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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
上半身の痛みでわかってきたこと
150、手の痛み

ついに指の先まで到達します。わかってきたことシリーズは今回を一区切りといたします。

手首が痛い

前腕は、小指側にある尺骨(しゃっこつ)、親指側にある橈骨(とうこつ)という二つの骨があり、手首(手関節)も、この二つの骨と、手根骨と呼ばれる、小さな骨が集まって出来ています。この尺骨の尖端には、動きをスムースにする軟骨のクッションがあります。
多くの患者さんを診ていると、このクッションが痛みの原因になっている方が多いのに驚きました。男の方は怪我で傷めてこの部分で痛みが出ることが多く、女性は自然に痛みが出る方が多く診られます。特に、尺骨と橈骨の間がゆるかったり、尺骨が長くて二つの骨のバランスが悪い方は、二つの骨の間が大きく動いて、このクッションを傷めやすくなります。

当院では、超音波治療や、スーパーライザー治療(ホームページ参照)で炎症を抑えていますが、基本は、手首の安静です。肘の時と同じように、手のひらを上に向けて手首を使うと痛みますので、肘を少し曲げて、手のひらを下に向けて使うようにします。また、痛みがないほうの手を使うようにすることも重要です。
固定は、傷め方の程度で決めます。怪我で損傷がひどいと、ギプスで固定することもあります。尺骨の先端部分の動きが大きく=尺骨と橈骨の間の動きが大きい時は、テーピングで押さえたり、弾性包帯で固定します。
改善が悪い時は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を注射することもあります。
損傷がひどく改善が認められないときは、手の外科の専門の先生に紹介して、関節鏡の処置(=手術)などを行うこともあります。

親指を動かすと痛い

比較的若い方で、親指(母指)を小指に近づけたり、外側に広げる時に手首が痛いときは、親指を伸ばしたり、外に広げる腱の腱鞘炎の可能性があります。特に、産後の女性はなりやすい病気です。
障害部分は、ピンポイントで狭いので、当院では、主にレーザー(スーパーライザー)治療を行っています。
固定は、ひどい時は、プラスティック装具や、ギプスのあて木を造ります。堅い固定で親指を安静にします。それ以外は、テーピング、弾性包帯、柔らかい装具で固定します。産後の腱鞘炎は一時的なものがほとんどで、この固定安静を2〜4週間続けると充分改善します。
改善が悪い時は、ステロイドを腱鞘内に注射します。ステロイド注射は一週間は間隔を開けて、4〜5回程度施行します。それで全く改善しない時は、改善が見込まれないときです。ステロイドは、組織を弱くしますので、それ以上続けて回数を打つことを避けるのが普通です。が、2週間ほどで注射した部位の組織は回復するとも考えられますので、この注射で改善する時は、さらに、2週ごとに数回打ち続けています。2週ごとに打ち続けても、副作用は出た経験はありません。
改善が見込まれないときは、手術目的で紹介しています。

高齢の女性(男性もいます)では、親指の付け根の変形性関節症がしばしば診られます。
変形性関節症とは、まず、軟骨が磨り減ってきて、関節の隙間が狭くなります。次に骨が関節の負担を補うように尖ってきます。さらに進行すると、軟骨に接する骨が硬くなったり、壊れてきます。
治療は上と同じですが、高齢な方が多いためか、酷使する方が少ないのか、注射(この場合は、透視を見ながら関節内に打ちます)治療まで行く方がたまにおられるぐらいで、手術紹介の経験はありません。
変形性関節症は残っても、痛みが出なくなればよいということです。

高齢者の手首の骨折は変形が残ってもあまり痛がらない

骨が弱くなっていると、転倒して手の着き方が少し悪いと、尺骨と橈骨の手首に近い部分の骨折を起こします。損傷が強いと、骨折部がずれて変形する骨折になりやすくなります。麻酔をして引っ張って整復すると、ほぼもとの形に戻るので、そのままギプス固定しますが、問題は、ギプスで固定を保持していても、損傷時のずれて変形した形に戻ることも多いのです。それを避けるには、手術して、金属で整復した位置で止めておく必要があります。そのため、希望を聞いて手術紹介をします。ご高齢の方は、手術を希望される方は少なく、ご了解を得た上で、そのまま固定のみで治療を続けることもしばしばです。
予想通り、受傷時の変形した形に戻って骨折がついた場合は、レントゲン上では、手の外科の先生に言わせれば、その治療は落第です。しかし、実際は、使っていて、あまり痛い、不便だという方がほとんどいません。結果オーライなのです。ご高齢なので、あまり酷使しないことがその理由と考えています。中には、40代の女性でも手術は絶対いやだといって、変形治癒したのですが、痛くなく使えます という方もいました。

この部分の骨折は、子供が転んでも起こし、かなり診られますが、こちらは、若木骨折といって、細い木の枝を折ったときのような、つながったまま折れる折れ方になることが多くなります。少しひどいと、橈骨が曲がった形になります。まっすぐな状態から30度以上角度がついている時は、整復して元にもどすとされますが、整復しなくても、10歳以下のお子さんなら、回復力が強く、もう少し角度がついていても、ほぼまっすぐに戻ってきて、不便なく使えます。

変形性関節症は俗言う指の第1関節が多い。

手の変形性関節症でよく診られるのは、先に述べた親指の付け根の関節、そして、この一番指先の関節(親指は除く)です。指先から2番目の関節にも変形性関節症が起こりますが、外来患者さんの数は、ぐっと少なくなります。起こす方は、ほとんどが中高齢の女性です。よくリウマチを心配されてこられる方もいますが、みためで明らかに変形性関節症とわかります。関節リウマチは、3番目の関節が腫れてくることが多く、次に2番目の関節が腫れます。腫れ方も尖った(かくばった)ような変形でなく、もわっ?と腫れる感じです。一番目の関節が腫れることはほとんどありません。
診られるのは、小指、人差し指、中指、薬指の関節です。親指にはあまり診られません。この順に多く起こすかもしれません。人によって進み方が違います。小指だけの方、次々と他の指も変形してくる方、、来院された時の患者さんの進行状況の違いだけかもしれませんが、どんどん進んでゆく方、比較的進行がゆっくりな方の違いはあると考えます。ひどい方になると、親指以外の指すべてに起こり、指先が曲がってきます。同時に、指先から2番目の関節も変形してきます。
治療は、進行を食い止めて、安定させることです。これはどの場所の変形性関節症も共通の治療目標です。
当院では、小さな範囲を照射できるスーパーライザー(レーザー)治療を行っています。消炎鎮痛剤の痛み止めも進行を止める作用がありますが、関節リウマチを同じように飲み続けなければなりませんので、希望する方は少なくなります。指の皮膚が硬くなることを防ぐ薬を使う先生もおられますが、効果は不明です。
安静目的に、テーピングをして、関節に負担がかからない様に常に保護します。水を使う時は手袋でぬれないようにするか、巻きなおさなければならないため、し続けられる方が少ない現状です。

デイップエイドが便利

昨年の8月に発売されました。貼り付けるだけなので、装着が簡単です。少しぐらいぬれても固定しつづけられます。が、中はふやけます。着けなおすこともできます。が、もって3日間位です。ワンサイズで、小さな方の指先の関節にはやや大きめです。2番目の関節の固定にも使えます。親指の付け根や、3番目の関節にも使うことが出来ます。巻きつける形にはなりませんので、固定力は落ちますが、何もつけないよりは、はるかに制動になります。

ばね指の話

大人では
親指では、指先から1番目の関節が、他の指では、指先から2番目の関節を曲げ手伸ばす時、引っかかってカクンとなります。実際は、この関節が引っかかるのではなく、親指では、2番目の関節の、他の指では3番目の関節の手のひら側の部分で、腱鞘が炎症して厚くなり、指を曲げる腱が引っかかるのです。
軽いと、原因部分ではなく、曲げる関節の痛みを感じる方もいます。朝だけ引っかかる方もいます。進行すると、2番目の関節(親指では一番目の関節)が充分伸びなくなります。
さらに進行すると、その関節を曲げると戻らなくなります。そのため、さらに放置すると、曲げないようにするためか、その指自体が充分曲げられなくなります。
原因は、その指の使いすぎ、関節リウマチなどがありますが、わからないことも多いです。

乳児では、
まれですが、親指にたまに診られます。指先から1番目の関節が曲がったまま固定する形になります。こちらは、腱鞘が厚くなるのではなく、指を曲げる腱自体が太く、引っかかって動かなくなります。指を伸ばす様に少しづつ矯正すると、5,6才位には治るといわれますが、その前に手術する先生も多く、症例が少ないため、不確かです。

注射は入らないことも多い。

治療は、原因の腱鞘内に、ステロイド注射をします。若い頃は、手首側から入れるように指導されましたが、腱鞘が厚くなっていると、指を曲げる腱との隙間が狭く、うまく薬が入らないこともあります。入らないと、もちろん効きが悪くなります。指先側のほうが、腱と腱鞘の隙間に余裕(実際、手術の時見てもそうです)があり、最近は、指先側から行っています。手の外科の先生が、こちらから注射しているテレビ画像が出て、この方法に変更しました。

ばね指は原因となる関節の固定が効果がある。

親指なら、先から2番目の関節だけを、他の指なら3番目の関節だけを固定して、指先の関節は動かします。原因関節より先の関節を固定すると逆効果です。この方法は、勤務医時代の15年以上前から行っています。その方法をなぜ始めたかは覚えていませんが、そのとき一緒に仕事をしていた手の外科の先生に、その方法は、理論的には正しいです。といわれたことは覚えています。
ただ、この治療は、本人の根気が要ります。
固定には、アルミニウムの硬い固定を使うことが一番効果があります。ただし、数ヶ月間、できるだけ着け続けなければなりません。水を使う時ぬれないようにはずしたり、それ以外、使う時邪魔なので、なかなかきっちり着けていただけません。そこで、テーピングで固定してみました。手袋をして少しぐらいなら水仕事が出来ますが、つけ続けることが出来ない方も多く、固定力も弱いため、効果は劣ります。ディップエイドで固定する方法でも、何もつけないよりは効果があるようです。つけ続けられない方は、この方法で固定を薦めています。

進行しているばね指は、手術治療が一番早く治る。

腱鞘を切開して腱の引っ掛かりを取る手術です。うまく行けば、2週間で切開した創が治った時に治っています。

ただし、うまく行かないことがある。
簡単な手術なので、新人が行う。簡単だと思って行うと、指へ行く神経を傷つけて、痺れが残ったり、感染して、なかなかすっきり治らないなど。

手の外科の手術は、前腕部や上腕部でしっかり血を止めて、手術中に出血しないようにして、神経や血管を損傷しないようによける必要があります。しかも、他の組織を傷つけないように、アトロウマティックという方法で行い、他の部分の手術方法とは別と考えています。簡単だと考えて、ざっと手術したりするとこのようなことが起こります。
また、きちんと清潔にして行わないとマイルドな感染も起こします。大学病院のほうから、ばね指の手術ぐらいなら医院で出来るだろうといわれて、開業当初は行っていましたが、感染しやすいため、今では全く行っていません。清潔な空気、清潔な手術する空間を造れる手術室で、充分手洗いしてから行わないと“だめ”ということです。

第1関節で、指を伸ばす腱が切れても放置する人がいる。

人差し指から、小指までの4本に起こります。怪我をした後、指先から1番目の関節が曲がってしまいます。そのままにしても、2週間ぐらいで痛みが取れ、その関節が伸びなくても、元のように曲がって使えますので、放置する方もいます。(昔怪我をしてそのままにしましたという方に何人も遭遇しました。)
腱と一緒に、骨も折れることがありますが、曲がったままでもくっつけば、元のように使えます。
治療は、指をまっすぐにして、腱がつくまで、6週間は固定し続けるのですが、2週間ぐらいで楽になってしまうため、はずして使ってしまう方も多く、固定し続けられる方は少ない現状です。そこで、鋼線を挿入して動かないようにすることもありますが、はずして動かしていると、腱が伸びて=関節の伸びが悪くなって治ることも多い印象です。
完璧に伸びるように治すのは、腱を元の位置に引っ張って細い鋼線で骨に止めておく方法です。かなり手の外科の凝った手術になり、ここまで行うことは通常ありません。(勤務医時代は、手の外科の細かい手術も好きでしたので、行いました。この方法で治療した女性は完璧にまっすぐになりました。)

爪を傷めると下から新しい爪が生えてくる

怪我でも、感染でも爪を傷めたとき、軽ければ、そのまま爪が残りますが、それ以上の重傷なときは、残っている爪の下から、新しい爪が生えてきます。残っている爪の根元が、一月過ぎる頃に浮いてきます。二月過ぎ頃には、根元の爪が浮いて、指先に少し追い出され、下に新しい爪が見えてきます。そのまま徐々に、古い爪は指先に押し出されていって、新しい爪がどんどん見えてきます。ついには、古い爪は自然に取れて新しい爪だけが残ります。
それまで、何ヶ月もかかります。古い爪を早めに取ってしまうと、新しい爪がまだ充分伸びていませんので、3,4日は取れた爪の下の皮膚が痛いのですが、次第に通常の皮膚に置き換わって、短い爪の状態になってから、元の形に戻ります。これも非常に時間がかかります(下手すると年単位?)ので、充分新しい爪が伸びるまで、古い爪を残すようにバンドエイドなどで押さえる様にしています。
週に2、3回、トリオ治療を行って治癒を促すと早く治る印象ですが、それでも新しい爪に置き換わるまでは、3ヶ月以上はかかります。


わかってきたことシリーズ補足;
仙骨部硬膜外ブロックを横向きに寝て、透視下で行うと、入る確率がぐんと上がる。

このブロックは、入れば、強い椎間板ヘルニアや仙腸関節からなどの骨盤の痛みを軽くすることが出来ますし、その場では効きが悪くても、どんどん楽になる方向に持ってゆくことが出来ます。(非常にまれに、施行した後痛みが強くなる方がいますが、これは痛みを抑える神経がほとんど働いていない状態の方です。)施行後の休む時間も15分ぐらいで済むことが多く、その場ですぐに行いやすいものです。
しかし、
仙骨の下には穴が開いていて、硬膜外につながっていますが、その孔の位置がわからず、入らないこともあるのが、このブロックです。以前は、透視下で、うつ伏せで行ってみましたが、やはり入らないこともあり、効果が上がりませんでした。そこで、最近までは、ベットでうつ伏せ(あるいは横向き)で行っていました。(一般に整形外科医は皆この形で行います。)
当院では、レントゲン透視台に右上の横向きに寝ていただいて、レントゲン透視装置で、腰椎を正確に横向きに合わせます。腰椎の突起が背中に触れますので、その延長線上が真ん中ですから、図の位置ぐらいから針を挿入(刺入)します。この部分に明らかに穴が開いているのが、皮膚の上からわかる方、全くわからない方、孔がいくつかに分かれて触れるような方などがいますので、刺入部位を決めるのに非常に役立ちます。針が中に入ってゆくときは、針がぐっと入る感覚がわかります。この方法の難点は、透視を見慣れている必要のあることです。仙骨の側面は透視でわかりづらい上、針先の位置もわかりにくいのです。ポイントは、正確に側面に合わせることです。
| 上半身の痛み | 13:11 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
149、肘の痛み

