靭帯の機能が悪く緩んでいる状態を制限できる上、多くの方に診られる膝蓋骨周囲や、膝蓋靭帯が下腿に付いている部分の障害(オスグットシュラッテル病など)の症状を和らげることが出来ます。

 さらに、症状に応じてテーピングを加えます。
 膝が内側に入る事を制限して、=X脚になる方向を防いで、内側の靭帯などが伸びないようにするには、膝の内側の部分に縦方向にあるいは*印にテーピングを行います。逆にO脚を制限するには、外側に縦方向あるいは*印にテーピングを行います。
 後ろが痛いときは、膝の後ろの負担を軽くする、膝を伸ばすことを制限する目的で、後ろの部分に縦方向*印に固定します。

膝蓋骨の上下を抑えてサポートする最も簡易な装具は、オスグットシュラッテル病用。

 上下に短く、膝蓋骨すぐ下の靭帯を抑えるようにパッドが付いています。動きやすく、バレーボールの選手が膝にはめているタイプのサポーターです。ただし、膝が動くと遊びがあるため、しっかり固定するには、テーピングをしてそのうえにさらにこの装具を着けることが、より強力なサポートになります。

売っている、通販で手に入れられる装具も基本的には、膝蓋骨の上下を抑えている。

 マジックバンドで止めるタイプの膝のサポーターあるいは、ゴムバンドは、軽い膝の障害や痛みには、有用です。膝蓋骨の部分が開いていて、すぐ上と下を抑える形のものが多い印象です。

当院では、より強力なゴムバンド治療行っています。

 膝蓋骨のすぐ上と下を太目のゴムバンドで巻きつけます。膝蓋骨から離れると効果が落ちます。巻きつけることで、確実に膝が軽くなります。脚を着くと膝が痛い方には特に有用ですが、巻きつけていないほうの膝に比べて明らかに軽くなるため、両方同時につけるとその感覚がわからなくなります。強力なサポートになるので、靭帯損傷や半月板損傷すべてに使うことが出来ます。弾性包帯固定と、このゴムバンド固定だけでも、ある程度しっかり着けていただければ、他の装具を使うことなく、靭帯損傷や、半月板損傷の回復も見込めます。
 欠点は、まず、締め付けが強いため、長時間持続して着け続けられないことです。巻いている下の下腿の部分がむくんできたら、はずす必要があります。歩く時に楽になるので、動き回る時につけることを薦めています。
装着が慣れるまで煩雑です。マジックバンドでとめませんので、ワンタッチでは装着できません。
 脚があまりに太いと、ゴムバンドの長さが決まっているので、膝蓋骨の上あるは下のどちらかの巻きつけ回数が減って、固定力が落ちます。
使いすぎ、曲げすぎ、動きすぎると、バンドがはじけて飛んでしまいます。そのため、ある程度の安静が必要です。
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下肢の痛みでわかってきたこと
123、膝の痛み10

膝を守る筋力トレーニング

 筋力トレーニングは、その方の(膝の)状態に合わせて行う必要があります。膝が痛くて、状態が最悪では、安静が必要で、筋力トレーニングは出来ません。例えば、靭帯が切れた直後は、安静だけでなく、ギブスや装具などでさらに固定が必要です。痛みや、損傷した組織が落ち着いてから、ギブス固定のままで行える筋力トレーニングからはじめます。固定が外れて、膝の運動が出来るようになったら、力を入れる筋力トレーニングを加えます。さらに体重をかけて屈伸運動が出来るようになると、また別の筋力トレーニングを加えるという具合です。状態に応じて、筋力トレーニングの方法も変えていくということが大事です。


一般的に言われる(+α私の行っている方法)大腿四頭筋トレーニング

膝を動かさなくても出来る運動は、固定中でも出来る

 仰向けに寝て、脚をまっすぐ伸ばしたまま、30度ぐらい持ち上げて、しばらく力を入れ続けます。膝を伸ばしたままと力を入れ続ける事がポイントで、反動で持ち上げておろす方法ではありません。感覚として、非常にゆっくり持ち上げて止めておく方法がよいのです。
 脚先に2〜3キロの錘を巻きつけておく事が言われますが、膝の悪い方では、布団の中でおこなって、ふとんの抵抗(重み)でも充分と考えています。回数も多く行う必要はないと考えています。それよりもしばらくの間、10〜30秒ぐらい力を入れ続けてください。

 2つ目の方法は、膝を伸ばして、膝の後ろを床に付けると同時に、膝蓋骨(お皿)の上の部分の筋肉をぎゅっと引き締めて行います。これをパテラセッチングといいます。筋力トレーニングになる以外の効果もあります。軟骨が傷んできて、変形が進むと膝が完全に伸びきらなくなります。それを防ぐと同時に、膝蓋骨の裏の関節軟骨の部分も圧迫して、関節液の流れを改善します。

