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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
上肢の痛みでわかってきたこと
131、漢方薬が西洋薬より、よく効く場合の話

 前回と同様に申し上げます。西洋薬の効果があるのなら、漢方薬は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

 前回、気を調節する漢方薬を、気を見る中国医学の脈診で選ぶ話をしました。私は、効果が高い漢方薬は、この“気”を調節する種類のものと感じております。しかも、気を調節する薬は、再び後述しますが、上半身のほうが効果がよいと印象です。水、血を調節する漢方薬よりも効果がある印象なのです。
 気”とは、気分の気、元気の気 などの気です。空気を表しているのではありません。漢方的には、気をつくるのは、肺ではなく、消化器です。気が不足している時、気虚と呼ばれ、悪いのは消化器系です。気の流れが乱れているときは、気うつ、気逆などと呼ばれます。気が、みぞおち周囲に、滞っていると、気うつ、頭の方にひどく上昇してくる時は気逆と思ってください。つまり、上半身に主に乱れが集まっています。下半身にも、冷えや、だるさの症状が表れるのですが、治療の効果は、上半身の方がよいのはこのためなのでしょうか?

体調不良のときの諸症状

 更年期障害、自律神経調節障害(失調症)、うつ病、心身症、あるいは、西洋医学的には異常なし(病気になる手前の状態=未病)、などといわれたときの諸症状や、高血圧、糖尿病などの随伴症状(血圧が高い、糖が高い など、検査でわかるもの以外の、いろいろな症状のこと)の改善には、身体に合う漢方薬の方が効果が高くなります。(ただし、ぴったり会う漢方薬を見つけることは大変です。)裏を返せば、血圧を下げる、血糖を下げる、コレステロールを下げる、尿酸を下げる、などには、強くしっかり作用しません。進行した生活習慣病(=成人病)のコントロールの基本には、直接それらの値を下げる西洋薬が欠かせないのです。=漢方薬を含めて、西洋薬以外の民間薬ではこれら病気のコントロールはしっかり出来ません。
 更年期障害の女性には、血を中心に改善する、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)加味逍遥散(カミショヨウサン)当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)の、三大処方が有名です。このうち、痛みを抑える作用が一番よいのは、気の調節力が高い、加味逍遥散(カミショヨウサン)で、他は、痛みを改善する効果は薄い印象です。

風邪に体が負けているとき

 風邪はやはり、外からやってくる”気“です。邪気と呼ばれます。
 風邪を引いた時、寒気が強い、からだが震えて止まらない、ぐったりする、食欲がない、汗をかく、などの症状が出ている時は、風邪の勢いが強く、身体が風邪に負けている状態です。それに対して、熱があっても、熱感があるだけで、食欲もあって、元気な時は、風邪に対して、身体が元気に戦っている状態です。漢方薬(和漢)は、前者のような方には、西洋薬より、効果があります。後者の場合は、中国の漢方薬には効果があるものもありますが、和漢薬は効果が弱いです。西洋薬の方が効果が出ます。中間ぐらいの状態の方には、西洋薬と、漢方薬同時に飲むと効果があります。また、漢方薬はある期間、飲まないと効果がない と思われていることも多いのですが、この場合は違います。風邪を引いてからの日数で、処方を変えますので、すぐに効果が出ないと意味がありません。ぶるっときて風邪を引きそうになったときは、葛根湯(カッコントウ)、風邪を引き出したときに、発熱、関節痛を伴う時は、麻黄湯(マオウトウ)、ひき始めから3日ぐらい経って、風邪が体の中に進入し、明らかな熱、だるさなどを伴っている時は、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)、風邪が長引いて、身体の治す力が弱く、なかなか改善しない時、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)など、時期によって処方を換えなければならないのです。西洋薬のように、最初から最後まで同じ薬という考えはありません。逆に、風邪が長引いているときは、最初から最後まで同じ西洋薬では効果が悪いのです。同じ風邪でも、人によって、時期によって選ぶ処方が異なり、西洋薬より選ぶのが難しい ということになります。