肘の痛い方の参考になれば幸いです。

テニス肘

肘の外側(手のひらを前に向けてからだの外側に当たる部分)=親指側 の、手首や指を動かす筋肉が付く部分の炎症です。手首を手の甲側に反らしたり、人指し指や中指を伸ばしたり、雑巾を絞ったりしてひねると、痛みが走ります。テニスなどのラケットを振るスポーツする人に多く診られるために、この名が付いています。

テニス肘はテニスなどのスポーツが原因でないことが多い。

自然に起こります。ただし、中年に差し掛かった女性、中年の男性などに診られ、若い方には少ないです。それらの年代の方が、腕を酷使していれば、スポーツでなくてもなりやすいです。

手首をこねると肘に痛みが出る。 

肘の外側には、手首を手の甲側に反らしたり、指を伸ばす筋肉、前腕部分を回す筋肉が付いていますので、最初に述べたように、手首を動かして使っていると痛みが出ます。反対の内側にも、手首を手のひら側に曲げたり、指を曲げる筋肉が付いていますので、同じです。

肘も変形性関節症になる

肘は体重が乗るなどの強い負荷がかかりませんし、肩ほど大きく動きませんので、レントゲン上はっきりわかる変化まで進む方は少ないのですが、多少なりとも、老化は起こります。老化して、油切れになると痛みが出やすいのです。そのような状態な方が、テニスひじの症状が最も出やすくなります。

肘は負荷に弱い

逆に、下肢の膝、股関節などと違い、普段、体重を支えるなどの強い負荷にさらされていませんので、少しの負担でも痛みが出やすくなります。

利き手の肘の痛みは治りにくい

右利きの方は、洗面、化粧、(歯磨き、ひげそり)身の回りの動作など、ほとんど右で行っています。指を使う、手首を使うことは、前述のように肘に響きますので、痛いときは、反対側の手でも出来るように訓練することが重要になります。

手首を安定させる必要がある。

手のひらを下に向けて、手首を固定して、そのまま指をとじて物をつかむように使います。手首を動かすと、肘に響きます。

手首をひねらずに、回さずに使う。

手のひらを上向きにして、さらに手首を動かしながら使うと、肘に負担がかかります。

そして、肘を伸ばして使うと、筋肉が引っ張られて、筋肉の付いている肘の部分により負担がかかる。

→肘を少し曲げた状態で、手を使うことを勧めます。肘が伸びないように弾性包帯で固定して使うこともひとつの方法です。

肘を屈伸すると痛みが出るときも、肘を安静にする。

変形性関節症が進むと、あるいは炎症が肘の関節全体に及ぶと、肘を強く(充分に)伸ばしたり、強く(充分に)曲げたりする時に、痛みが出だします。このときも、肘が曲がらないように、伸びないように、やや肘を曲げた位置で弾性包帯で固定して動きにくくするとよいです。
中年の男性の肘の痛みは、変形性関節症、高尿酸結晶による関節炎の予兆(発作を起こすのが、痛風です。)、使いすぎなどの関与が多くなり、これに当てはまる方が多くなります。

手の中の筋肉と、前腕の筋肉を鍛える。

中年に差し掛かった女性などは、筋力不足が根底にあります。
痛みが出なければ、手首を固定して、手のひらを下に向けた位置で、肘を少し曲げて、俗に言う、指の第1関節と、第2関節をピンと伸ばしたまま、つまむ運動をお薦めします。
指を伸ばしてつまむことで、手のひらの中の筋肉を鍛えて、手首を安定化させます。それとともに、前腕部分の肘の外側と内側に付く筋肉を同時に鍛えられます。この筋肉が強いと、肘を保護して肘の負担を軽くします。

手の中の筋肉と、前腕をストレッチする。

痛みが出なければ、肘を少し曲げた位置で、ストレッチは、指と手首をすべて曲げて、あるいは伸ばして行います。
筋肉トレーニングと、ストレッチは、痛みが強いと出来ません。その場合は、まずはあまり使わずに安静です。

野球肘は、肘の内側が痛くなる。

野球をする少年に多く診られるのは、逆に肘の内側(=小指側)の、筋肉の付着部の痛みです。まず痛み出した時に来られる方は、投げると痛くなるが、バッティングでは大丈夫が普通です。レントゲンを撮っても、異常が出ない段階です。

スポーツに復帰する時は、少しずつ使うことを勧める

安静にして痛みが取れてから、また普通に野球を行うと、また痛みが出る の繰り返しになる可能性があります。
楽になった時点で、少しずつ軽く投げて慣らしてゆく方法を薦めます。まずは軽くキャッチボールから、痛みが出なければ、週上がりで、3割の力で、5割の力で、7割の力で、9割がたの力で、そして全力で投げてみる などです。遠投も全力になってからがよいと考えます。
肘の屈伸で痛みが出る、バッティングでも痛い方は、より安静の期間を長くして、少しずつ使ってみることは共通です。

超音波治療が効果がある。

すべての人に効果があるわけではありませんが、以上述べてきた場合すべてに、当院では、加えて超音波治療を行っています、悪い部分に直接当てれば、炎症を抑えて、悪くなっている組織を修復します。

疼痛部位や、関節の中に副腎皮質ホルモンを注射するには、透視で見たほうが確実

改善が悪い時、炎症が強い時は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の注射を行います。
筋肉の付いている部分と、関節の中に薬が入るように打ちます。レントゲン透視で見ながら行うことで、簡単に、より確実に関節に入れることが出来ます。

テーピングも効果はある。 エルボーバンドは長い間つけていられない。

指、手首まで安定するように指先から肘に引っ張り上げるように、固定します。外側が痛いときは、外側の筋肉をブロックする、内側が痛いときは、内側の筋肉をブロックするように、横方向に引っ張って止めます。筋肉をブロックするとこで、肘に負担をかかりにくくします。主に、使う時にお薦めします。肘のすぐ下の筋肉を直接締めてブロックするバンドは、着脱は簡単ですが、長くつけておくと、腕の先がむくんだり、痺れてきてしまいます。使う時だけするものです。

肘の滑液包炎(かつえきほうえん)の話

肘頭(肘の裏側)にあって、皮膚と、肘頭の骨との間の動きを潤滑にするのが、この部位の滑液包(かつえきほう)です。ここに炎症が起こると、水が溜まって膨らんできます。
さらに放置して悪化させると、毛穴から(皮膚から)ばい菌が入って化膿(感染)してきます。最初は痛みもなく、悪いものではないので、様子を見てもよいのですが、化膿することもあり、気になる方は治療を薦めます。
治療は、まず、肘の曲げ伸ばしを制限して徹底的に安静にします。弾性包帯でしっかり固定し続けます。(風呂に入るときなど、つけはずしは自由です。)これだけで腫れが引いてくることもあります。
腫れが引かないときは、注射器で溜まっている水を抜いて、同じようにしっかり包帯固定です。固定をしないで使っているとまた水が溜まってくることが多く、俗に言う、水を抜くと癖になる 状態となります。ただし、関節とは交通していません。関節の外ですから、圧迫していると組織がくっつくのです。通常、固定をきっちりやっていただければ、2〜4回ぐらい抜けば、水がたまらなくなります。ただし、水がたまらなくなったら、固定をはずしてどんどん使ってよいではありません。もう固定はよいと思って使うとまた水が溜まってくることがあります。水が溜まらなくなってから、さらに2〜4週固定し続ける必要があります。完全に、滑液包の炎症が治まってから使うことを薦めています。
炎症が強く、感染(化膿)している時は、まず固定だけで安静にします。抜くという行為で感染が悪化する可能性があるからです。同時に、抗生物質を患部に塗ったり、内服したり、点滴したりして、治療します。感染が治まってから、前述した水を抜く治療を行います。
この滑液包の炎症は、他に膝頭(膝蓋骨の前)、足関節の外くるぶしによく診られます。全く同じように治療すると、水がたまらなくなります。しかし、この方法ですべて治るわけではありません。治らない時は、炎症が長い間続いていて、滑液包の袋が分厚くなっていて、くっつかない状態になっていることが考えられます。さらに、足のくるぶしなどは、足関節と交通していることがあると、抜いても、足関節のほうからまた水が溜まってくる(変形性足関節症などがあり、水が溜まりやすい状態になっている)ことがあります。

肘内障(ちゅうないしょう)の話

幼児に起こる状態で、橈骨頭(とうこつとう)にかかる、輪状靭帯がずれることが原因です。0歳から、7歳までの方を経験しています。急に腕をひぱったとき、痛がって、腕を動かさなくなり、だらんと垂らした状態になります。肩が外れた、手首を傷めたと思うことも多いのですが、実際は、肘を痛めています。脱臼していませんので、レントゲンでは異常が出ません。
橈骨頭を指で押さえながら、肘を曲げた位置で、前腕を外側に回して整復します。触れている指にコクンと整復音を感じれば元に戻ります。整復自体が痛いと、しばらく痛がっていますが、5〜10分ぐらいして元のように万歳して使うようになります。後は固定する必要もなく、シップを貼るなどの処置もいりません。
放置しても、痛がっていて使わなくなっていた児が、自然に戻って、また使うようになることもあります。服を着替えさせたら自然に戻って、また使うようになることもあります。
ただ、これらの通りでないこともあります。
まず、引っ張った時に起こるとは限りません。ひねった時にも同じ状態を起こすことがあります。大した怪我でもないのに、同じように腕をだらんと垂らして使わなくなるのが特徴です。どこまで傷めているのかはっきりしませんので、レントゲンで異常が出ない時は、整復具合や、その時の痛がり方に合わせて、シップ、弾性包帯固定などを行っています。
引っ掛かりが強いと、整復できないこともあります。受傷の次の日来院するなど、時間がたったときも、整復できないことがあります。このような時は、そのままシップ、弾性包帯を巻いて、安静にさせて様子を診ます。3,4日で痛みが取れて、自然に使うようになります。

これは、関節や、靭帯が柔らかいお子さんに見られる現象です。同じ方が何度も来院することもあり、注意が必要です。(ならないお子さんはなりません。)関節や靭帯が、柔らかい時期のみ起こります。通常、5,6歳までです。今までの私の経験では、7歳で起こした方が、再年長です。


上肢の関節は動きが悪くなると、動かすのが大変だ。

肩の項でも述べましたが、肘も痛みや外傷などで、動きが一度悪くなると、動かす治療に時間がかかって大変です。これは、指などの関節を含め、上肢の関節すべてに言えることです。上肢は、股関節、膝、足と違って体重などの強い負荷をかける必要は少なくないのですが、動かないと、日常生活の動作が不便になります。下肢の関節は、動きが悪くても歩くことが出来ますが、上肢の関節は動かないと出来ない動作が多くなり、非常に不便ということです。

動きが悪くなることを避けるのが、治療の目標のひとつです。
骨折や、靭帯損傷などで、(手術後を含めて)ギプスで固定する時は、固定しっぱなしの時期を可能な限り少なくしています。ある程度の最初の痛みが取れたら、治りに影響のない程度の範囲で、動かすことをはじめます。毎回診察で、私自身が動かします。はずして風呂に入れる、シップを取り替えられる状態でしたら、はずした時にこの様に動かしてくださいと、説明しています。つまり、最初の4週前後のギプス固定期間中にある程度動くようにしておきます。
次の4〜6週がまた重要です。この期間にしっかり動かす練習をしないと、組織がくっついてしまい、フルに動く様になかなかなりません。骨折部や靭帯損傷部は、かなり回復していますので、毎回診察である程度力を加えて、動かします。本人や家族にも診察で行っている程度には動かすように説明しています。

→ギプスをはずさずに4週前後以上固定しっぱなしにすると、最初の動かす運動が出来ていませんので、組織がくっついてしまい、最初から動かす治療が大変になります。
さらに固定後の1〜2ヶ月の動かす治療を怠ると、動きが悪くなって、これまたフルに動かすまでに何ヶ月もかかってしまいます。
以上のように、上肢では、動かすリハビリが治療の半分以上を占めると考えられ、非常に重要になります。

神経損傷があると動かすことが出来ない。

神経損傷があると、その回復には固定安静が重要なります。
私の若い頃の話ですが、手の外科専門の先生が手術で神経断裂を縫合されて、その患者さんがたまたま私の外来に来ました。当然、消毒、包帯交換に来たと判断して、ギプスシーネをはずして手術の傷を消毒して、固定を元にもどしました。後で、その手の専門の先生にひどく怒られました。はずした時動いて縫ったところが切れたらどうするんだ!! これは少し極端な話ですが、それだけ、神経損傷のときには、慎重に局部の安静が大切だということです。

動きが悪くなっている時の牽引療法と、関節運動学的アプローチによる運動治療

動かす時に少しでも早く動くように当院で行っています。動く範囲で動かすだけでは動きが改善しませんが、無理に痛いのを我慢して大きく動かすと、逆に動きが悪くなってしまうので、少し痛いところまで動かすことが肝要です。

膝から下をベットサイドに垂らします。ちょうど、大腰筋ストレッチのポジションです。この姿勢で、第1肋椎関節を押さえながら、必要な関節を腕を挙上しながら引っ張り、またもとの位置にもどします。肩関節のときは、肩関節自体を押さえて行うこともあります。この運動は、ごく最近の秋頃から行っていますが、牽引する側の半身の強力なストレッチになるようで、腰痛のある方では、腰や背中が引っ張られる感覚の方もいます。関節運動学的アプローチ(AKA)や、マニュピュレーションの考えで、関節の圧力を変化させるトラクション(牽引)の運動になると考えます。この運動を行った後、関節をさらに動かす運動を行うと、比較的にスムースに動かすことが出来ます。
この方法は、肩、肘、手首、指どの関節でも同じ方法で行っています。AKA単独では、逆効果のような印象であった、腱鞘炎、ばね指の時にも有効な印象です。
痛みに敏感になっていて、痛みが上肢全体に広がっている方にも有効です。この方法が痛くて行えない方は、痛みに敏感になりすぎていて、刺激のある治療方法が要注意の状態(治療の刺激で痛みが悪化する可能性がある状態)にすでに進行している方になります。つまり、診断にもなるということです。
| 上半身の痛み | 14:54 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
148、肩関節の痛み2

今回は病気の話というより本音の話です。ただし、専門的な内容が入りますので、あしからず。

鎖骨骨折の治療はこれが一番だ!!というものがない、
鎖骨骨折の治療方針は整形外科の医師の意見が分かれるところ。

この骨折は、待てば、必ず骨癒合する。  と考えています。
ギプスなどのある程度しっかりした固定も必要なく、鎖骨バンドという肩をそらす方向に固定するバンドで安静にするだけで骨が付いてきます。ただ、どのくらいの日数で付くかが問題です。幼少時のお子さんはまず問題ありません。2〜3週間で新しい骨(仮骨=かこつ)が見えてきます。=骨がついてきたという証拠です。

鎖骨骨折はなかなか骨癒合しない時がある。

青少年期以降は違ってきます。順調に行けば、4〜6週で新しい骨が見えてきますが、中には、10代の女性でも、新しい骨が見えてきて骨がついてきたと判断できるまで、10ヶ月かかった例も経験しました。あと、中年以降の男性は骨が付きにくくなります。まず、癒合するまで。4ヶ月〜半年以上かかります。中には1年以上かかってしまう例もあります。ギプス固定したからといって、早く骨が付くわけではありません。
→少しぐらい動いていても、骨は付くということです。
→骨が付くのだから、手術しないで待てばよいわけです。
→時間がかかっても骨が付くのであるのだから手術する必要はない。患者さんも、手術を受けないで済むならそれに越したことはありません。
ただ、骨が皮膚を飛び出そうとする方向に、尖っていたりする時や、皮膚を突き破りそうな時は、手術をしてもどした方がよいです。もちろん、皮膚に穴が開いて骨が飛び出している時も手術です。皮膚から骨が飛び出てしまうと、そこからばい菌が入ってしまって、感染することがあります。骨までばい菌がつくと、骨髄炎といって、治るのに非常に時間がかかる病気になってしまうからです。