座って行うものは、錘がなくても出来る。

反対側の脚を錘代わりに使う。

 座って行うトレーニングは、膝を動かす事が出来るようになってから行います。これも体重を載せませんので、負荷がかかりにくい運動方法です。膝の悪い高齢の方は座って曲げている位置から、そのまま伸ばすだけです。こちらも、非常にゆっくり伸ばしていって、ぴんと伸ばしたら、10〜30秒間しばらく力を入れ続けてください。
 トレーニングルームで行う方法もこの方法です。足先につける錘(負荷)はどんどん増やす事が出来るので、復帰を目指したスポーツ選手が行っている光景もテレビで時々映ります。
 この方法は、錘がない場合でも、簡単にいつでも(職場でも)出来ます。伸ばす脚の足先の近くに、反対側の脚の先の部分を載せます。そのまま下側の脚を伸ばすと、上に来ている脚が錘になります。さらに、上の脚を曲げるほうに力を入れると、伸ばす側の脚の抵抗となり、伸ばす側に、かなりの力を入れる事が可能です。こちらも、少ない回数で力を入れ続けます。やり方にはこつがいるようで、説明しても、うまく出来ない方もいます。足底が着かない高さの椅子で行う方がやりやすいのですが、普通の椅子でも可能です。ただし、腰に負担がかかることもありますので、注意してください。

膝の痛みを出にくくするための、私が行っている(=お薦めする場合がある)筋力トレーニング

 体重を載せて行うトレーニングの話です。膝への負荷ができるだけ少なく、筋力もアップして手軽に行える方法を述べます。筋力があると、必ず膝の痛みが出ないとは限りませんが、痛みが出にくくなる、膝が悪くなるのを遅らせることになります。残念ながら、体重の負荷をかけますから、変形の強い方、慢性的に痛みがある方にはお薦めできません。そのようになることを防ぐためのものと考えます。
 膝が悪い方は、痛みがほとんどでなくなってから行うことが目安です。行ってみて痛みが出たら中止してください。膝の状態がまだそこまで回復していないか、(=開始した時期が早すぎる)やり方が悪いか、(筋トレの方法が悪いと膝に負担がかかり、逆に悪化します。要注意です。)などが考えられます。

そのまましゃがみこむ形の格好のまま静止するだけでよい。(下図左)

 どこでも出来ます。手を洗いながら、歯を磨きながらでも行えます。
身体を前方に曲げると、これは前屈させる(前かがみになる)ときに腰をかばう姿勢です。
身体をまっすぐのまま膝だけを曲げて沈みこみます。膝の曲げ方を少なくすれば、負荷は軽くなります。深く曲げる必要なないと考えます。30秒ぐらい力を入れ続けることで、大腿四頭筋の筋トレになります。洗面する時だけに行うなど、習慣付けることが大事です。

四股のポーズも筋トレになる。(下図中央)

 膝の間を閉じたままでしゃがみこんで保持すると、主に大腿四頭筋の外側の筋肉トレーニングになります。しゃがみこむ時に、膝を少し曲げて四股を踏む形で保つと、大腿四頭筋だけでなく、大腿の内側部の内転筋や、下腿の前面外側や、骨盤の中の筋トレにもなります。いままでの方法では、大腿の内側の筋肉は鍛えにくいのです。膝の間に大きなビニールボールを挟んで力を入れるトレーニング方法がときどき紹介されていますが、四股のポーズだと、大腿内側の筋肉も鍛えられると考えています。こちらも、力士のように深く曲げる必要はありません。膝の曲がりが浅いと負荷は軽くなります。30秒ぐらい力を入れ続けてください。

人間椅子=空気椅子は、スポーツに復帰する方には欠かせない筋トレになる。(下図右)

 壁に背中をつけるだけで、座った格好のまま保持するトレーニングです。スポーツを本格的に行えるようになるには、このぐらい出来ないとだめと考えています。

 以上3つに共通することは、膝に体重をかけていますが、膝を動かさないので、膝に体重以上の余計な負荷がかからないこと。(スクワット運動など、体重を載せて、さらに膝を屈伸させて動かす方法は、膝の悪い方には薦めません。)膝蓋骨をぎゅっと締めて、大腿骨に圧迫する効果で、関節液の流れを改善するなど、関節の中の状態を改善する効果が期待できること。30秒ぐらいずつの短時間で行えるので、前から述べている、洗面時に歯を磨きながら行えることが出来、習慣づけて行える可能性があること。などでしょうか。

膝の後ろに付く筋肉も、膝を守る作用がある?