呼吸器の症状で、西洋薬で効果が出ない、飲めないとき

 上に関連して、咳や痰の症状が強く、身体が弱っている時は、漢方薬の方が効果が出ます。西洋薬で、効果が出ない時に、さらに漢方薬を加えて飲むと、効果があることもあります。また、精神的な関与による(気の影響による)、喘息のような咳にも、西洋薬で効きにくい場合があり、漢方薬の方が効果があります。こちらも、身体の状態によって、処方を変える必要があり、すぐに効果が出ないと意味がありません。
 脈では、患者さんの右手首の、検者の左人示し指に触れる部分が“肺”にあたります。(下図)これも気に関与している印象です。肺の経絡(気の流れ)は、上肢にあり、この部分のつぼ治療は、気の障害によって痛みが広がっている手、肘、肩の痛みに効果があるからです。

消化器の症状で、下痢を繰り返す時、腹が張って痛む時

 消化器の運動障害(機能障害)による痛みや、下痢などには、効果があります。これも気から来る精神的に左右されやすい胃腸障害です。便秘に効く西洋薬は多いのですが、下痢を改善する西洋薬は少なくなります。有名な市販薬(薬局で売っている薬)の、正露丸にも漢方成分が入っています。
 脈では、患者さんの右手首の、検者の左中指に触れる部分が“脾”(消化器)にあたります。ただし、上の呼吸器の症状を訴える方を含めて、患者さんの左手首の、検者の右人示し指に触れる“心”の脈が一番強いこともあり(下図)、この場合は、精神的な影響が強い症状 と考えます。この二つの症状も漢方薬はすぐに効果が出ます。すぐに効かない時は、効いていいないと判断し、別の処方を考えます。


漢方薬が痛みに効く時

 またまた申し上げます。西洋薬の効果があるのなら、漢方薬は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

1、炎症があまりない、痛みの原因がひどくない 時の痛み
 
 一般に、痛みを取ることに関しては、西洋薬の切れ味にはかないません。
炎症が強くて痛みが出ている時は、西洋薬の消炎鎮痛剤がもちろん効果的です。炎症が強くない時は、おおよそ、痛みの原因となる部分があまりひどくない と考えられます。このようなときには、逆に消炎鎮痛剤の効果は弱くなります。漢方薬の方が効果が見られるときがあります。

2、痛みは気から の時

 原因が悪くないにもかかわらず、痛みを強く感じている時、漢方医学的には、気の流れが乱れていることが多いです。気虚、気うつ、気逆などと呼ばれます。この、気の流れを改善する薬が、痛みに効果が(あるときが)あります。再び申し上げます。“気”とは、気分の気、元気の気 などの気です。漢方的には、気をつくるのは、肺ではなく、消化器です。気虚という、気が不足している時、悪いのは消化器系なのです。

3、西洋薬の痛み止めが飲めない時

 痛み止めを飲むと胃が痛くなる方は、気虚の状態と考えられます。(=実際に胃炎や胃潰瘍を起こす方は少ないと考えています。)したがって、気虚で痛み止めが飲めない方も、漢方薬の適応です。

4、上半身の痛みの方が効果がある

 気うつは、気が、上部消化管部(みぞおち周囲)に留まること、気逆は、気が全身をめぐるのではなく、そこから頭の方に昇ってしまうこと、です。つまり、気の乱れは、主に上半身に関係する部分です。それに伴って。痛みも上半身に表れる痛みに効果がある印象です。腰や下肢の痛みよりも、背中、首、肩、上肢の痛みの方がよく効く ということです。

5、気の流れを調節する つぼ は、痛みに効く。

 前述したように、漢方薬(和漢薬)にもいえることですが、痛みは気を調節する方がよく改善するのです。つぼは中国医学の考えで、薬は和漢薬なのですが、効果は気を調節することで共通です。つぼは、12通りある経絡という気の流れに沿って在ります。どの経絡の気の流れを調節するかを決める時に、中国式の脈診を使います。したがって、脈診で気を調節する漢方薬を選んでも、効果が出ると考えています。