骨折すると、通常、鎖骨が短縮して付きます。

若い女性などは左右の肩の形位置が変わってしまうので、以前は、正確な整復がよいという意見もありました。今は分かりません。
投げる動作が必要な方も、肩の位置が変わってしまうと元のように投げれなくなる可能性があるため、正確な整復が必要と考えます。

正確にもとの形にもどすには、手術が必要です。
外から整復するのは、ほぼ不可能です。

医者になって5年目ごろの外傷病院に勤務していた若い頃、皆でよってたかって?整復してみました。図のように、背中の真ん中に台を置いて、局部に確か麻酔を行って、痛みを少しでも取り、(完全に痛みは取れません。)肩をぐっと引き下げて、ギブス固定をしました。(座ったままだといくら押さえても、背中が動いてしまい整復不良となります。)押えることに人と力がいる上、寝たままギプスをしますので、さらに、ギプスを巻く人、身体を持ち上げる人(台が下にありますので身体を持ち上げながら巻く必要あり)と、数人必要です。この力ずくの方法で、何とかもとの状態に近いところまで整復できたはずです。とても一人では行えませんし、労力もいるため、通常行えないと感じたものです。
話はそれますが、脊椎の圧迫骨折を元にもどすのも、このくらいの整復作業がいります。体の上下に台を置いて、背中を出来るだけそらしてギプス固定をします。今度は局部麻酔では痛みは取れませんので、患者さんも苦痛ですし、やはり身体を持ち上げる人、ギプスを巻く人と、人数が必要な上、痛みでうまくそることが出来ないと、整復不充分となります。(最近は、日数がたつと、さらにつぶれてくる脊椎圧迫骨折は、人工骨を中に詰めて固定する手術する先生もいます。)

手術がうまくいけば、早く骨癒合する。正確にもとの形に戻る。


順調に行けば、3ヶ月もすれば骨はつきますし、元の形に戻ります。

手術方法は大きく分けて二つです。

1、プレートを入れてスクリューで固定する

強固な固定は出来ますが、骨の周りの組織をほぼはがさなければなりません。(骨の周りの組織ははがさない方が早く骨がつきます。)
ぴったり合ったときは、早く骨がつくはずです。
圧迫固定が甘かったり、骨折部がぴったり合わずにすきまができていると骨がつかなくなる可能性が高くなります。
プレートとスクリューは骨がついたら抜かなければなりません(もう一回手術が必要)ので、鎖骨は骨が細いので、抜いた後、再骨折しないように、しばらく要注意です。
組織を剥がす範囲が広いので、全身麻酔などのしっかりした麻酔が必要と考えます。

2、髄内定(太いキュルシュナー鋼線)で固定する

私はこの方法で手術をしていました。小さな皮膚切開で出来るだけ骨の回りの組織をはがさないように行えます。第3骨片があるときは、まとめて大きな湾曲針で、体の中で解ける糸を裏側に通して縛ります。麻酔科の医師がいないときは、局部麻酔でも何とか手術可能です。頚部の硬膜外に硬膜外麻酔チューブを入れておけば、そこから追加麻酔できますので、完璧です。私はこの麻酔方法で一人で手術していました。
手術後にピンが抜けてくることがあるのが問題です。ピンの固定方法は、体の中心方向に引き抜いてから、外側に向けて入れなおして固定します。刺した位置が悪いと固定が甘くなり、ピンが抜けて皮膚から飛び出してきます。しっかり固定するためには一回で正確にピンを鎖骨の中に通さなければなりません。違った方向にピンを刺してしまうと、2回目以降、ピンの通り道が出来てしまって、いくら刺しなおしてもその方向にピンが通ってしまい、よい方向にピンがさせなくなることがあります。
骨がついたら、髄内定を抜く必要がありますが、局部麻酔ですぐ抜けます。簡単な上、(外来手術で行えます。)骨折部の周りの組織をもう一度剥がす必要がないので、まず再骨折することはありえません。

術後感染も問題です。固定力が弱いと中で骨が動いていて、感染の可能性も高くなります。
術後の充分な抗生剤投与が必要です。

以上のことがあり、
手術でうまく治療がいかなかった経験の多い?ある?先生は手術を薦めません。
手術に自信があって、ほぼうまく治療がゆく先生は、手術を薦めます。(正確な形にもどる上、骨がなかなかつかないということがない) 

という結論です。 

肩鎖関節脱臼の手術方法もこれが一番だ!!というものがない

上に外れた鎖骨の端を、皮膚の上から押さえ込んでも元に戻りません。
大きく上に外れた時には、手術をしますが、方法がいろいろあり、確立していないはずです。行ってみた方法の問題点を述べます。

1、肩鎖関節を鋼線で止める、あるいは鎖骨と肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)をスクリューで止める方法

脱臼が落ち着くまで、固定し続けなければなりません。術後3ヶ月ぐらいで抜くとまた脱臼してくることがあります。
90度以上肩を上げると鎖骨は回転しますので、あまり動かさないようにして、脱臼部が落ち着くのを待つと、肩の動きが悪くなり、もとの動きにもどるのにかなり日数がかかります。
肩を動かす運動を頑張ると、あるいは、固定がうまくいっていないと、動かしているうちに、止めてある鋼線や、スクリューが外れることがあり、また脱臼してしまいます。

2、人工靭帯でしばる手術方法(通常、肩鎖関節を鋼線で固定する方法と併用します。)

烏口突起を回して、鎖骨に穴を開けて、人工靭帯を回す方法です。この方法単独では、鎖骨の動きが残るため、肩を動かすには上の方法よりよい(肩鎖関節を止めても、早めに鋼線が抜けますので、早めに運動開始できます。)のですが、靭帯の縛り具合が弱いと緩んで、脱臼してきますし、強すぎると、鎖骨が動かなくなり、肩も動かすのが大変になります。
人工靭帯を狭い範囲で回す手術手技が非常に難しく、ここで時間をかなり取ってしまい、大変です。(膝用に開発されたもので、膝などの大きく手術を行う部分はよいのですが、足などを含めて、小さい部分に回そうとすると穴を通して引き抜くのが非常に困難となります。)

そこで、出来るだけ保存的に治療する

脱臼したままでも、落ち着けば痛みが取れますので、手術を行わない方法です。痛みが取れる2〜3週間、肩があまり動かないようにゆるく固定します。場合によっては三角巾で吊るすだけです。高齢な方はこれで充分ですし、投球動作や、肩を上に挙げる動作があまりない方もこれで充分です。

肩関節脱臼をもどすにはコツが要る

教科書通りに行ってもはまらない  のが、肩関節の脱臼です。脱臼の中では多いはずですが、そうしばしば遭遇するものでもなく、なかなか経験が積み重ねられません。私も不得手で困っています。

こつがあるようで、麻酔無しでも出来る先生や柔道整復師がいる一方で、局部に麻酔しても戻らない ことも多いです。筋力の弱い高齢者でもです。
静脈麻酔で眠ってもらうと簡単に戻ります。この麻酔を行うと、呼吸が止まることがあり、(特に高齢者)呼吸などの麻酔管理が出来るところではないと、お薦めできません。

習慣性肩関節脱臼(=反復性肩関節脱臼)になりやすいのなぜか?

一度外れた肩関節が、何度も外れるようになることです。大横綱の千代の富士が現役時代に悩まされ続けた状態です。彼は、肩が外れないように=肩を上に挙げてひねらないようにうに脇を占めて、前みつ(まわしの前の部分)を取る相撲で一気に横綱になりました。もちろん持ち前のけたはずれのダッシュ力(中学の北海道の三段飛びの記録保持者)があったからこそなしえました。本来は、上手を取って相手を振り回す上手投げが得意です。(=ウルフスペシャル)この動作は肩をはずします。→横綱になってからも肩をはずしていました。千代の富士の肩は外れやすい形だったと記憶しています。外れやすい肩の形はもちろんありますが、関節の袋が大きくなってしまうと、はずれやすくなります。

一回目の脱臼時の後が重要です。
肩は前方に外れることがほとんどです。関節の袋や、そのすぐ外側を支える靭帯が破れて、上腕骨の肩の部分が前に飛び出します。その破れた部分が修復するまでは安静が必要です。
修復が充分でないうちに動かしだすと、大きくなった状態で関節の袋が落ち着いてしまいます。

実際、1週間以内で痛みがなくなってしまうため、そのまま使ってしまうことが多い。

最低2週間固定が必要と説明しても、痛みがないので治った気がして使ってしまいます。使わないでいて、逆に肩の動きが悪くなるぐらいならOKです。動きが悪いということは、関節の袋がくっついて小さくなっているということです。そのまま動くように訓練します。後に述べる骨折や、以前述べた五十肩に比べるとそれほど動きは悪くなりませんので、長期にリハビリはかかりません。
この安静は最低限必要です。それ以外の要因で肩が習慣的に脱臼することがありますので、あしからず。

一般整形外科医は習慣性肩関節脱臼の手術も行いたがらない?

一度大きくなった関節の袋の状態ですと、手術して小さくする以外は、脱臼を防ぐ方法はありません。以前から述べている(前回も図が出ています。)肩の外旋方向に筋トレを行って、腱板の筋力を鍛える(外の盛り上がる三角筋を鍛えてもだめです。)とある程度防げるかもしれませんが。・・・・
力の強い男の方や、関節が外れやすい形の肩は、骨を前方にくっつけて、補強する方法もあります。
これらの手術方法は、命にかかわるような、お腹を開けるものではないので、誰でも出来そうと私なら思いますが、専門的に行っていない先生にとっては、専門医に送ることが当たり前?のようです。術後のリハビリ管理や手術したにもかかわらず脱臼が再発することまで責任が持てないようです。

上腕二頭筋(じょわんにとうきん)の腱が切れても、手術してつなげない?

肩の前の部分に、二の腕の力こぶを作る上腕二頭筋の腱が通っていて、その部分で外から傷つくことなく皮膚の下で切れます。ある程度の高齢の方が多く、力こぶが縮んだ形になります。筋肉が肘の方(下の方)に縮みますので腱も下に引っ張られて、手術的に引き上げてつなげる以外元に戻りません。
この筋肉は肘を曲げる作用があります。肘が曲がらなくなるのでは と考えますが、そうではありません。痛みがなくなれば、(通常2,3週で)手術しなくても同じ肘を曲げる作用のある上腕筋があるため、肘は曲がります。ただし、力こぶは、縮んだままです。
手術して腱をつなげますと、つながるまで6〜8週から無理に動かしたり使えませんので、さらにそれから動かすことに日数がかかり、高齢の方にとっては苦痛になる方が多いと考えます。


上腕骨の近位部の骨折を起こした時、肩を動かさないでいると、動かす治療に期間がかかる

高齢で骨が弱い(骨粗しょう症)の方に多い骨折です。よほど大きくずれていなければ(大きく転位していなければ)、そのまま骨がつくのを待ちます。ギプス固定などしっかりした固定は必要なく、腕をつるして動かないようにしておけば充分です。
骨がつくまで動かさないでいると、肩が動かなくなってしまうため、骨が付いてから動かす運動を開始したのでは、肩が動くなるようになるまで何ヶ月も時間がかかります。あるいは、完全に上まで挙がらなくなることもあります。そこで、骨がつく前から、痛みがある程度よくなった時点で、運動を開始します。力を入れずに、身体を前屈して腕を垂らしてゆきます。これで、肩は動いていることになります。→少しぐらい動いていても骨折は付く ということです。
4〜6週ぐらいで新しい骨(仮骨かこつ)が見えて骨がつきだしますが、その後の1ヶ月ぐらいがさらに重要です。この間に動かす運動がうまくいかないと、やはり肩がくっついてしまいます。
骨がつく前までの運動では90度前後までの運動ですので、そこからさらに頑張らないと、上までいきません。固い床か畳の上で、肩甲骨を固定して、腕を上に挙げるように、骨折していない手を使って持ち上げます。これを根気よく行わないと、挙がりません。うまくいったときは、3ヶ月目には、ほぼ元の位置まで上がるようになります。くっついてしまって動きが悪くなると、さらに3ヶ月ぐらい掛けて、少しずつ上に挙げるように運動してゆくことになります。
このことは、手術して、鋼線などで固定したときでも同じですので、元のように動くか、使えるかは、手術後の運動が非常に大事なのです。
| 上半身の痛み | 12:17 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
147肩関節の痛み1

五十肩、四十肩

 肩の痛みといえば、この病名です。
 四十、五十歳も過ぎれば、年齢とともに、油切れ?となって、肩に自然に痛みが出てきます。この原因もなく、自然に痛みが出てくる状態を指します。治療をしても、すぐによくなるということはなく、なかなか治りません。
自然経過と治療の反応を4つに分けてみました。

1、まず、原因が思い当たらず、自然に痛みが出てきます。炎症が起こって、痛みが出ます。夜寝ている時が特に痛みが強い(夜間痛) のが特徴です。
 この時期は、とにかく炎症を抑えてひどくしないことが重要です。消炎鎮痛剤のシップ、飲み薬で抑えます。改善しない時は、炎症を強く抑える副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤の注射が有効です。2に進まなければ治りが早い時期です。

2、放って置くと、炎症の後、組織がくっついてしまって、動きが悪くなります。これを癒着(ゆちゃく)といいます。炎症があって痛い上、(夜間痛もあります。)動きも悪くなります。上の物が取れなくなる。後ろに手が回らなくなる、などの症状が加わります。
 この状態で来院される方が多い印象です。1と同じに、まず、炎症を抑える治療をします。動きが悪くならないように関節運動学的アプローチ手技に基づいて動かす治療を行います。少しでも、癒着(ゆちゃく)して動かなくなることを防ぎます。炎症が治まった時に、動きが悪くなっていないことが、治療目標です。そのためには、少し痛みが出るところまで動かします。かといって、痛みをこらえて無理に動かしすぎても、逆に痛みが強くなって、動かなくなることがあります。治療は日常のほんの一部ですから、自分でも動かす必要があります。それでも、炎症が強いと、動かすと痛いため、動かさない→動かなくなる となります。=動かす程度や方法は重要ですが、自然経過で動かなくなってゆく時期は、動かす治療をしていても、動かなくなってゆくようです。そのような場合は、ヒアルロン酸、副腎皮質ホルモン(ステロイド)、麻酔薬の(ご希望で)注射をします。ヒアルロン酸は、変形性関節症のとき軟骨を修復する目的以外にも、組織自体の修復を促す作用があります。ステロイドは、炎症を強く抑えます。麻酔薬は痛みを抑えます。つまり、炎症と痛みが治まっている間に、組織を修復するようにするのです。当院では、腱板の表面側(外側)と、内側それぞれ効果の高い部分に薬が入るようにレントゲン透視を見ながら注射しています。一度注射してどんどん動くようになれば、それで済みますが、自然経過で、炎症が続き、くっついてゆく(癒着していゆく)時期では、しばらくすると、また痛みが強くなって動きが悪くなってしまいます。その時は、(ご希望で)何回か注射を行います。注射することで、炎症が治まり、動きがよくなってくれば、早く治ります。したがって、一回の注射ですぐ治るわけではありません。