 膝の痛みは、膝蓋骨周囲(膝の前面)で起こることが多いため、膝の痛みを防ぐには、膝蓋骨についている大腿四頭筋が筋肉で最も大事であること確かですが、後ろ側にも、膝をカバーする筋肉が付いています。大腿の後ろには、膝下につく大腿二頭筋があります。下腿の後ろには、膝上につく腓腹筋があります。ともに膝を保護作用するはあるわけで、力がないよりは、あったほうがよいに決まっています。膝痛を防ぐ筋トレとしては、どこにも書かれていません?が、私は、これも必要と考えてお勧めします。

以前、足の痛みを防ぐ筋トレで話したつま先立ちは、簡単に出来る腓腹筋トレーニング

 膝の痛みがない時に行ってください。片足たちで、かかとを挙げて、30秒位力を入れ続けます。片足で蹴る力は、歩く時必ず必要ですので、このくらい力がなければ、この方法で力が入らなければだめと考えます。(=両足同時のつま先立ちでよりも短時間でより強力な筋トレになります。)足部の痛みが出ている方は、足の痛みもない時に行ってください。足の指(足趾)を伸ばしたままだと、足趾の付け根の関節に負担がかかり、外反母趾、爪の変形、足底の痛みが悪化しますので、足趾を曲げるように力を入れて、行ってください。これも、洗面をしながら行えます。回数は、左右一回ずつで充分ですので、習慣付けることが大事です。
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下肢の痛みでわかってきたこと
122、膝の痛み9

今回の話は、私の経験上、こうに違いない と考えている話が含まれます。

変形性膝関節症と、O脚

 変形性膝関節症は、レントゲンで、関節の内側の隙間が狭くなり、軟骨が磨り減って、骨棘(こつきょく)など、骨がとがってくる変形が多く見られます。痛みも内側に訴える場合が多いのです。関節の内側の隙間が狭くなると、脚全体は、O脚になります。逆に、もともとO脚がひどい方は、年を取った時に、内側からの変形性膝関節症になりやすくなります。

 膝の内側で痛みが出ている方で、関節の隙間が極端に狭く、変形も強い方は、O脚を矯正する治療を薦めます。矯正する直接の方法は、手術で下腿の骨を切って、まっすぐにすることですが、いきなりこの手術を受ける方は非常に少ない現状です。

O脚は、片脚立位で膝を伸ばした時に強く現れる。

 膝を伸ばして、片足で立った時に、O脚はひどくなります。多くの方を片足立ち(片脚立位)で撮影した時に気づいたことです。膝を少し曲げて片足で立つ方より、膝をピンと伸ばして立つ方のほうが、O脚が目立つのです。O脚にはっきりなるということは、その時に、必ず、膝の内側に全体重がかかることになり、内側の変形はどんどん進むことになります。

歩く時には、必ず片脚立位になる。

 歩く時は、一方の脚を前に送るので、送る瞬間の脚を上げたときに、もう一方の着地している方の脚は必ず片脚立位(片足立ち)になります。このときに、着地している脚の膝が伸び切っている方は、前述のようにO脚がひどくなります。言い換えれば、後ろからみて、O脚がひどい方は、一方の脚を上げ瞬間に、着地しているもう一方の脚の膝が伸び切っている可能性が高いのです。またまた言いますが、O脚がはっきり出るということは、内側に全体重がかかり、内側の変形性膝関節症になりやすいのです。

歩行時、一方の脚を上げているときに、もう一方の脚の膝は伸びきっていない方がよい。

 逆を言えば、こうなります。膝が伸びていない方が、膝が内側に入って、X脚となり、体重は膝の外側に載ります。O脚になりにくいのです。一方の脚を上げて着地するまで、もう一方の脚の膝は伸びていない方がよいということです。

膝を少し曲げて歩く歩き方が、膝にはよい。

 結論は、このようになります。膝を曲げて歩く歩き方は、日本人には多く、不恰好といわれてきました(私が若いころはこういわれていました。今は分かりません。)が、実は、膝にはよいことになります。膝を伸ばすのは、もう一方の脚が、地面に着いてからがよいのです。

歩き方を矯正するのは困難か

 片方の脚を上げたときに、もう一方の脚の膝が伸びきる歩き方をする方は、膝が伸びきらない歩き方に変えれば、膝の内側に負担がかかりにくくなります。しかし、長年、癖がついた歩き方ですので、なかなか変えられないのが現実のようです。

膝が悪い時に、装具は足の底に着ける

 膝の内側の変形が強い方につける装具は、膝には着けません。膝の外側に体重が載るように、足の底に、かかとの外側の高さが高くなっている、足底板と呼ばれる装具を着けます。膝が悪いのに、装具は足に着けます。足の外側を高くすると、膝は内側に入り、X脚の形になりますので、体重は、膝の外側に載ることになります。

足の底に着ける装具は、歩き方の矯正になる?