3、さらに放って置くと、炎症はかなり治まりますが、動きだけ悪くなったままの時期がきます。動かさなければ、痛みが出ませんが、動きが悪いため、上の物が取れない、後ろに手が回らない状態だけが残ります。動かない方向に、無理に動かそうとすると、痛みは出ます。
動きが悪くなってしまったら、
 どれだけ、癒着が強いか によります。炎症が強く痛みが強いために動きが悪くなっている2の時期までなら、注射の効果があります。炎症が治まって、痛みが軽くなれば、動くようになります。ところが、3の時期になって、癒着が強くて動きが悪くなっていると、注射しても動きがなかなかよくなりません。関節は、動くために袋のようになっていてスペースがありますが、癒着するとその袋もくっついて小さくなっています。大量に麻酔剤を入れて、いっぺんに癒着をはがして動きをよくしようとしても、すでに関節の袋が小さくて麻酔剤が入りにくいのです。その上、大きく動かしていっぺんに癒着をはがしても、その後も、頑張って動かし続けないと、またくっついてしまうので、効果が上がりません。(麻酔が切れると痛くなって動かし続けることが出来ません)=薬を入れても関節の袋が大きくならないのです。関節の袋(関節包かんせつほう)を徐々に大きくするような物質ができれば、注入することで、関節包が徐々に広がって動くようになると考えますが・・・・
 ですから、癒着して動きが悪くなってしまってからでは、動くようになるまで時間をかけなければなりません。最初に、動かなくなるのを防ぐことが大事なのです。

4、さらに放って置くと、全く炎症がなくなり、少し無理に動かしても痛みが出なくなります。そこで動かしていると、どんどん肩が動くようになって、気が付いたら治っている ことになります。
 この時期になると、動かす治療を行っていると、どんどん柔らかくなります。3の時期を少しでも早くこの4の状態に持ってゆくために、前述した注射は動きの改善がみられなくても効果があるようです。
ただ、元のように完全に上まで腕が挙がるところまではなかなか改善しません。元に戻るまで治療を続けると、1年以上 かかってしまうのです。
 
以上、軽い重いの差はありますが、重い状態ですと、治るまで年単位です。1年、2年かかります。すぐに治らないのです。

 寿命が延びた現代では、六十、七十になっても起こります。ただ、六十、七十になると、腱板が付いている部分や、肩甲骨の肩峰(けんぽう)の内側が傷んできたり、上腕の肩の部分と、肩甲骨の一番接触面積の大きい関節部分も、軟骨が磨り減ってきて、骨が尖ってくることもあります。つまり、変形性関節症が関与してくる場合があります。これらの変化はレントゲンでわかります。さらに、腱板自体も、かなり薄くなってきて、力が弱くなっている方が多くなります。こちらは、エコー(超音波)検査でわかります。その結果として、上腕の肩の部分と、肩甲骨の肩峰(けんぽう)の間の隙間がさらに狭くなります。これらの変形性肩関節症の状態が強い方は、強い癒着まで起こして動かなくなる方は少ないようです。ただ、動かすといつまでも、炎症が残っていて、ジョリジョリという音が手で触れてわかったり、肩を外に回す力が極端に弱くなることもあります。
 腱板(けんばん)自体が自然に傷んできて痛みが出ているときもあります。これは、腱板損傷の一種ですが、経過がほとんど五十肩とかわりませんので、初めは区別つかないことが多いのです。(五十肩は原因がわからない時の病名です。)腕を自然に挙げると、肩は外転(がいてん)する形になりますので、この形で痛みが出たり、この形でさらに手の部分を上に挙げたりしたに下げたり、肩にひねりが加わる(肩の内旋(ないせん)外旋(がいせん))と痛みがでたりします。痛みも上腕の中央近くに感じて、俗に言う二の腕が痛いと感じることがよくあります。こちらも、炎症が強くなければ、癒着して動きが非常に悪くなることはあまりないようです。


急に激痛で肩が動かなくなった時

 レントゲンで、腱板の部分に石灰沈着が認められることが多いです。この石灰は、カルシウムが含まれています。なぜ、この石灰沈着が起こるかまだわかっていないはずです。カルシウムはほとんど骨に蓄えられているので、カルシウムが骨から出やすい状態にはなっていると考えますが、検査しても、骨が壊れやすい、カルシウムが出やすい というデータが出るとは限りません。
 また、石灰沈着があっても炎症が起こらなければ、何も症状が出ません。少し炎症が起こると、五十肩と同じような症状が出ますし、急激に炎症を起こすと、激痛で、急に肩が動かなくなります。なぜ、このように急激に炎症を起こすかもまだわかっていないと思います。
 治療は、炎症を抑える治療を行います。石灰が溜まっている部分に、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を注射すると劇的に痛みが改善します。当院では、正確に石灰に針を当てるため、レントゲン透視を見ながら行っています。注射が怖くて受けられない方は、器械によるリハビリのレーザー(スパーライザー)治療の効果が高いです。日ごとにどんどん痛みが取れて改善します。注射のあと痛みが残った時も、このレーザー治療を加えると痛みがどんどん改善します。シップや、消炎鎮痛剤の内服ももちろん加えます。
 特徴は、五十肩と違って、急に激痛が来る一方で、改善も速やかで、長引くことはありません。五十肩だけでは急な激痛で動かなくなることはない、激痛で急に動かなくなった時は、石灰が見えなくてもこちらに近い病気の状態(病態=びょうたい) と思ってください。炎症をきっちり抑えられれば、比較的速やかに治ります。

 この石灰が残ると再発が心配されますが、再発する方はあまり多くない印象です。石灰を消すには、シメチジン(=タガメット)と呼ばれる、かなり以前に開発された胃潰瘍の薬(市販薬として売っているガスターより前の薬)です。なぜ、この薬が石灰を消すか、こちらもまだわかっていないと思います。
 この石灰沈着は肩だけではなく他の関節にも起こします。股関節、肘関節、膝関節、手、足など、どれも激痛がくると動かなくなります。治療も経過も全く同じです。反対側の肩にも起こりえます。したがって、他の場所が痛くなることがありますので、上述した薬で石灰を消す治療を行ってみたことがあります。消える確率は100%ではありません。レントゲンで白くはっきりと固まっているように写る石灰沈着は消えないようです。膝の半月板(膝関節の間にある軟骨のクッション)に石灰が溜まっている例には効果がない印象です。消える期間も、段々薄くなってほぼ消えるには、3週間から2ヶ月ぐらいと、時間がかかり、薬を飲み続ける必要があります。


肩が自分の力で挙がらなくなった時

 腱板もひどい損傷となると、穴が開いて、断裂となります。怪我をした時、骨折がないのに肩が挙がらなくなったときは、この疑いがあります。高齢では、肩峰(けんぽう)や腱板の付いている骨の部分の変形(変形性関節症)や、その隙間が狭いと自然に起こります。しばらくの間、肩が挙がらない状態が続く時は、エコー(超音波診断)検査で腱板の状態を確認しています。
 損傷が軽かったり、小さな穴ぐらいでは、炎症が治まり、組織の修復を待てば、かなり改善すると考えています。(小さな穴や損傷は、元の組織ではなく繊維性の組織で埋まります。)損傷が軽いと、肩を外転する方向に腕を伸ばすと痛みが出ますが、次第になくなりますし、最初は腕が挙がらなくても、2〜3週間で挙がる様になります。
 治療は、五十肩と同じで、超音波治療、SSP治療などの器械によるリハビリテーションと、激痛が治まったら、動かしながら改善する関節運動学的アプローチ手技に基づく運動治療を併用しています。動かさずにじっとしているより、動かしながら組織を修復する方法がよいと考えます。ただ、痛みが出る方向をしつこく確認したり、その方向ばかり動かすと、そのたびに腱板の悪い部分が肩峰にこすれますので、それ以外の痛みが出ない方向に動かすようにします。まっすぐ挙げて、降ろす方向(降ろす時に痛みが出ても、そこで腱板の悪い部分が引っかかっています。)は痛みが出ないことが多いので、この方向と、肩を外旋する方向は筋力の確認と筋力トレーニングになるので、必ず行っています。改善が悪い時は、前述した注射治療を薦めています。
 腱板が一部損傷して痛みの原因になっているときは、エコーを見ながら、その損傷部分に注射すると、レントゲン透視下で行うより、さらに効果が上がります。腱板の損傷が明らかに原因となっているときは、エコーで検査をまず行って、損傷部位がはっきりわかる(この部分がやられているとなかなかわかりにくいです。)ようであれば、そこに注射をします。
 大きな穴が開くと、2,3ヶ月しても、肩が挙がってきません。この時は、手術を前提に、専門医に紹介しています。ただ、肩を専門に診る先生が少ないのが、悩みの種です。専門以外の先生は、肩の手術をやらないことも多いですし、関節鏡を見ながらの手術は行っていないと思います。
| 上半身の痛み | 16:26 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
146、肩甲骨と肩関節

 図は後ろから見たものです。はじめてこられる患者さんには、どの部分で痛みが出ているか簡単な人体図に○をつけてもらっているのですが、首の横に○をつけている方、肩関節に○をつけている方は、肩が痛いと言って来られます。
 肩関節とは、腕の付け根の動く関節です。よく“肩”というと、首の横の凝る部分(肩こり部分)を言う方がいますが、医学的には、肩関節が”肩“です。
 首の下の横の部分、肩甲骨やその周囲が痛いとう訴える方は、頚椎、その下の胸椎、第一肋椎関節、肩関節と、どの部分も痛みの原因になります。腕に行く神経も走っていますので、腕が痛い時、痺れが出ている時もどの部位も痛みの原因になります。
 頚椎から肩甲骨や、肩甲骨の間へ神経が行っていますので、頚椎が原因の事もあります。顔を真上に向けて、首を真後ろに反らしたり、顔が斜め上方を向く方向に反らすと痛みが出ます。頚椎の下の胸椎が原因で、肩甲骨の方へ痛みが来ている方もいます。前から述べている、みぞおち周囲の上腹部が緊張して背中に痛みが来る方はこのタイプです。背骨を左右で支える脊柱起立筋が原因の方もいます。顔が下を向くように首を動かすと筋肉引っ張られて痛みが出ますが、肩関節、肩甲骨を動かしても痛みが出ません。
 第1肋椎関節(だいいちろくついかんせつ)は関節運動学的アプローチに基づく診察で、痛みの原因になっているか判断できます。
 上腕骨と肩甲骨の間の肩関節の動きが悪くなると、肩甲骨を無理に動かして、腕を使うことになります。→肩関節の動きが悪くなると、腕を動かした時は、肩甲骨が肋骨の表面をすべるように大きく動きます。その結果、肩甲骨に付いている内側や下側の筋肉に負担がかかり、痛みが出てきます。肩甲骨の裏側と肋骨の間に炎症が起きて痛みが出る方もいます。
 頚椎からの痛みもあり、肩関節にも炎症がある方もいます。上に述べた診察所見が必ずしもあるとは限りません。どちらが痛みの主原因かわからないこともありますし、肩関節が痛みの原因と診断しても、次の診察のときは、首からの痛みが主原因だったという方もいます。そのような時は、原因の可能性ある箇所を超音波やレーザー(スパーライザー)などで、すべて照射して治療しています。
 また、二の腕(上腕)に○をつけている方もほとんどが肩関節が原因の痛みです。三角筋が上腕骨についている部分の炎症も考えられますが、肩関節の動きが悪くなると痛みが二の腕に走る場合が多いようです。また、後述する腱板が傷んでいるときも、痛みが二の腕に走ることが多くなります。

 実は、肩甲骨の動きが悪くなると、肩関節の痛みが出てくる と考えています。左右の肩甲骨は、近づいたり、遠ざかったり、肋骨をすべるように大きく動きます。肩甲骨から上腕骨に筋肉が付いていて、肩を外側に回したりします。この肩甲骨の周囲の筋肉の力が弱くなったり、硬くなったりすると、肩甲骨の動きが悪くなり、左右の肩甲骨が中央に近寄りにくくなると、猫背になります。肩を外側に回しにくくなります。これを防ぐのが、肩の周りの運動です。以前から述べているものを含めて、また、図を載せてみます。
 これらの運動は、肩甲骨を大きく動かす、肩甲骨部分の筋肉を鍛える運動に他なりませんし、五十肩(肩関節の痛み)、猫背、2重あご、胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん 139首周囲の痛み7)などの肩甲骨周囲が原因の腕の痛みや痺れ(頚肩腕症候群=けいけんわんしょうこうぐん)の予防や治療になるのです。

肩の構造

 肩甲骨と上腕骨の間の関節です。球面で接触している部分以外も、肩峰(けんぽう)との間も関節の一部です。接触面が小さいため、骨以外の靭帯や、腱状の筋肉が四方から支えていますが、骨の支えがないため、衝撃で外れやすくなります。(脱臼)接触面が小さいため、いろいろな方向に大きく動くため、動きが悪くなった時には、元に動きに戻るのが大変です。(肩関節拘縮=かたかんせつこうしゅく)
 上腕骨を肩甲骨に密着させていて、腕を吊り上げている、腕を挙げるためには絶対必要な腱板(けんばん)という腱状になっている筋肉組織があり、肩峰(けんぽう)との間には、表面に潤滑にすべるように滑液胞(かつえきほう)とよばれる構造があります。上腕と、肩甲骨の肩峰(けんぽう)の間をすべるように動きますので、この間の隙間が狭い方は自然に炎症が起こりやすくなります。(五十肩)
 腱板に大きな穴が開くと、機能しなくなって、腕が挙がりません。肩表面に盛り上がる三角筋だけ鍛えても、腕は挙がりません。(腱板断裂=けんばんだんれつ)腱板が付いている骨が一緒にはがれた時は、最初は腕が挙がらなくても、骨が付けば挙がる様になります。(上腕骨大結節骨折=じょうわんこつだいけっせつこっせつ)

 レントゲンで肩甲骨と上腕骨の間の関節や、肩峰や腱板の付いている部分の骨の表面がぎざぎざになったり、骨が尖ってきたりした時は、変形性肩関節症です。
 外傷で起こりやすいのは、先ほど述べた、肩関節脱臼、腱板断裂(けんばんだんれつ)や、上腕骨大結節骨折(じょうわんこつだいけっせつこっせつ)、肩峰と鎖骨の間の関節が脱臼する、肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)、鎖骨の骨折、骨が弱くなると起こりやすくなる、上腕骨の肩に近い部分の骨折(上腕骨近位端骨折=じょうわんこつきんいたんこっせつ、上腕骨骨頭骨折=じょうわんこつこっとうこっせつ)などです。
| 上半身の痛み | 19:35 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
145、整形外科の病気でない病気(=未病(みびょう))の時の痛み

今まで述べてきた、話のまとめ(の一部)です。

 前回、スパーライザーを痛みが出ているポイントや、つぼ照射、星状神経節の照射を行う治療の話をしました。
 星状神経節の照射は、仰向けに寝て行いますので、ほかの痛みが出ているポイントや、つぼがそのまま寝て照射できる時は、ねたままですべての治療しますが、背中や腰のポイント照射のある方は、座ったり、うつ伏せで照射してから、仰向けに寝て星状神経節を照射します。つまり、二つのポジションでわけて行います。

この治療は、事故後の痛みを抑える以外にも、次のような方に行っています。
 痛みが上肢全体に広がっている、半身の同じ側の上下(首も背中も、腰も痛い)に痛みが来ている、悪いところがあまりないと言われているのに、つらい痛みがある、その痛みもかなりの期間続いている、などの特徴があり、痛みに敏感になっている状態の方にです。
 自律神経の調節が悪くなっていて、頭痛、めまい、吐き気などのの症状が出ることもありますし、精神的にも、肉体的にもストレス、疲労、緊張が重なっている状態の方がほとんどです。胃腸の調子も悪いことが多く、自覚症状もはっきりある方から、あまり気づかない方までおります。

→事故後にはこの状態になりやすいので、共通の症状が出ます。
前回のイ痢後から痛みが出る も、この状態です。


 整形外科の教科書どおりの診察では異常が出ない ことがほとんどです。レントゲンでも異常が出ません。中には、加齢的な変化(椎間板の高さが減少して狭くなる、骨棘(こつきょく)が出ている)が見られることもありますが、そこから痛みが出ていると診断できません。血液検査も異常なく、西洋医学的には病気ではない のです。
したがって、整形外科の病名は と聞かれると、頚部痛、背部痛、腰痛症と、痛いという表現が病名になったり、頚部筋筋膜炎(けいぶきん きんまくえん)、腰部筋筋膜炎(ようぶきん きんまくえん)などの、筋肉や、筋膜の炎症という病名が付くぐらいです。場合によっては、異常なし になります。

+痛みに敏感になっている状態とは、
 前述したような症状で、診察しても、痛みに見合う所見がないのが特徴ですが、明らかな変形性膝関節症や、肩関節周囲炎の方でも、その部分の痛みに敏感になっている方がいます。
 通常の診察方法や、関節運動学的アプローチに基づいて動かした時の反応で、この痛がり方は敏感になっているな と判断できるようになったのは、ここ半年ぐらいです。

漢方医学の診察で異常が出る。
 上腹部(みぞおち周囲)を診ると、緊張していて硬くなっている、押すと痛い、脈打っているのが触れる、舌を診ると、白色や黄色みがかったコケがある、などは、わかりやすい所見です。脈を触れると、沈んでいる(≒脈が弱い)が、心脈がころころ触れる、はっきり触れる、肺、脾脈だけがややはっきり触れる などの所見がでます。
 この状態は、上半身の痛みの初回で述べた、129背中の痛みと同じ状態 です。背中の痛みが上下に広がって、同じ側の首や腰が痛くなります。漢方医学的には、気虚、気逆と呼ばれる状態です。漢方は、病名にこだわりません。その方の今ある状態に応じて薬を選ぶことになります。

関節運動学的アプローチに基づく手技では所見が出る。
 頚椎、胸椎では、棘突起(きょくとっき=背中の真ん中に触れる骨)を動かすことで、脊椎の椎間関節で痛みが出ていることがわかります。また、膝下をベットサイドから垂らしたポジションで、第1肋椎関節(だいいちろくついかんせつ=第1肋骨が、胸椎1番の横突起に付く部分の関節)を抑えて、腕を引き上げると、痛がる方が多く、その部分から痛みが出ていることがわかります。また、大腰筋(だいようきん)ストレッチで、脚を引っ張ると、腰の痛みが出る方もいます。これは、骨盤の後ろに位置する仙腸関節(せんちょうかんせつ)が原因の痛みです。同じ側の首、背中、腰が痛くなる状態は、仙腸関節から、同じ側の背筋を伝わって、胸椎や頚椎下部の椎間関節で痛みが出て、さらに、第1肋椎関節で痛みが出たり、逆に、第1肋椎関節から、背筋を伝わって仙腸関節に痛みが出ている状態です。

 このように、通常の整形外科の診察では異常がなくても、漢方医学的に所見がある、言い換えると、西洋医学的には異常なし、ですが、漢方医学的には異常が出ている 状態を、未病(みびょう)といいます。西洋医学の病気になる手前の状態です。この時に、関節運動学的アプローチに基づく(オリジナル)手技で診察治療を行うと、所見が出る(痛みが出る)ことが多く、その手技を行うことで、診断にもなりますし、治療にもなります。また、その時の痛がり方の反応を診て、改善しているかどうかの判断も出来ます。

 今まで述べた、いろいろな診察方法でも、MRIなどの画像診断を追加検査しても、全く異常所見が出ないこともあります。
 この場合は、痛みや症状を脳で記憶している可能性が高く、より精神面の関与が大きいと考えています。


 治療は、病名にこだわりません。その方の症状にあわせた治療を行えばよいのです。これは病気ではありません。そんな病気はありません。異常無しです。は関係ありません。病気でないから治療をしない ではありません。ある方は、精神面の影響で、いろいろからだの痛みや症状を訴えているかもしれません。たとえば、うつ病、心身症の症状として痛みが出ている時もあります。、更年期の方も調子が悪くなると、これらの症状が出やすいのも事実です。それらも関係ありません。症状にあわせて治療を行えばよいのです。
 治療は共通です。器械によるリハビリも、関節運動学的アプローチに基づく治療手技も、これから述べる、漢方薬や、神経ブロック治療、いずれも、ある程度までの精神的障害による症状にも有効です。

 したがって、よく病名を気にする方がいますが、その必要もありません。
腰や、首の病名がそうです。椎間板ヘルニアになっているかどうかは、診察とレントゲンだけでは確定できません。ましてや、腰や首のどの部分が悪くて痛みが出ているかわからないことも多いのです。症状も、経過を診ていると変わります。そこで、その時の痛みの状態に合わせた治療法や注意事項を選べばよいのです。
 全く別の例を出せば、
 手が腫れている時は、その症状に応じて、治療をするのです。怪我をしたか、原因不明かは問いません。腫れが強く、痛みが強い時は、できるだけ強固な固定、ギプス(シーネ)固定がよいです。骨折がある無しは関係ありません。強い関節炎でも構いません。症状に応じてです。この考えで治療すれば、最初の病院の診断が捻挫で、次の病院に行ったら、骨折していると言われたとしても、治療法は何も変わりません。その最初の時の症状にあわせて固定するのです。あとからレントゲンでわかる骨折は軽いものです。症状が軽ければ、骨折していても、厚めの弾性包帯固定で構いません。まず 手術になる などの治療変更は考えられないのです。

 薬の治療は西洋薬で効果がないときは漢方薬が効くことがあります。
 胃が痛くなって、西洋薬が飲めない方、胃潰瘍や、胃炎がひどくて、痛み止めが飲めない方も、漢方薬がお薦めです。
かといって、事故の保険(特に労災)では漢方薬が認められないことが多いのです。健康保険を含めて、病名で薬を選んでいるからです。
確かに、漢方薬でも適応症といって説明書には病名が付いていますが、前述してきた状態の方には、この病気は、この漢方薬という考えでは、処方できません。具体的には、142首周囲の痛み10、気を調節する漢方薬でのべたように、気逆、気虚を改善する漢方の組み合わせを中心にお出ししております。この場合、呉茱萸湯(ゴシュユトウ)の適応症は頭痛です。別にその方に頭痛がなくても処方しています。竹茄温胆湯(チクジョウンタントウ)の適応症は、インフルエンザ、風邪、咳です。病名とは、全く関係がありません。他に、漢方的に肝(かん)の状態を改善する柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)なども効くときがあります。この薬の適応症も、風邪ですから、全く病名は関係ないのです。
(→処方薬局で、漢方薬を処方するときに、どの病気のときの飲む薬かを説明する薬剤師は、漢方を理解していない方と考えます。)
 そのため、健康保険では、これらの病名をつけさせていただいて、保険請求しています。しかし、事故の保険では風邪などの病名はつけることが出来ませんので、認められません。他にも、事故でつけられない病名の時に使う薬は使えなくなります。関節炎の時使う副腎皮質ホルモン(ステロイド)、変形性(膝)関節症の時使うヒアルロン酸、腰部脊柱管狭窄症のとき使うプロスタグランディン、後で述べる、プラセンタ製剤もそうです。

 また、ひとつの治療がすべての例に効くとは限りません。人それぞれです。効果が悪いと判断すれば、次の治療に変更します。
 冒頭、スパーライザー治療の話から始めましたが、他の器械によるリハビリでもかまいません。首から足の先まで症状が広がっている方には、水圧式マッサージベットが効果がありますし、下肢上肢全体に痛みが広がっている方には、つぼに電流を流すSSP治療器も効果があります。

 注射が受けれる方は、神経ブロック治療も有効です。
 自律神経が乱れている上半身の症状が強い時は、星状神経節ブロックが効果的です。痛みが出ているポイントや、筋肉が硬くなっているトリガーポイントにブロック注射することも有効なことがあります。第1肋椎関節からの痛みが強ければ、うつ伏せでそこのブロックを行えば効果が出ますし、仙腸関節で痛みが出ていれば、斜めうつ伏せで、そこのブロックを行えば効果が出るはずです。(後二つはともにレントゲン透視が必要です。)

 薬もいろいろです。漢方薬は選ぶのが難しい上、効果がなかなかでないこともあります。西洋薬は飲めれば、効果が高くなります。痛み止め、筋肉の緊張を和らげて痛みを軽くする薬、痛みを抑える神経の活動を高めて痛みを感じにくくするノイロトトピン、+胃薬で、効果があればよいのです。また、飲めない方でも、ノイロトロピンは点滴や、静脈注射すると効果が高くなります。プラセンタ製剤をトリガーポイントに注射することも効果があります。プラセンタ製剤は、人の胎盤から抽出して造るため、特定生物由来製剤に指定されています。現代の医学ではわかっていない、ウイルスや、プリオンによる未知なる感染症にかかる可能性がある のですが、結果がわかるのは、何十年も後のことです。ある程度の年齢の方には関係ないと考えます。効果は、更年期障害、炎症、精神的な病気など広く、免疫力を高め、治癒力を高める作用が強い優れものです。他の治療で効果がないときは、行ってみる価値は充分あります。
 精神面の効果の関与が大きい時は、頭の中に直接作用する薬が効くことがあります。うつ病や、統合失調症(以前は精神分裂病)、顔面の神経痛の薬などあり、ペインクリニック(麻酔科)の先生がいろいろ使っています。

治療効果は・・・・

 診察で所見が全くない時は、本人の訴えだけで、改善したか判断しますので、痛みが取れません と言われれば、治っていないと判断せざるを得ません。効果が出なければ、改善目的で、器械によるリハビリの内容を変更したり、薬の変更や追加、神経ブロックなどの治療を加えていくことを勧めることになります。それらの治療を受ける受けないは、本人の希望となります。治療効果も、千差万別で、よく反応して改善してゆく方、少しずつ改善してゆく方、全く反応していないと考えられる方など いろいろです。
 健康保険では、治らなければ、治療を長期に続けられますが、事故による労災、自賠責保険では、終了時点を決めなければなりません。症状が改善しなくなったら、治療を終わらなければいけない決まりにもなっています。(これが症状固定です。)改善が悪かったり、一進一退の時は、後どのくらい治療が出来て、どのくらいの症状が残るか予想をお話しています。つまり、いつを治療の終了にするか、その時どのくらいの改善を望んでいるのか、ご相談した上で、ご希望の治療を選んで行っている現状です。
| 上半身の痛み | 16:47 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
144、首周囲の痛み12

事故の後に続く首の痛み

 いわゆる骨の損傷のない、頚椎捻挫の話です。車に乗っていて追突された時に一番よく見られます。頭の前の部分をぶつけても、力が頚椎に伝わって起こります。→頭部の外傷だけではなく、頚椎捻挫も起こします。
程度や、痛みの出方、治り方で、次のパターンに分けてみました。

1、最初の衝撃が強く、いわゆる、むち打ち症、頚椎捻挫状態になった場合。
 
 頚椎カラーやポリネックと呼ばれる固定具をはめたり、疼痛が強い時は、入院して首を牽引して安静にします。(ベットに仰向けに寝た姿勢で引っ張ります。)骨の損傷がなくても、もともと頚椎の脊柱管に狭い部分があると、脊髄損傷を起こすことがあります。もちろんその場合も、入院安静治療です。 
 最初の衝撃による組織の損傷は、脊髄損傷を除いて、長くても1ヵ月後には治ると考えます。=順調に治れば、1ヵ月後には治っているはずです。
 衝撃が強く、脳脊髄液が少しずつ漏れて、頭痛,吐き気などの頑固な症状が続いてしまう、低脊髄圧症候群(ていせきずいあつしょうこうぐん)と呼ばれる状態は、このうちにはいると考えます。適切な診断治療を行わないと、さらに治りは遅くなり、長引きます。

2、最初の衝撃があったものの、それほど強くなく、軽い頚椎捻挫状態になった場合。
 1〜2週間で治るのが、普通の反応です。

3、最初の衝撃は、ほとんどなく、人身事故にならない場合。
 普通は、症状が出ないので、物損事故として扱われます。

4、痛みがなかなかすっきり取れない、完全に取れない場合。

 1,2の外傷のあと、痛みが取れないため、ずっと通院治療に通うパターンです。徐々によくなって、3,4ヶ月以内でほぼ痛みが取れる時と、半年たっても痛みが続く時があります。
 1のひどい損傷であっても、実際の組織の損傷が残っているわけではありません。後で述べるように、いろいろな障害で、痛みを抑えようとする神経がうまく働くなって、痛みが取れなくなるためと考えています。

5、外傷後しばらくしてから痛みが出る場合
 
 2,3の場合で、後になってから、痛みが強くなってくる、あるいは痛みが出てきます。最初は事故をおこしたという緊張感から痛みを感じませんが、緊張が取れてくると痛みとして感じてくると考えます。受傷後、半日たってから、あるいは翌日から痛みが出てくるパターンです。治りも4のパターンとなり、長引くことが多くなります。

6、外傷直後=最初よりも痛みが強くなってゆく場合

 5に加えて、日ごとに、痛みが徐々に強くなってくるパターンがあります。1のひどい損傷状態でも起こります。最初の2週間(〜4,5週間)ほどで、強くなります。受傷後から治療しているにもかかわらず、痛みが強くなった方がいたので、このことは事実と考えます。受傷後、2週間ぐらいしてから、この痛みで来る方もいます。なぜ、このようになるかは、はっきり断言できないのが現状です。

 4、5、6のパターンが問題です。1ヶ月以上通院する方はこのどれかの状態になっていると考えます。外傷後頚部症候群(がいしょうごけいぶしょうこうぐん)と呼ぶようです。この場合、最初の頚椎捻挫の衝撃の程度は無関係です。衝撃がなくても、最初はたいしたことがなくても、痛くなってくる ということです。

なぜこのようになるか、推測を述べます。

 痛みに対して恐怖感が強い方→注射が怖くて受けられない方に多く見られます。気にする性格の方→痛みが気になりだすと、どんどん強く感じるようになります。+最初の事故を起こしたというショックによる精神的な影響により、自律神経のバランスが崩れる、仕事や日常生活の精神的緊張で自律神経、特に交感神経が過度に緊張する、など、自律神経の関与により、痛みを抑える神経(以前から述べているように、痛みには伝える神経と抑える神経があります。)がうまく機能しなくなるので、辛くなってくる でしょうか。吐き気、めまい、頭痛などを伴うことがあるのも、自律神経の機能が乱れているのは事実と考えます。

 同時に、相手(加害者)がある場合が問題です。自分のせいではなく相手が悪いのだという被害者意識が強く、痛みが少しでもあるなら、なくなるまで通い続けてやる、以前は痛みがなかったのに、この事故のせいで、痛みが出たのだから、痛みがなくなるのが当然だ、 などの心の持ち方も、なかなか治らなくなる原因と考えます。