 膝が伸びきってO脚になる歩き方ですと、足の底は、外側に体重が載り、内側が挙がる形をとりますので、この外側が高くなっている装具を着けたまま、この歩き方を続けようとすると、足の底が痛くなって、非常に歩きづらくなります。自然に、膝を曲げて、X脚の形を取って歩くようになるはずです。この装具を歩く時に使い続けると、この歩き方を自然にするようになり、膝の内側にかかる負担は軽くなるのです。したがって、この装具は、立っていたり、歩く時に使うもので、座り続けていたり、寝ている時に使用する意味はありません。

O脚がひどくなりすぎると、矯正的な歩き方が出来なくなる。

 膝の内側の変形が強くなりすぎると、O脚もひどくなり、前述のような歩き方に矯正することは無理になります。この足底板は使えないのです。このような方は、逆の発想で、O脚では足の底の内側が挙がる形になりますので、足の内側が高くなっている足底板のほうが、足底の支えをしっかりさせて、歩行をサポートするようになります。

足の底は、硬いかかとの部分の外側を高くする方が、しっかり体重を支えられる。

 足底板の装具は、かかとの外側が高くなるように造る事が出来ます。これは、義肢装具適合士に造ってもらわなければならず、お金も手間もかかります。一方、安い値段で手に入る、既製品の足底板は、足首を固定するバンドについている形のものです。足首を固定する、=かかとの骨を固定することにもなり、かかと周囲の関節が弱くて、痛みが出る方にもよいですし、かかとが安定しますので、足底だけに着ける足底板の装具よりは、歩きやすくなります。しかし、実際につけると、足底板の位置が、かかとの骨のやや前方に来てしまい、(=骨に直接当たっていないと、体重を支える時に沈み込んで遊びが出来ます。)かかとの骨の部分で、しっかり体重を支えて外側が高く出来ませんので、矯正力が弱くなります。

もともとO脚の方は?

幼い頃から極端なO脚の方はいる

 歩き出しの1歳過ぎのころは、みなO脚です。その後、3歳ぐらいまでに、X脚となるのが、自然な脚の形の変化です。ところが、5歳過ぎでもひどいO脚の子供もまれにいます。このような子供に何か治療をするのか といいますと、一般的には、治療せずに、経過観察になると思います。

予防的に矯正手術はまず行わない。

 成長時期には、骨を切って形を矯正するような手術はまず行いません。骨の成長の妨げになる可能性がありますし、成長が終わってからでも、骨を切るわけですから、脚が短くなります。
装具やギプスで矯正する事が理論的には考えられますが、成長時期に着け続けることは、頻繁に造り直す必要があり、お金と、根気が非常に要ることになり、命にかかわる重大な病気になるわけでもないのに、という感じです。

歩き方に注意!

 前述した、歩き方を身体に覚えるようにしましょう。その時に、足底板は有効かもしれません。治療には、数年単位の長期の経過観察がいると考えます。幼い年齢の方や、若い方のO脚を長期に治療した経験はありませんので、このような表現です。
+次回に述べる予定の筋肉トレーニング方法も参考にしてみてください。
| 下肢痛 | 07:24 | - | - | - | - |
下肢の痛みでわかってきたこと
121、膝の痛み8

膝に水が溜まる の話

 関節の中には、常に関節液があり、水が溜まる ことは、その関節液が増えたり、血液などの別の液体が混ざって増えるということです。

1、変形性膝関節症のときに溜まるとは限らない。

 膝に負担がかかって、悪い部分が生じて炎症が起こると、水が溜まる事があります。急激な外傷によって、組織がダメージを受けも、炎症が強いと、水が溜まります。(=関節液が増えるということです。)損傷が強いと、膝の中の血管が切れて、血液が溜まることもあります。関節に骨折が達している時(骨は血液を造るところですので)も、血液が溜まります。逆に、損傷があっても炎症が起きないと、水が溜まりません。軽い損傷のときがそうですし、半月板が中央部で断裂しても、半月板そのものには炎症は起きません(=炎症が起きないと、修復もされません=手術的処置が必要になります。)ので、水が溜まりません。

 慢性関節リウマチや、尿酸などの結晶が、関節の中に溜まって、急激に炎症を起こす、結晶誘発性関節炎の時も、水が溜まります。細菌が関節内に感染して炎症を起こしても、水が溜まります。慢性関節リウマチのときは、じわじわ腫れてきます。薬が効果的に効くと、腫れがだんだん引いてきますが、薬の効果が悪いと、なかなか水が引いてきません。結晶誘発性関節炎の時は、急に腫れます。きっかけがない時もありますが、軽い外傷後や、運動などで負荷をかけた後に起こる時があり、損傷による腫れと区別つかない事があります。消炎鎮痛剤(痛み止め)がよく効いて、比較的に速やかに治るのが特徴です。(外傷の時は、組織が回復するまで、改善しませんし、次の項目に述べるように、液の性状を見て原因を区別する事が出来ます。)細菌による感染のときは、消炎鎮痛剤だけでは、改善しませんし、治療が長期に及びます。
 
高齢の方にまれに見られるのですが、変形性膝関節症であっても、何ヶ月も水が溜まり続けている方の中に、軟骨直下の骨が死んでゆく病気(骨壊死)の時があります。レントゲンでは、最初は、ただの変形性関節症で、進行してゆくと、骨壊死が見えてきますので、腫れが引かない時は、3月に一回ぐらい、レントゲンを取り直すほうがよいと考えています。