 また、事故による治療は、交通事故は自賠責保険(じばいせきほけん)、仕事中は労働者災害保険(労災、ろうさい)、(国民皆保険の)健康保険で行う場合は、第三者行為(だいさんしゃこうい)と呼ばれる保険扱いです。通常の健康保険は、通院ごとに自己負担金があるのに対して、これらの保険ではなくなります。治療をお金を払って受けていない感覚(ただで治療を受ける感覚)になることも、通院が長引く原因のひとつと考えます。
 窓口で通院ごとにかかった全額を払う方(後でまとめてかかった費用を自分で相手に請求します)や、健康保険を使う第三者行為でも自己負担金を払って通院する方(普通の健康保険と同じ感覚です。負担金の部分を後で自分で相手に請求します。)は、長期に長引くことは余りありませんし、6までの状態になった(あとから痛みがどんどん強くなった)記憶はありません。

このように、本人の精神面の関与も大きく、痛みを訴え続けると考えます。


事故の時に使う保険の問題点

一方で、
 国民皆保険の健康保険との一番の違いは、長期間(何年も)ずっと治療を行えない =終了時点を決めなければならない ことです。事故とは、本来、最初の一撃で起こる外傷を治療するものです。後から起こってくる痛みで治療期間が長引くことを認めない保険会社も多く、3ヶ月以上かかった例はない と言ってくる担当者もいます。通常、受傷後3ヶ月ぐらい過ぎると、いつまでかかるのか という問い合わせがきます。問い合わせが来たら、おおよそいつまでです と終了する時期を伝えなければなりません。つまり、治療期間を決めなければならなりません。返事は、長くて、受傷後半年位です。

◆△泙拭⊆N鼎靴討い襪砲發かわらず、症状の改善が見られないときは、症状固定(しょうじょうこてい)になったとして、治療を打ち切る決まりです。この状態のとき、一般疾患の治療をするとよくなることがあります。例えば、肩を傷めた後、長引く時は、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)と同じ状態になっています。ヒアルロン酸や、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の注射が効きます。膝を痛めた後の改善が悪い時も、変形性膝関節症の時に使うヒアルロン酸の注射が効きます。腰を傷めた高齢の方では、長引くと骨粗鬆症や、腰部脊柱管狭窄症と同じ症状になっていることがあります。骨粗鬆症の、注射や飲み薬が効いたり、プロスタグランディンが効くのです。

、ところが、事故は、外傷の治療ですから、前述した一般疾患で使う薬が使えません。労災は、特に厳しく、一般疾患で使う薬は認められていません。
 そこで、2,3ヶ月症状の改善が見られずに、一般疾患の治療を行うと改善が期待できる方は、症状固定として、事故の保険での治療を止め、健康保険で一般疾患の治療を行うことを薦めています。
 事故では使えない薬だけを健康保険で治療したことにして使うことも出来ますし、交通事故では、早く治るためなら認めらることもあります が、私は、肩を捻挫した後、肩関節周囲炎の注射をする、などの同一部位では行っておりません。これらの一般疾患も、なかなか症状が改善せず、この日までに治ります といえない病気だからです。その点、健康保険では、治療の終わりを決めなくてもよいので、よくなるまで治療を続けられるからです。

ぁ⊂評固定となったときの残った症状が後遺症です。が、後遺症診断書を書いて提出しても、○○すると痛いや、痛いので○○できない だけでは、認められないのが現実です。さらに、明らかに首が動きにくくなっいても、認められないことがほとんどです。また、事故発症後、半年たたないと認められない などの不合理な制度もあるようです。前述の健康保険に切り替えて治療を続けても、症状がなくなって治癒したわけではないので、半年たったところで、後遺症の診断書を書くことは出来ます。後遺症診断(通常料金1万円)を提出希望の方には、この点を理解していただいてお書きしています。
 半年たっても痛みが残る方は、痛みを全くなくすことは無理 と考えます。何かしら痛みが残るのが通例です。振り返った時だけ痛い、疲れが溜まった時、夕刻になると痛い、雨の日のみ痛い 季節の変わり目、急激な温度の変化のときのみ痛い など、完全に痛みが取れなくなります。かといって、後遺症としても認められない可能性が高いのです。そこで、希望される方は、事故での保険を打ち切って、健康保険で残った痛みを、さらに治療しています。骨粗鬆症、脊柱管狭窄症、変形性関節症など慢性的な病気でない、首、腰の痛みの方は、3,4ヶ月のうちに楽になることがほとんどです。
 私の出身大学の整形外科教室の松本守雄先生の論文では、このように症状が残っても、2,3年後には、時々痛いぐらいに改善している と報告されているようです。早く交通事故の問題は片付けて、気持ちから離れることが重要と考えます。症状が残ったとしても、痛くなったら治療する 程度で済むようになると考えてください。

この治療の終わりを決めることが、一番厄介なことと感じています。
現時点の考えをまとめます。
 
 頚椎捻挫などの軽症の外傷で長引いても、半年をめどに終了します。そのため、4,5,6の状態が最初の2,3週間で出来るだけひどくならないように治療努力をしています。(後述します。)
 症状が固定した状態の方で、一般疾患の治療をすると改善すると考えられる方は、事故での治療を中止として、健康保険で一般疾患の治療に切り替えることを勧めます。
 いずれも、かかられている本人が納得されないと行えません。納得されない方は、他の医院、病院へ、変わって治療を受け続ける のが現状のようです。


ァ∩綾劼裡粥ぃ機ぃ兇両態の方では、違うところが痛くなってくることもあります。頚椎捻挫の後、ときどきあるのが、後から腰が痛くなってくる、肘、手首がいたい、腰椎捻挫の時は、首、膝、足の痛みなどです。この後から出てくる痛みは最初の一撃の外傷によるものではありませんので、事故とは無関係とするのが正しいと考えますが、どの場所を治療しているかは実際はわかりませんので、一連として、治療しています。ただし、病名が付いていない時は、後遺症などでその場所の痛みが残ったとすることはできません。


治療は、まず、最初の痛みを悪化させないこと

 今、このことを目標に治療を行っています。
 最初の痛みが強くならない方は、2回目は通院しない、通院しても2,3回で済みますので、前述してきた問題は全くありません。最初から通院してきている方の痛みをいかに悪化させないか、特に6の状態を避けるか ということです。
 最初の痛みが抑えられないと、どんどんつらくなる可能性があります。行き着くところは、繊維筋痛症(せんいきんつうしょう)と同じです。痛みを抑える神経が全くというほと機能しないため、少しでも治療で刺激すると痛みが強くなります。そのままどんどんつらくなりますので、リハビリなどの治療をしない方がよい状態です。このような状態で来院された方は、納得される方のみ、上記病名で一般疾患として治療を行います。(私は事故の保険ではそのまま行いません。)どのように改善するか、全く予想が立ちませんので、ノイロトロピンの点滴や、静脈注射を行って、経過を診ることが治療の基本です。

まず、痛みに敏感になっていることを抑える

 器械によるリハビリテーションは、星状神経節のスーパーライザー(レーザー)照射を含めて、痛みが出るトリガーポイントなどを次々と照射しています。
 痛みが強い方で注射が受けられる方は、星状神経節のブロック注射を勧めます。従来の方法ではなく、横向きで、第7頚椎第1胸椎間の椎間関節に透視を見ながら行っています。(142首周囲の痛みで10、星状神経節ブロックでわかったこと)この方が、肩甲骨や腕の痛みまでよく効くことと、顔に症状が出にくいからです。この方法で効果が悪い時や、頭痛があるときは、従来の上向きに寝て、第7頚椎の横突起に当てる方法をとります。頭痛が出るときは、すでに痛みが長引く状態に入っていますので、受傷後しばらくしてからです。

 薬は、痛み止めに、痛みを抑える神経の機能を高める(痛みに敏感になっている部分を抑える)作用のあるノイロトロピンを加えて処方します。注射が怖くて全く受けられない方は服用するのみですが、ブロック注射や、筋肉注射は怖くて受けられなくても、静脈注射や点滴(注射の中では一番痛くないです。)なら何とか受けられる方には、静脈注射や、点滴でノイロトロピンを投与します。このとき、吐き気やめまいがあるときは、それを抑える薬も一緒に入れます。

 診察は、必ず関節運動学的アプローチに基づくオリジナル方法を行っています。141首周囲の痛み9で述べたように膝から下をベットからたらしたまま、第1肋椎関節を押さえて、腕を引っ張り挙上させます。強力なストレッチ効果が出るようで、これを行うことで、治療しても痛みがどんどん悪化することは何とか防いでいるようです。

 これらの治療を行っても痛みを強く訴える方には、首の硬膜外ブロックが効果があると考えますが、準備と、施行後のベット上安静に時間がかかりますので、現在のところまだ行っていません。今後の課題です。

 これらの方法は、ここ2ヶ月ぐらいで行っていて確立した治療方法です。まだまだ、治療結果はでていませんが、以前に比べてどんどん痛みがつらくなる方や、長引く方を何とか防いでいる印象です。

痛みが長引いた時の、治療法と問題点

A,最初からひどくない痛みが続いて改善しない時

 痛いところに注射をするトリガーポイント注射(=ブロック)や、プロスタグランディンの静脈注射(後発品=ジェネリックの薬は交通事故では20回ぐらいまで認めてもらっています。労災では認められません。)を加えて行います。効果がある方はこれにより軽快します。ただし、注射恐怖症の方は対象外となります。

B,痛みが辛くなってひどくなっている方

 受傷後、2週以降〜数ヶ月して転医してくる方で、ひどくない痛みが続いている時は、前述の痛みを悪化させない治療で反応する可能性があるため、まず同じに行います。痛みがひどくなっている方は、痛みを抑える神経の機能が悪くなっていますので、ノイロトロピンの点滴や、静脈注射を行います。これらの方は、すでに痛みが長引く状態になっていますので、2,3ヶ月の治療で改善がないときは、中止して当院では健康保険で行うことを伝えています。

 前述した繊維筋痛症は、関節運動学的アプローチの診断に対する反応で、ほぼわかります。この治療手技が痛くてほとんど出来ないのです。このようになっている方はまれですが、来院された時、すでにこの状態の方は、事故での保険から健康保険に切り替える話をします。
 痛みを訴えられても、診察で全く所見がでない方もいます。このような方は、本人しか症状がわかりませんので、2ヶ月ぐらいで変化が見られないときは、健康保険に切り替えて治療することになる と話しています。


 いずれの治療も、本人が納得された上での治療方法です。注射が全く受けられない注射恐怖症の方には点滴も行えないこともありますので、リハビリと投薬のみで経過を診てゆくしかありませんが、症状が改善しなくなると、事故での保険は使えなくなる ということで、治療を受けていただいております。また、治療ゴールは、本人の納得される症状や状態でよいと考えていますので、少し痛みが残っている程度の方は、希望を聞いて本人の希望する治療を行っています。
| 上半身の痛み | 17:02 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
143、首周囲の痛み11

痺れ(しびれ)の話

前回痺れの話を少ししたので、今回はこの続きです。

 整形外科の考えでは、神経が明らかに圧迫されて起こる症状が痺れです。
そのため、明らかに圧迫されていると証明される部位しか、病気として認められていません。その一部を図示します。

痺れるという訴えで、皮膚の感覚が鈍くなる方、筋力が低下する方は少ない

 神経の圧迫が続いていて進行すると、その神経が支配している皮膚の感覚が鈍くなり、筋力が低下する症状が見られます。しかし、ただ痺れが来ただけでは、通常そこまでの症状はでません。痺れが持続しているにもかかわらず、放って置いて、しかも神経が本当に圧迫され続けている方に、この症状が出てきます。これは、きちんと治療しないと回復しない神経麻痺の状態です。痺れが続いている時は、一度、診察を受けられた方がよいです。

実際は、関節障害、腱鞘炎でも痺れます。
 このことは整形外科の診断にはありません。関節運動学的アプローチの考えから来ています。
 関節運動学的アプローチの考えでは、第1肋椎関節(1番目=一番上の肋骨と、一番目=一番上の胸椎の横がつながる関節)が、痛みや、肩こりの原因となるとされます。これは、この関節を麻酔剤でブロック注射すると痛みが取れる方が多いことから事実です。この関節のすぐそばには、腕の先に行く神経が通っているため、この関節に炎症が起きるとその神経が刺激されて、腕の一部に痺れが出るのです。(この関節障害とそのために痺れが出ることは整形外科の考えでは認められていないと思います。)
 
 足趾(あしのゆび)が痺れる、手の指が痺れるというときが、一番わかりやすくなります。診察所見で明らかに足趾(あしのゆび)や、手指の付け根の関節に炎症があったり、手の指の付け根の手のひら側の腱鞘炎があるとき、痺れると訴える方がいます。また、その腱鞘内に、麻酔剤を注入する治療をした後、指が痺れる方もいます。関節や、腱鞘のそばに、神経が通っている時は、その炎症などで、神経を刺激して痺れという感覚が出るのです。


朝だけ手や足が痺れるが、起きて動くと治る は、 正座の後痺れて回復するのと同じ まず、心配は要りません。

 朝痺れが来るのは、寝ている間、上肢、下肢が、神経や血管が圧迫される位置に長い間あったためです。筋力が低下したり、体調が悪くなると、痺れやすくなります。適度な運動を行って、血行をよくし、体調を整えておくことが肝要です。

上肢や手に痺れるとき、脳からの病気を心配する方がいますが、

 片側の上肢のみが痺れるときに、まず脳の障害のことはありません。首から上肢へかけてのどこかが痺れの原因です。
 両側の指全体が痺れるときは、首の部分で、脊髄そのものが圧迫されている可能性があります。持続する時は診察を受けられることを勧めます。
 また、手や、足に痺れが来たときに、何かの別の病気の前触れの可能性はあります。が、痺れだけではそこまでは診断できない。のが現状です。


○○が痺れます。という訴えは、痺れの原因部位がわからないことも多い。

 片側の全部の足趾が痺れる、片側の手のひらから先が全部痺れる、などと訴える患者さんは、どこが痺れの原因がわからないことがよくあります。
両側の手の指、足趾が痺れる場合に、糖尿病などからくる抹消神経炎 という病気がありますが、この状態になっていると診断できる方も少ないです。
頚椎、腰椎から、手の先、足の先に神経が行きますので、頚椎、腰椎の椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症が原因のときもありますが、MRI検査でそれらの病気が証明されても、そこが原因で痺れています。と断言できない場合も多いのです。

 手のひらの親指側が主に痺れる、と訴える方で、実際に圧迫されている原因部位が特定できないこともあります。この部分は、正中神経と呼ばれる神経の領域で、手首の手のひら側の部分で圧迫されることが多く、手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)と呼ばれます。診断する診察方法がいくつもあるのですが、この病気だと確定できないのです。そのような場合は、通常、痺れや痛みが上肢全体や、首まで広がっています。

筋電図が役に立つことがある

 このときに、役立つのが筋電図検査です。ます、筋肉に針を刺して、力を入れてもらって、筋肉からの電気の発生具合を見て、筋肉が正常に機能しているかどうか調べます。=脊髄から手足の先へ行く運動神経が正常に機能しているか、そのうち、どの神経(腕には、正中神経(せいちゅうしんけい)、尺骨神経(しゃっこつしんけい)、橈骨神経(とうこつしんけい)の3つが行っています。)が支配する筋肉に異常があるのか など診断します。
 次に、抹消からの感覚を脊髄の方へ伝える知覚神経の伝導速度(神経の電気信号が伝わる早さ)を測ります。(=神経伝導速度検査、同一神経中には、例えば正中神経には、運動神経と知覚神経同時に走っています。→ひとつの神経はいくつかの神経の集まりです。)部位を選んで電気刺激を与えて、反応する速度を測定します。手から肘までの部位を3箇所測定することで、手のひらの部分の速度に比べて、前腕部分の速度が落ちていることがわかれば、手首の部分で神経が圧迫されて、感覚が伝わりにくくなっている判断できます。つまり、手根管症候群と確定できるのです。
→前項の最後に述べたことと合わせると、手根管症候群が痺れの原因でも、痛みや痺れが首まで広がっていることもある ということです。=痛みに敏感になっているのです。

 この検査の難点は、設定や診断が難しいことです。4,5回検査を行ったぐらいでは、筋肉の電気信号がどうでているか読み取ることが難しい上、神経伝速度検査は、電極の位置の設定が難しく、うまく測定できないこともあります。→神経麻痺が起こってから日数がたたないとうまく出ないようです。
 そのため、この検査を自信をもって行える医師は少なく、その医師を招いて検査をしている病院がほとんどで、検査日が限られている現状です。=すぐにその場で手軽に行うことが出来ません。+針を刺すことの恐怖感(あまり痛くありません)や、神経の伝導速度の測定は、針は刺しませんが、電流を流しますので不快感があるようです。

したがって、治療は、原因である可能性がある所すべてにレーザーを当ています

 レーザー(スーパーライザー)は神経の回復を高める作用が強い治療です。しかも同じ箇所に当て続けるより、次々に部位を代えて当てる方法に向いています。多数のポイントを治療点にすることが出来るのです。痺れの原因部位が確定できない時は、原因となりうる箇所すべてに照射できるレーザー治療を行っています。

ですが、痛みが去った後、痺れが残る、痺れが長い間続いている は、なかなか治らない。

 腰でも首でも椎間板ヘルニアで、痛みが続いた後、痺れだけが残ることがよくあります。 この痺れる感覚はなかなか取れません。ヘルニアが落ち着いて神経の刺激が少なくなるまで根気よく、無理せずに治療を続けることを薦めます。ヘルニアは、局部に負荷をかけずに安静を保つと、へこみます。あるいはなくなります。へこまない場合でも、圧迫されている神経が回復すれば、症状は取れます。腰部脊柱管狭窄症の方も同じです。痛みが取れても、痺れだけが残る方がいます。脊柱管の狭窄は手術をしない限り、形は変わらず、広がるわけではありませんので、圧迫されたままでも、その神経が回復すれば、症状も改善すると考えます。
 経験上、頚椎、腰椎が原因の痺れは、急性期の痛みを伴う場合は、レーザーや、超音波治療などの静止していてできる治療を行い、治療を続けても改善が悪い時に、首や、腰を引っ張る牽引治療に変更すると効果が高い印象です。

 原因部位がわからない場合を含めて、痺れが長い間続いている方も、なかなか症状が取れません。この場合は、症状を改善する治療を選ぶことからはじめます。ひとつの治療で改善が悪い時は、別の治療を選ぶようにしています。
 痺れは自覚症状ですので、診察所見が出ない場合が多いため、本人の訴えだけで、良くなったか、楽になったか判断するしかありません。本人の精神面の関与も大きい場合もあります。仕事で、痺れの原因となる体勢や、行動をとり続けている可能性もあります。診察は、本人にとってはほんのわずかの時間ですから、日常の大部分はどのように過ごしているかはわからないのです。
 関節運動学的アプローチや、器械によるリハビリテーション治療は、根気よく行えば、精神的な原因による症状をも改善する作用があると感じております。
 長い間痺れが続いている方でも、実際に皮膚の感覚が鈍くなったり、筋力が弱くなっている場合は少ないのが実際です。(前述したように、強く神経が圧迫され続けると、感覚や筋肉が麻痺してきます。)同じ痺れだけが続いて、他の症状が出ない場合や、変化がない場合は、まず、悪い状態ではないと考えてください。

いずれの場合も根気よく治療しましょう。


一時的に痺れが来る神経障害

急にきて麻痺まで起こる神経障害です。
これに対して、持続的な圧迫障害は、徐々に痺れから麻痺になります。

 上腕の外側が圧迫されて起こる橈骨神経(とうこつしんけい)麻痺が多いです。手の甲の親指側に痺れが出ますが、はっきり麻痺すると筋肉麻痺が前面にでます。手関節が甲側に上がりません。親指を含めて指も甲側に持ち上がらなくなります。伸びなくなります。上腕部(二の腕)の外側を、圧迫しながら寝てしまった時などに見られます。寝ているので圧迫されていたという認識はあまりないのですが。・・・局部を安静にして回復を待ちますが、外来通院では、仕事など、使いながらですので、少しずつ週単位で回復していって、2,3ヶ月かかることもあります。
 手の小指側が痺れると、尺骨神経(しゃっこつしんけい)麻痺となります。はっきりした感覚障害や、筋力低下の麻痺まで来ます。こちらは、肘頭(ひじがしら)の内側をぶつけた時に、びんと痺れる神経です。橈骨神経(とうこつしんけい)とは違って、肘の後ろの内側を、寝ていて圧迫され、回復しないで来院された方は記憶にありません。別の原因として風邪のウイルスが着く?など考えられますが、原因がわからないことがほとんどです。急に麻痺が来た患者さんを2,3例経験したことがあります。こちらも、肘を安静にして回復を待ちます。持続的な圧迫障害に比べると、明らかに回復は早いです。

神経が圧迫され続けた時の治療

 前項と違い、長期間圧迫され続けて徐々に麻痺が起こったときも、
 まず、固定安静です。動かないようにして安静を保つことで、圧迫されている神経の回復を待ちます。前に述べたように、形が変わらなくても、=圧迫されている状態でも、神経そのものが回復すれば症状は改善します。手関節で正中神経が圧迫されているなら、手首を、肘関節で尺骨神経が圧迫されているなら肘を固定します。ギプスや装具などの、しっかりした固定の方が、安静が保たれるため、=日常生活で使いづらくなるため、回復は早くなります。 骨の形が変わっていたり、腫瘍などで、原因部位の圧迫が明らかな時、強い時は、手術を行い、圧迫の原因を除去します。


 これらの神経の回復には、ビタミンB12を内服することが通常治療ですが、前回述べたように、神経へ行く細い血管を広げる薬(プロスタグランディン)を使うと、回復が早くなります。→プロスタグランディンは、飲み薬より、静脈注射の方が効果があります。

いろいろ述べましたが、

結論は、

 痺れるという感覚は厄介な自覚症状です。実際に神経がこの部位で圧迫されて起こっていると診断できない、感覚障害、筋力低下など、診察所見が出ないことも多く、本人にしかわかりません。そのため、治療して改善したかどうかも本人にしかわかりません。明らかな神経の圧迫障害の治療は学会、勉強会でも論議され、教科書にも載っていますが、そうでないことも多いということです。今まで述べてきた方法がすばらしく効く というわけでもないのです。、本人が症状が変わりません といえば、治療効果が出ていないことになります。長期間、根気よく治療してゆかないと、なんとも言えない方、なかなか改善しない方がいるのは事実です。治療効果が出ないときは、同じ生活を行っている中で、痺れの原因と考えられるものを自分で見つけ、自分でいろいろ変えてみることも必要と考えます。治療は、その方にとっては、ほんの一部の時間です。治すのは本人で、治療はあくまでも治すためのサポートと考えてください。
| 上半身の痛み | 15:01 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
142、首周囲の痛み10

今回は、治療の話で、薬と神経ブロックの話をします。

症状を和らげる薬の話

 一般的に、どの先生も出されるのが、消炎鎮痛薬(いわゆる痛み止め)、筋肉を柔らかくして痛みを和らげる薬、胃の粘膜を保護する胃薬(胃腸に自信がない方は、痛み止めで胃腸に障害が一番でやすいので、)の3種類です。

痛みを感じにくくする薬

 ノイロトロピンと呼ばれる自律神経を調節する作用のある薬は、痛みを抑える神経の作用を強めて、敏感になっている痛みを抑える作用があります。上に述べた3種類(胃薬が必要のない方は2種類)に加えて処方します。飲み薬<筋肉注射<点滴 と、どの方法でも使えますが、<点滴で入れる方が効果が上がります。
 つい2年ぐらい前までは、自律神経を調節する薬は効果があるのか?と思っていました。本格的に使い出したのは、他の病院で、繊維筋痛症(せんいきんつううしょう=痛みを抑える神経が機能しないため、慢性的なつらい痛みを訴え続ける現代の難病)と診断された方が、前の病院で、この薬の入った点滴を受けていたので、そのまま治療を行って欲しい といって来院されたのがきっかけです。何人かに使ってみて、飲み薬でも効果が高いことがわかりました。上半身の痛みはもちろん、下半身の痛みにも効果があります。腰痛から来る下肢痛、変形性膝関節症にも効果があります。ただし、効果がない方もおりますし、効き具合は、人によって千差万別です。副作用は、自律神経の調節作用で、胃腸の機能が変化して、気持ちが悪くなる、下痢する などで、飲めない方に時々遭遇します。錠数を減らして吐き気を抑える薬と一緒に飲むことで、飲める方もいます。
 筋肉注射、点滴投与の方が、逆にこれらの副作用は出にくくなります。

気を調節する漢方薬

 漢方薬は、胃が悪くなるなどの理由で、西洋薬の痛み止めが飲めない方にお薦めです。
 特に、みぞおちが詰まっている、硬くなっている方には有効です。この状態の方は気が上昇して、気逆と呼ばれる状態になっていています。上半身の痛みの初回(129)でお話した背中の痛みに加えて、肩こり、首周囲の痛みで来院されます。レントゲン検査、血液検査では通常は異常が出ません。=西洋医学的には異常無しです。
 130.131の漢方薬の項で述べたことに追加して、私が使っているより具体的な処方薬を話します。
 気逆の状態は、気虚といって、胃腸の機能低下がベースにある状態です。漢方薬は、弱い体質に使う薬が、中心です。背中の痛みだけの時は、当帰湯(とうきとう)と呼ばれるエキス製剤が有効な時もあります。
効果がより高いと考えているのは、延年半夏湯(えんねんはんげとう)、肘後方奔豚湯(ちゅうこうほうほんとんとう) と呼ばれる気逆によく効く薬ですが、これらの薬、エキス製剤になく、保険適応もありません。そこで、含まれているひとつひとつの生薬(しょうやく→ひとつの漢方薬はいくつかの生薬の集まりです。)を調べて、エキス製剤をそれと同じ生薬が含まれるように組み合わせてみました。すると、エキス製剤が3種類必要になるのですが、3つ組み合わせると効果が?ですので、そのうち2つを組み合わせて飲んでもらっています。
 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)をベースにして、桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)竹如温胆湯(チクジョウンタントウ)、場合により、桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシ カ リュウコツボレイトウ)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)のどれかを組み合わせて2剤同時に使っています。はまった(その方にぴたっとあった)時はとても効果が高くなります。
 効果が高いと考えられる保険適応外の漢方薬は、その含まれる生薬を別のエキス製剤を組み合わせて当てはめて使う、というこの発想、実は漢方薬を学びだした頃からすでにあり、書き出していました。。他にもいろいろ考えましたが、実際にはほとんど使っていません。一般では、代用になるエキス製剤が紹介されている場合があります。気逆に、桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)を使っている文献を読みましたので、ほぼこれでよいのだと確信しました。

上肢が痺れている時は、ビタミンB12 だけでは効果が悪いので、血流を改善する薬を加える

 下肢が痺れている時も共通です。痺れるといって処方される薬は、ビタミンB12 と呼ばれる、赤いシートに入っている錠剤です。痺れるという自覚症状はなかなか改善しない場合が多いのです。ましてやこの薬単独では効果が低い場合がほとんどです。私は神経の周りの血流を改善する薬を追加します。軽ければ、ビタミンE の入っている薬ですみますが、効果が高いのは、血管を広げる作用の強いプロスタグランディンという薬です。飲み薬で効果がない場合は、静脈注射の方が効果が上がります。
 閉塞性動脈硬化症で実際に動脈が詰まっている時はもちろん、腰部脊柱管狭窄症による下肢の症状、椎間板ヘルニアなどで上肢、下肢の筋力が低下しているとき、頚肩腕症候群などで、上肢が痺れる時などに有効です。いずれも、圧迫されている神経に行く動脈を広げて、血流を改善させて神経の回復を図ります。
 このうち静脈注射は、以前は、3週間、連日注射を行って効果を上げる投与方法しか、健康保険で認められていませんでした。が、最近、連日来院出来る方は少ないため、期間を決めて、週3回、週2回投与する方法も認められてきました。使いやすくなったのは事実です。ただし、病名は、以前と同じで、閉塞性動脈硬化症が含まれていないと認められません。実際は、より幅広い病気に有効な薬ということです。


神経ブロックの話

 神経ブロックは注射の治療です。麻酔薬で脳へ痛みを伝える神経を遮断します。ある程度の時間、痛みを伝えないようにすることで、その間に、痛みを抑える神経の機能を、伝える側の神経よりもよく働くようにしたり、注射の痛みの刺激で、痛みを抑える神経の機能を高めて、麻酔薬が切れた後も、痛みを楽にする作用があると考えています。

トリガーポイントに注射する。
痛みが出ているところに注射する。

 一番簡単に外来で出来るブロック治療です。皮膚の浅いところに注射しますので、一般の筋肉注射と変わらず、すぐに帰れて、入浴も許可しています。直接神経をブロックするわけではないため、他のブロックに比べて効果は弱いのですが、神経炎と考えられる激痛には、硬膜外ブロック以外では、これが一番効果的と思われた方もいます。
 トリガーポイントとは、痛みによって、原因部位とややはなれた部分の皮下の筋肉が硬くなっているところですが、痛いと訴える箇所に打っても効果がありますので、あまり場所を気にせずに注射しています。
 この場合、打つ薬の内容は麻酔剤でなくてもかまいません。効果はそれぞれ人によって違いますが、強力ミノファーゲン(アレルギーを抑える作用があり、アレルギー状態で痛みが出ている方に有効)、ノイロトロピン(痛みを抑える神経を強める作用)、ノイコリン(神経の伝達物質)、プラセンタ製剤(胎盤より抽出した製剤で、あらゆる回復作用がある)、カルシトニン製剤(骨粗鬆症で、骨が壊れる作用を抑えると同時に痛みを抑える神経を強める作用もあり)などを打つと、より効果が上がる場合があります。