2、溜まる液体の性状の違いで、原因を推測することができる。

 変形性関節症や、軽い損傷のときは、透明な黄色い液体が溜まります。よい関節液は、粘り気が強いのですが、大量に溜まると、さらさらな場合が多いです。さらに、負担が強い時は、軟骨がはがれて、白い浮遊物として見られるときもあります。損傷が強くて、中で出血している時は、血液が溜まります。関節内に骨まで達する損傷があると、血液の中に、骨髄からの脂肪が血液に浮いている事が認められます。明らかな外傷がなくても、血液が溜まる時もあります。膝の中の血管が切れた時で、高齢者に診られ、丁度、脳の中で血管が切れるように、膝の中で血管が切れると考えています。関節の中の滑膜という組織の病気のときも血液が溜まりますが、こちらは頻度が非常に少ないです。出血が軽度ですと、関節の黄色い透明な液の中に、血液が混ざり、薄まったような血液が溜まります。
 炎症が強い、慢性関節リウマチや、結晶誘発性関節炎の時は、関節液がにごっています。透明ではなくなります。これは、炎症が強いと、白血球などの細胞成分が増えるためです。細菌の感染のときもにごりますが、ひどくなると、膿のようにどろどろになります。関節液がにごっているときの、これらの原因疾患の区別は、診察所見や、1で述べたような、治療の反応でわかります。

このように、状況によって、溜まる液体が違いますので、水を抜くことにより、原因を推測する事が出来ます。

3、溜まる液体の性状で、症状も違う。

 透明な黄色い液体が溜まる時は、関節の衝撃を和らげる役割をしていると考えられ、痛みが余りありません。ただ、あまりにも大量に溜まると、圧迫感が強く、障害となります。リウウマチでも、水が溜まっていても、痛みがない時は、関節の衝撃を和らげていると考えられ、抜いて水を少なくすると、痛みが増す事があります。ただし、リウマチの時は、変形性関節症や、外傷後の水が溜まる時と違い、あまり痛くないからといって、放っておくと、時間とともに(月単位に進行すると考えてください。)、軟骨が解けて、骨まで破壊されてゆきます。変形性関節症の水も溜まり続けたまま放っておくと、軟骨が解けると考えますが、進行速度が違うのです。また、骨は破壊されずに、それを修復しようとして、骨がとがってくる、いわゆる変形となります。
 変形性関節症や、外傷後の水腫(水が溜まっている状態)でも炎症が強いと、痛いときもあります。一般に、炎症が強ければ強いほど、痛みが強くなります。外傷後に、膝に血液が溜まっている時は、激痛ですが、それ以外では、細菌が感染して化膿している時が、一番痛がる方が多い印象です。次に結晶誘発性関節炎の時、そして、慢性関節リウマチのとき でしょうか?
痛みが強い時は、炎症が強かったり、膝の関節腔一杯に溜まっていますので、抜かざるを得なくなります。

4、炎症が続いていたり、悪いところが改善しないと、溜まっている水が引かない。

 リウマチで膝に溜まっている水がひかない時は、炎症が続いていて、コントロールがうまくできていない(進行して、関節が壊れてゆきます。)と考えてください。現在飲んでいる薬があれば、それだけでは不充分ということです。次の段階の薬や治療が必要です。変形性関節症や、外傷後に溜まっている水が引かない時は、軟骨が傷んだままで改善してこない、怪我で傷めたところの回復が充分でないということです。(1で述べた骨壊死のこともまれにあります。)より安静が必要であったり、装具が必要であったり、(どのような装具なのかは、後述する予定です。)場合によっては、MRIなどの精密検査が必要です。検査で手術が必要な損傷がわかることもあるからです。

水を抜くと癖になるから水は抜きたくない の話

 このように訴える方にしばしば遭遇します。
 水を抜くと癖になるというのは、水を抜いてもすぐまた水が溜まる。そこでまた水を抜くという繰り返しになることです。なぜこのようになるかは、4の理由からです。水を抜くということは、関節の中に針を刺すのですが、中の溜まった液体を抜いた後、そのまま針を留置しておいて、そこから、ヒアルロン酸や、副腎皮質ホルモンなどの改善を目的とする薬を入れます。つまり、抜くと同時に、薬も入れるのです。それでも、以前と同じように使っていては、悪いところがなかなか改善しませんので、また、水が溜まってしまうのです。抜いて薬を入れると同時に、安静を保って、改善を待たなければだめということです。リウマチでは、次の治療に進まなければだめということです。活動範囲のあまり広くない女性の方は、比較的安静を保ってくれますので、水を引いて癖になる方は少ない印象です。ところが、活動性の高い比較的若い方(特に男性)では、なかなか水が引かず、繰り返し水を引くことになる方が多くなります。しかし、根気よく水を引いて薬を入れてゆくうちに、悪いところが改善してゆけば、水は溜まりにくくなりますから、繰り返すことも必要な場合があるのです。

また、2の原因を推測するために、水を抜いた方がよい時もあります。
3の、痛みが非常に強い時も水は抜いた方がよいです。

 ただ、水が溜まっていても、あまり痛くないときは、4に準じて、以前の活動を制限して、安静などを保ったり、装具を使ったりすることで、必ずしもすぐに水を抜く必要はありません。ヒアルロン酸も水を抜かずにそのまま打つこともあります。(本音を言うと、水が溜まっている時の方が、ヒアルロン酸は関節に入りやすいのです。ただ、あまりに大量に溜まっていると、効果が薄まってしまいますので、抜きます。)消炎鎮痛剤(痛み止め)も、炎症を抑えて、水を溜まることを抑える方に働きますので、痛みが強くなくても、指示通りに飲んだ方がよいこともあります。悪いところが回復してくると、自然に水も吸収されますので、そうなればよいのです。ただ、溜まりっぱなしは、軟骨が傷んできますので、よくないことは事実です。あくまでも、改善するように心がける事が前提です。
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下肢の痛みでわかってきたこと
120、膝の痛み7

ヒアルロン酸の話の本音

ヒアルロン酸の注射薬の効果

 今回の話は、この注射だけを受ければよいというわけではありません。
膝が悪ければ,膝によくないと述べてきたこと、歩きすぎない、使いすぎない、痛くなることを避ける、(特に階段の上り下り、体重をかけて屈伸する動作、重いものを持つ動作、自転車を乗り回すなど)スポーツをされている方は休む、無理をしない、さらには、まだ述べていない、膝の周囲の筋力を保つ、鍛えるなど、膝に悪いことは避け、よいことを行う事が前提です。

 ヒアルロン酸には、軟骨を回復させる作用があり、軟骨の破壊が治まり、進行が止まる、さらには繊維性の軟骨(元の軟骨とは違う形になります。)で回復してくることを期待します。元のような軟骨に戻る、軟骨が増えて、狭くなった関節の隙間がまた広がるところまでは、効果は期待できません。(と言っておきます。このことに関して最後にもう一度述べます。)
 組織の回復する作用が強いため、変形性関節症だけではなく、怪我による損傷を回復する作用もあり、外傷のあと、治りが遅れている関節に打つと、回復する事があります。ただし、明らかに回復しないような形の損傷もあります。MRI検査で、半月板の断裂が明らかな時などです。これは、半月板の軟骨自体は、切れると、再びつながる修復能力がないためです。半月板断裂部の周辺の組織の、炎症や損傷を回復させますので、痛みは改善しますが、半月板断裂そのものによる、膝をある角度にすると、引っかかる、ロックして動かなくなるなどの症状は改善しません。逆を言うと、MRI検査で、回復不可能な損傷がない外傷の時(=MRI検査でほぼ異常無しの時)は、回復する可能性があるということです。

注射時に関節に薬が入らないときがある。

 通常は、薬が関節に入ると、スッと入る感覚が注射器のピストンを押す手に伝わります。ヒアルロン酸は、分子量(物質の大きさと考えてください)が大きい上、その構造から、水などよりは、はるかにねばねばしています。そのため、スッと入ってゆく感覚がわかりにくい事があり、入っていると思っても、そうでないことがあります。関節は、もともと大きな空間があるわけではなく、関節の中にも滑膜などの組織があるため、針先の妨げとなって、関節の外に薬がいってしまう、あるいは、滑膜などの組織自体の中に薬が入ってしまう事があるのです。
 MRI検査が出来る以前は、関節造影検査をよく行っていました。半月板などの軟骨は、レントゲンで写りませんので、造影剤と空気を一緒に入れて、半月板の輪郭だけを浮き立たせて、レントゲン撮影してその形を見る検査です。(造影剤だけだとレントゲンで白く写って半月板の形がわかりません。)20CCの注射器に、空気と造影剤を一緒に入れておき、先に空気を大量(20CCぐらい)に入れて、入っている感覚をつかむと同時に、関節を膨らませて入りやすくしておいて、引き続き造影剤を入れます。造影剤も、ねばねばしていて、関節に入いる感覚が掴みにくいためです。それでも、関節に入らない事があるのです。注射した針の位置は変えていないはずで、空気は入るのに、造影剤は外にもれることもあるということです。造影剤はレントゲンで写りますので、関節の外に漏れるとすぐにわかります。
関節の中にきちんと薬が入らないと、効果があがる(必ずしも全く効果無しではないです。)はずがありません。また注射時の強い痛みは、この時が多いと考えています。

高分子ヒアルロン酸のほうが、理論上は効果があるはずだが?