椎間関節(ついかんかんせつ)に注射する。

 腰椎にも椎間関節がありますが、ここでは、頚椎の場合の話をします。
椎間関節は、首では、頚椎の左右に位置する関節です。椎間板などの柔らかい軟骨のクッションはなく、直接硬い軟骨を介して、上下の頚椎をつないでいます。この関節のすぐ前を、上肢へ行く神経が通ります。この部分を神経根(しんけいこん)と呼びます。椎間関節に注射すると、神経根のブロックにも多少なります。(直接神経に当てる神経根ブロックは注射針を当てるのが難しくなります。)
 方法は、横向きで寝てもらって、レントゲン透視を見ながら直接注射します。入れる薬は麻酔薬、数CCです。いかり肩や、首の短い方は、肩を出来るだけ脚の方に下げて寝てもらっても、頚椎の下のほうが、肩の陰影に隠れてしまいます。非常に見にくくなりますが、レントゲンの透視の強度を変えたりして、なれるとわかります。首の短い方でも、通常は、第6,7頚椎の間の、椎間関節まで行うことが出来ます。
 効果は、その椎間関節、あるいは、神経根部分が、痛みの原因になっていれば、痛みが消失します。=かなり劇的に楽になります。一度に2箇所ぐらいまでは出来ますが、椎間関節は、それぞれの頚椎(頚椎は7個あります。)の間にありますから、ある程度、どの椎間から痛みが出ていると確定できないと、行えません。
 危険性は、神経根から脊髄の中に麻酔が入ることはまず考えられませんので、安全です。そのため、5〜10分ぐらい様子を診て帰れます。(ただし、からならず、椎間関節の骨の部分に注射針を当てて麻酔薬を入れることです。透視診断に慣れていない初心者が、より深いところで麻酔薬を入れたらさにあらずです。一方、神経根ブロックは、脊髄の方に薬が行く可能性もあり、血圧下降時、対処できるように点滴で静脈を確保しておき、施行後は2時間は安静にして経過を診る必要があります。)

星状神経節ブロック

 首周囲の痛み8でのべた、第7頚椎の左右の横突起の前にある、自律神経のコントロールタワーです。首や上肢の痛み、痺れだけでなく、アレルギー、顔面の神経麻痺などの顔の症状にも有効です。有効範囲は、肩こりの項で述べた、上腹部までと考えています。(腰の持続する頑固な痛みの方に施行したことがありますが、全く効果がありませんでした。)
 通常、仰向けに寝て行います。首をやや反らして行いますので、この位置が保てない方には行えません。透視装置なしで、行うことが一般的ですが、私は、より確実に当てるためと、針が違うところに行く副作用を防ぐため、透視しながら行っています。
 注射する位置に恐怖感がある方が多いこと、薬を入れるときにかなりの痛みが出る(肩甲骨の方に痛みが走ります。)こと、などにより、それ以上につらい症状にある方で、注射に恐怖感がない方にお勧めしています。
効果は、痛みに敏感になっている方には、どのような場合(病気)でも、てきめんに効きます。
 効果が悪いのは、椎間板ヘルニアで、強く神経根が圧迫されている方、神経炎で、激痛が出てる方 などで、痛みの原因になっている(=刺激されている)大元の神経が落ち着くまでは、痛みが引きません。脳で痛みを記憶していて強い痛みを訴える方も、効果が悪くなります。
 麻酔薬で行うと、打った側半分の顔面に鼻が詰まったり、目が充血したりなどの症状があられます。この症状が出ないようにするためには、麻酔薬ではなく、ノイロトロピンを使います。痛みに対する効果は麻酔薬と同じようにありますが、顔面に症状が出ない分、顔面の症状には効果が悪かったり、アレルギーなどの痛み以外の症状に対する効果は?です。一方、麻酔薬を使うと、顔面にも症状が出ることから、顔面と首周囲の痛みにはかなり有効ですが、首から離れた上肢の痛みには、効果が悪い印象です。
 施行後は、麻酔薬を使ったときは、顔に症状が出てますので、1時間ほど安静にしてから帰ってもらっています。慣れると、15分ぐらいの安静で、顔に症状がか出ていても、帰れますが。・・・・ノイロトロピンを使った時は、顔に症状が出ませんので、15分ぐらいの安静の後、帰ってもらいます。

星状神経節ブロックで、どこにも書いていない、わかったこと

 1年ぐらい前のことですが、
 第7頚椎第1胸椎間の椎間関節に注射した方に、この顔面の症状が表れました。椎間関節ブロックを行ったのに、星状神経節ブロックになった ということです。むしろ、上肢の痛みに効かせるには、こちらの方が効果的であるため、今は、星状神経節ブロックの代用にしています。顔に症状が出ない場合もあり、施行後は、15分ほどベットで様子を診て、顔に症状が出ていないときは帰れます。(顔に症状が出ているときは、1時間ぐらい休んでもらいます。)
 ただし、この部位の椎間関節ブロックは、いかり肩、首の短い方ですと、行うことが出来ない場合があります。レントゲン透視で肩の陰影が濃すぎて、その場所が確定できなかったり、針の刺す位置に肩が来てしまって、針が頚椎まで届かなくなるためです。

第1肋椎関節ブロック

 関節運動学的アプローチの考えに基づくブロックです。レントゲン透視台に、うつぶせに寝てもらって長めの針で、この関節を直接狙って針を刺します。肩甲骨の内側に打つトリガーポイント注射とあまり差がない感覚で受けることが出来ますが、施行前の準備と、施行後は5分ぐらい変化がないか様子を診てもらうことで、より時間がかかります。しかし、この関節が痛みの原因になっているときは、トリガーポイント注射よりも抜群の効果があります。

頚椎の硬膜外ブロック

 首から上肢に掛けての、あらゆる種類の痛みに有効です。ただし、入院して、硬膜外にチューブを留置して麻酔薬を入れ続ける治療に比べると、腰と同じで、効果がかなり劣る印象です。こちらも、レントゲン透視下で行うと、針が別のところにゆくことが避けられる上、確実に硬膜外に入れることが出来ます。点滴で静脈を確保しておくなど、準備に時間がかかる上、施行後の2時間ほど様子を診る必要があるため、緊急では行っていません。=腰のときと同じです。
 痛み以外の、脊髄の圧迫症状(両手先がしびれる、不器用になる、足がうまく送れなくなり、もつれる)や、上肢の筋力低下、しびれには効果が余りありません。また、頚椎の脊柱管が狭い方に行うと、逆に両手に痺れが出たり、違う症状が出ることもあり、激痛の方以外は行っていません。
| 上半身の痛み | 15:48 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
141、首周囲の痛み9

肩こりの話

 この話をするのを忘れていましたので、今回はこれから始めます。
経験されている方が最も多い状態?病気?です。
 肩こりとは、首の両サイドの僧帽筋と呼ばれる筋肉が、緊張して凝りや痛みを訴える状態です。実際の肩とは、医学用語では肩関節のことで、肩こりの部分は肩とは呼びません。しかし、肩が痛い を、肩こりの部分が痛い という意味で訴えて来られる方も多数診られます。通常、肩とは、肩関節の部分を表すことを覚えて置いて下さい。

原因

 上半身の病気すべて、肩こりの原因となりうると考えます。首や、腕の病気とは限りません。
 ときどき、目の病気、耳の病気、あごの関節障害が肩こりの原因になるといわれたりしますが、それに限りません。頭の中の病気、鼻の病気、肺の中の病気、心臓の病気すべて、それらから来る異常状態が、僧帽筋へ行く神経に伝わると、コリとして表れておかしくありません。体のどの部分まで肩こりとして表れるかと申しますと、背中の痛み129で最初に述べた、横隔膜が緊張する状態までは、この筋肉へ行く神経を緊張させて肩こりを起こすと考えます。つまり、上腹部の緊張(西洋医学的には異常無し)や、上部消化管の異常(胃潰瘍、肝臓胆嚢(たんのう)疾患などを含めて)までは、肩こりが起こりえます。

筋力が弱いと、症状をつらく感じる

 私は、肩のこりがひどい と触った他の人からよく言われますが、通常の生活では苦痛として感じてはいません。肩こりと自覚していません。車の運転を長い間続けた時は感じますが、すぐに治まります。普段から首周囲の痛みが出にくくする筋トレ?をしているため と考えています。凝っていても、筋力がある程度あれば、つらく感じない、肩こりと自覚していないことになります。肩こりは、自覚がなければ、つらくありませんので、病気でもありませんし、治療の対象にはならないのです。
 筋肉は僧帽筋だけではなく、肩甲骨を吊り上げておく内在筋(体の深部にある骨にへばりついている筋肉)の筋力が大事ということが、基本と考えます。

長い間緊張状態が続くことをするとつらい症状になる。

 パソコンを長時間する。車の運転を長時間する。などは、腕と頭が緊張して肩こりの原因になります。他人に気を使う話を長時間する。でも構いません。頭が緊張して、上半身が緊張します。肩こりの原因になります。
→緊張しやすい、気を使いやすい性格の方はより肩こりになりやすいことになります。

整形外科の診察では異常無しの、第一肋椎関節が原因

 何回も述べてきたこの関節は、第1胸椎横突起と第1肋骨をつなぐ関節です。
 関節運動学的アプローチ手技で調べると、この場所が原因となっている方が非常に多く診られます。整形外科では認められていない考えですので、この場所が原因という考えはありません。この傍を腕へ行く神経が通りますので、腕の方へしびれが出ることもあります。(この関節の障害でしびれが腕に出るという考えも整形外科ではありません。)緊張状態が続くと、この関節に負担がかかることになるようです。肩こりは、頚椎椎間板ヘルニアなどの首の疾患そのものよりも、前々回お話した頚肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)の症状のひとつとして出ていることが多いのも特徴です。したがって、前々回述べた原因や状況も、すべて肩こりの要因になります。

そこで治療は

関節運動学的アプローチ手技に基づいた、オリジナル治療手技を利用する。

 何度も述べてきましたが、この手技を行うことで、痛みが再現され、痛みの原因部位になっていると診断できると同時に、この関節からの痛みをとる治療にもなります。関節運動学的アプローチ手技を覚えた参考書(=教科書?)には、横向き、仰向け(あおむけ)どちらの体勢で寝ていても出来ると書いてあります。が、横向きで行う方が、疼痛が強い割に治療効果が弱い印象です。=診断はより明確になりますが、治療には向いていません。仰向けに寝て行う方が、治療効果が出ます。仰向けで、肩甲骨が固定されている方が、治療にはよいということです。+本年6月の終わり(ついこの間です)にわかったことなのですが、大腰筋(だいようきん)ストレッチの恰好で行う( 腰痛14、大腰筋ストレッチ参照、オリジナル手技になります)ことで、腰から、首の横(俗に言う肩こりの部分の肩)までの脊柱を支える筋肉のすべての強力なストレッチになり、さらに治療効果が上がるようです。腰が悪い方は、腰まで響きます。今は、治療はこの恰好で行うようにしています。

器械による肩こりのリハビリテーションは

 前回述べた、スーパーライザー治療、超音波治療、トリオによる低周波電流刺激治療、SSPによる低周波治療(それぞれの治療はホームページに出ています)、どれをとっても、はっきりした治療効果の差は出ないようです。それぞれに方に合った治療を選ぶようにしております。

筋力を強化する治療

 繰り返しますが、骨にへばりついた、からだの深部にある肩甲骨を支える内在筋(ないざいきん)をトレーニングすることが重要です。
トレーニングルームで行う通常のトレーニングは、主に、僧帽筋、三角筋などの体の表面の筋肉を鍛えることになります。見た目は、筋肉が盛り上がってきてムキムキになる(死語?)のですが、内在筋はこれらの筋肉の奥(深部)にある筋肉です。
 僧帽筋や、三角筋を鍛えることも大事ですが、その深部にある筋力がより重要と考えます。これらの筋力を強化しても、ムキムキにはなりません。
以下の方法は、私が行っているオリジナル手技です。肩甲骨周囲の内在筋を鍛えることで、肩こり、首の痛み、五十肩、胸郭出口症候群や、頚肩腕症候群など、すべての症状を出にくくする効果があります。これらの筋肉の筋力は、痛みが出にくくするため+運動を行う上での基本筋力と考えてください。実際に運動するための筋力トレーニングではありませんので、いろいろ運動する方は、加えて筋肉を使うトレーニングが必要です。

肩を外側に回す運動

 前々回にチラッと述べた運動です。
 肩の後ろ=肩甲骨の部分に主に力をいれてまわします。肩甲骨の後ろにへばりついている筋肉のトレーニングです。この筋肉は、肩甲骨から上腕骨(二の腕)の肩関節に付いています。
 図のように、前腕部を回すことが、肩を外側に回していることになります。反対側の手で、手首をつかんでおくと、回す側の抵抗力となる上、つかんでいる方の腕が引っ張られます。引っ張られている腕は、肘と肩、肩甲骨部分の筋力のストレッチになり、両側同時の治療になります。ただし、この方法は、なかなかうまく出来ない方が多いため、今はほとんど外来で指導していません。
 こつは、回す側の肘が体から離れないこと、体の前に行ったり、後ろに行ったりしないこと、俗にいう二の腕(上腕)を軸にして固定して回すことです。そして、手首をつかんでいる方の腕が引っ張られる感覚になるまで、しっかり回すことです。洗面する時、鏡を見て練習してください。

 一般的には、ゴムバンドを両手首に巻いて、あるいは、伸びるゴムバンドを両手で持って、手首を左右に広げる運動が知られていますが、同時に左右に広げようとすると、肩甲骨の後ろの筋肉以外の筋肉にも、かなり力が入るのが必定です。一方の手は、動かさずに固定しておく方法がよいです。
 硬いベットに寝て、肩甲骨と、肘を固定しながら(体から離さず、かつ、ベットから浮かないように)行うとより正確に行えます。診察ではこの方法を使います。ゴムバンドは使いませんが、私と力比べをしてもらうことにより、筋力の確認と、痛みが出る出ないの診断確認と、同時に簡単なトレーニングになります。
 トーレーニングルームに、横に引っ張る器械があれば、鏡を見ながら練習できます。(所沢の体育館のトレーニングルームにはありました。)

左右の肩甲骨を背中の中心にひきつける運動

 肩甲骨を上に挙げるため、一番体の深いところにある肩甲骨の間の筋肉のトレーニングです。肩甲骨の柔軟運動(=動きをよくする運動)にもなります。肩甲骨の動きが悪くなることが、四十肩、五十肩、頚肩腕症候群の原因となると考えていますので、この運動も重要です。肩甲骨を、背中の真ん中に近づけるためには、両肩を同時に後方、内方に引く方向に動かします。

 肘を曲げて行うと、五十肩の予防、治療体操になります。ちょうど後ろに手をまわす形になり、この方向に動かなくなる(後ろに手が回らなくなる)のが、五十肩の特徴のひとつです。
 肘を伸ばして行うと、肩と肘のストレッチになります。片方の手で、もう一方の手首をつかんで行うと、つかまれているほうの腕がより伸びますので、ストレッチ効果が増します。つかむ手を換えて、交互に行うとよいです。
 顔を前に残して、この運動を行うと、あごが突き出た形になり、首の筋肉が後ろに引かれる形になります。これは、首の表面の筋肉のストレッチになって、2重あごの改善運動です。私、実はかなり2重あごが強かったので、2重あごがよくならないかと思ってこの運動を始めました。これが、肩関節の痛みにも、胸郭出口症候群(≒頚肩腕症候群のひとつ)の症状改善にも非常に効果があると気づいたのは、後日です。肩甲骨を動かすことが、五十肩、頚肩腕症候群の予防になります。肩甲骨がよく動くこと、柔軟であることも重要なのです。

 これらの運動すべて、回数は、1日2度、洗面の時、鏡を見ながら行うことをお薦めします。一度に、5回から10回ずつで充分です。すぐに終わりますから、癖をつければ、習慣となり、生涯やり続けられると考えています。ただし、やりすぎると筋肉痛が出ます。痛みが強い時はこれらの運動は出来ません。くれぐれも、やり方と、やり始める時期は重要ですので、注意してください。
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