 関節に打つヒアルロン酸は、分子量が大きい薬と話しましたが、実際に関節液や、軟骨に含まれているヒアルロン酸に比べて、分子量の小さいものも多く混ざっています。これを、出来るだけ大きい(=高分子の)分子量のものをそろえたのが、後から発売された、高分子ヒアルロン酸です。理論上(=データ上)では、組織の修復力がより強く、効果が高い事が証明されていますが、実際に使うと、あまり違いがわかりません。従来のヒアルロン酸の注射から高分子のヒアルロン酸に変更して、よくなった方もいますし、あまり変化がない方もいますし、逆に、以前のほうがよかったと訴える方もいます。原因のひとつに、高分子になると、よりねばねばが強くなり、関節に入る感覚がさらにわかりにくく、入っていない可能性が多くなるためか とも考えています。

軟骨を修復するための薬はヒアルロン酸の注射薬だけ

 ヒアルロン酸の飲み薬、グルコサミン、コンドロイチン硫酸の飲み薬は、民間薬や、一部医薬品として売られていますが、病院の処方薬としては、認められていません。どのくらいの確率で効果があるのか、軟骨を修復して、レントゲン上でも改善が見られるのか、他の薬との相互作用や、副作用を起こす確率などのデータ(=エビデンデンス)がまだ出ていないと考えてください。加えて、グルコサミン、コンドロイチン硫酸も分子量が大きく、そのままでは腸から吸収されません。小さく分解されて、吸収され、それからまた、体の中で合成される必要があるのです。それを考えると、果たして本当に効果があるのか そんなもの飲んでもしょうがない と考える先生が多いのもうなずけます。ただ、ある程度の軟骨の障害=ひどい変形性関節症になる前 の膝には、かなりの方に、痛みを取る作用がある印象です。軟骨を修復して、実際にレントゲン上でも改善が見られるのか?(=立位での撮影で、関節の隙間が明らかに広がる)経験上、これも改善が見られた例はあるのです。が、全員がそうなるとはとても考えられませんし、どれくらいの確率でおきるのかはわからない(=処方薬でない)のです。
 そこで、このままだと、手術になってしまうような膝には、進行を防ぐため、飲んでみてもよいと私は考えています。副作用としては、飲み続けていると、下腿がむくんでくる方(特に年を取った女性に)が見られます。分子量が大きい分、腎臓への負担があるようです。

 レントゲンで、関節の隙間が広がって、軟骨が修復されたと考えられる例は、実は、ヒアルロン酸の注射と、超音波治療を繰り返している膝の方にも見られています。(確率的には、少ないです。)したがって最近は、もっぱら、ヒアルロン酸の注射、とリハビリ、必要なら装具を装着して、経過を追っています。
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下肢の痛みでわかってきたこと
119、膝の痛み6

今回から 変形性膝関節症 の話です。

 関節の変形といったら、膝が非常に多いです。そのうち、前回も少し触れたように内側の軟骨から痛んでくる方が多いのです。内側の半月板が薄くなり、あるいは傷んできて、硬い軟骨も磨り減ってきます。期間が長くなると、それを修復するように、骨がとがってきます。診察の症状は、寝ていて完全に膝が伸びずに、膝の後ろが床に付かない。完全に曲がらなくなる。進行してくると、膝が膨らんだ感じの、特徴的な形になって、見た目でもすぐにわかります。自身の症状としては、正座が出来なくなる。歩く姿が、O脚になる。ひどくなると、歩く時に痛みが出て、歩行能力が落ちてきます。
 治療は一般的に言われている、筋肉を鍛えてカバーすること。(特に大腿四頭筋の訓練、膝を伸ばす訓練。)ヒアルロン酸の関節注射。痛いときには、いろいろサポーターや装具を着ける。などです。ここでは、あまり他では書かれていないと思われることを書いてみます。

治りのゴールを見極めること

 すでに変形してしまっている膝は、元には戻りません。元にもどすと言うのは、若返らせろ といっているようなもので、現代の医学では無理です。それぞれの変形の程度や、症状の進行状況で、どこまで回復すればOKか納得されることが重要です。変形は残っても、炎症が治まって、進行が止まれば、症状は軽くなりますので、それが治療目標となります。

 運動が出来ていた方は、また運動に復帰することが目標です。
 正座が出来なくなってきている方は、正座がまた出来る程度まで回復する可能性があります。
 正座や、屈伸がすでに出来ないでかなり時間が経っている方は、再び正座を行うようにすることは無理ですので、苦痛なく、歩けることが、目標です。
 歩けなくなってきている方は、ある程度歩けるようになることが目標です。

 これを無視して、長い間、正座が出来ずに、歩くのも苦痛になってきている方の目標が、正座や屈伸が出来て、歩けて運動も出来るようになる ことは無理な目標です。一時的に痛みがひどくて出来ない方や、初めて出来なくなって間もない方は、元に戻ることが可能です。症状が出たら、すぐに治療する、ひどくならないように予防をする ことが大事なのです。

痛みを抑える

 痛み止めは、シップや、消炎鎮痛剤を使用します。特に最近では、理論上、軟骨を修復方向に働く痛み止めが出てきています。ただし、痛みを抑えて痛くないからといって、使ってしまってはだめです。痛み止めは、炎症を抑え、組織を回復する目的で使うのです。痛みがあると、使わないから安静に出来ると思われますが、痛い=苦痛ですので、苦痛が続くと、精神的にも悪く、組織の回復の妨げになりますし、痛いことを記憶してしまうと、今度は痛みを取ること自体が大変になるのです。痛みは早く楽にした上で、比較的安静にして回復を待つのがよい と言うことです。

 痛みが長引いて、痛みがなかなか取れない方は、消炎鎮痛剤に、ノイロトトピンという、痛みを抑える神経の活動を高めて、敏感になっている痛みを抑える薬が有効なことがあります。体質に合う、漢方薬も効果が出ます。特に、むくみや、他の症状を伴う時や、胃が弱くて痛み止めが飲めない時にも、漢方薬が効果的です。

 器械による消炎鎮痛(=リハビリテーション、詳細は、ホームページを参照してください)は、超音波治療、SSP治療が効果的です。膝の奥まで到達して炎症を抑えて、組織を回復を促すのは、超音波治療と、レーザー(スーパーライザー)治療です。レーザー(スーパーライザー)治療は、照射範囲が狭いので、痛みの原因部位を絞れる時には効果がありますが、より大きい範囲で照射できる超音波治療が有利です。原因部位にしっかり照射できると、少しぐらいの半月板損傷などは回復してきますので、驚きです。
 SSP治療は、電極数が多いので、低周波電流を膝全体に流すことが出来ます。それに比べて、トリオ治療器は電極が一台に4電極しかありませんので、台数が要り、不利になります。これらは、麻酔効果があり、痛みを抑えます。注射の前に行うと、注射の痛みがいくぶん楽になります。傷があって消毒するときは、明らかに痛みがなくなります。また、治療受けた後、麻酔効果を利用して、会計や処置待ちの間に、座ったまま膝の屈伸運動練習を行うには有利です。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)関節注射を効果的に使う。

 ヒアルロン酸の関節注射が普及したのは、これまた、ここ20年ぐらいです。それ以前は、もっぱら、ステロイド注射を行っていました。炎症を強く抑えることは、痛み止め(消炎鎮痛剤)より強力で、それに伴って痛みもよく取るため、以前はかなり打たれていましたが、続けて打ちすぎると、組織が破壊されたり、刺激痛が出てきて、逆に炎症が強くなります。(このように言われますが、経験はありません。)そのため、知識のある方では、この注射はよくない と思い込んでしまっている方もいますが、そうではありません。
 回数を制限したり、間隔を充分あけて打ちます。(最初は1週はあけます。5回目以降は、2週以上あけます。あるいは、休止します)打った後、充分組織が回復していれば、また打てると考えています。
 炎症を抑えるには、最も効果がありますので、炎症が強くて痛みが強い膝や、水が溜まり続けている膝に打つと、効果抜群です。ただし、痛みがよくなったからといって、普通に使っていると回復は妨げられますので、安静は保つことです。

ヒアルロン酸の関節注射

 ヒアルロン酸は関節液の主成分です。この成分を関節に注射することにより、炎症を抑え(ステロイドよりははるかに弱いですが)、潤滑をよくして(皮膚の潤滑もよくしますので化粧品としてもよく使われます)、軟骨などの組織の回復を促します。特に、組織の修復能力は高い印象です。変形性膝関節症でなくても、半月板や、靭帯損傷のとき回復が遅れている場合に打つと、治りが早くなる印象です。保険適応は膝と肩だけですが、他の関節にも効果があります。
 ただ、注射時の痛みは、ステロイド注射の時よりも強く、注射後にも、一時的に痛みが強くなる(人により、その日だけ、2,3日続くなど、差があります。)こともあります。分子量(=物質の大きさ といっても細菌よりはるかに小さいのですが)が大きく、粘り気が強いので、足や、肘などの小さい関節に打つと、痛みが強い印象です。

注射時の痛みをどう減らすかが、受けてもらえるかどうかの鍵

 外来では、注射は痛くて、怖くて、受けられない 方も多く見られます。ましてや、ヒアルロン酸の関節注射は、打つときに非常に痛い事もあります。痛い事があるというのは、膝の皿の外側の上(股関節側)から打つのですが、同じ場所から打っても、かなり痛いときと、あまり痛くないときがあるということです。
 注射嫌いの方は、痛みに弱い方が多く、痛みなく注射することが、医療側の悩みの種です。
 当院では、SSP治療や、トリオ治療後で、少し麻酔がかかった感じにして打つようにしています。さらに、表面から関節の中にかけて麻酔剤をまず注射してから打つと、さらに痛みを減らすことが出来ます。この、局部の麻酔をしたあとに、注射する事が、今一番痛みなく注射する方法と考えています。
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