6、つぼは、トリガーポイントを選んでいることが多い。

 実際のつぼ治療は、トリガーポイントといって、筋肉が硬くしこりになっていて痛みの誘発部位に当てることに加えて、気の乱れている経絡(=気の流れ)のつぼを一つ二つ選ぶ場合が多いです。必ずしも痛みが出ている部分とは違うのですが、どうしても痛みが出ている部分に治療を希望される方も多いため、その痛い場所にも当てることも多くなります。また、純粋に乱れている気の流れ(経絡)に沿って、つぼを回す治療も効果があります。気には流れる方向があります。その流れに沿ってつぼを順番に当てるのです。レーザー(スーパーライザー)治療はこの治療を行うことが出来ますが、電気鍼を元に考案されたSSP治療では、つぼを取って、同時に電流を流す形式になります。
 一般に、これらのつぼを利用して痛みをとる治療も、やはり、下半身より、上半身の方が効果が高い印象です。

次の二つは、気の調節作用による以外に効果的な場合です。

皮膚の感染症の時

 西洋薬の抗生物質は、効果のある菌とそうではない菌があります。特に皮膚に常にいるブドウ球菌は、MRSAといって、通常の抗生物質が効かない菌がいます。そこで、抗生物質を飲んでも、改善が悪い時は、作用の違う抗生物質(MRSAでも効くことが多い)を筋肉注射する。同じ抗生物質でも、点滴すると効果が出ることもあるため、(=抗生物質が効く菌の場合でも、腸からの吸収が悪くて充分効果が出ないときは、直接静脈に投与する方が効果が大きい。)点滴に切り替える。ことをします。ただし、注射が嫌な方、あるいは点滴だと時間がかかって嫌な方なども多数います。そのような時は、漢方薬を追加して飲んでもらうと、効果があります。漢方薬は、単独では西洋薬のように鋭くは効きませんが、この菌には効く、別の菌には効かない ことがないのです。特に、お茶の成分であるカテキンは、細菌だけではなく、ウイルスにも有効です。このような成分の含まれる漢方薬を加えることで、かなりの感染症(=皮膚の浅い部分の)は、改善しています。

むくみの改善

 原因不明のとき、西洋薬ですと、尿を出やすくする薬(=利尿剤)を投与する先生もおられますが、漢方薬の方が、効果がある印象です。外傷後の腫れには、消炎酵素剤という西洋薬を出す先生が多いのですが、ほとんど効果がありません。漢方薬の方が効果があります。水(すい=リンパ液)や、血(けつ=静脈)の流れをよくしてむくみを改善します。
 下腿がむくんでいて、あるいはむくみっぽくはばったい感じで、膝や足に痛みが出ている時は、水の流れを調節する薬が有効です。
 下腿の静脈瘤の腫れの時は、血の流れをよくする漢方薬が有効です。
 外傷直後の腫れも、血を改善する漢方薬が有効で、西洋薬の消炎酵素剤はほとんどむくみには無効です。逆に、外傷後数日してからむくんでくる場合には、水を調節する漢方薬が有効です。


参考;
1、私の脈診での和漢薬の具体的な薬の選び方

 今までは具体的な薬の名前はほとんど出しませんでしたので、これから述べます。漢方処方がわかる方はわかる と思いますが、そうでない方はちんぷんかんぷんと思いますので、読むことを省略してください。
私の独自の薬の選び方です。もちろん、腹診、舌診も重要で、参考にします。
 手首の脈は、寸関尺脈に分けられます。右手首、人示指に触れるのが、肺、中指が脾、薬指が、腎陽=心包、左手首、人示指が、心、中指が、肝、薬指が、腎(陰)を表します。
 まず、心の脈が特に触れるときは、半夏(ハンゲ)が含まれている処方を、肝の脈が特に触れるときは、柴胡(サイコ)を含む処方を、脾の脈が特に触れるときは、桂皮(ケイヒ)が含まれる処方を考えます。心の場合は、名前に心がつく半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)がもととなって、半夏(ハンゲ)を含む処方を考えるようになりました。また、精神的調節作用もある竜骨牡蛎湯(リュウコツボレイトウ)を含む処方も考えます。
 肺の脈が特に触れるときは、呼吸器に作用する=咳を抑える作用もある薬 を考えます。が、前にも述べましたように、精神的な影響を表すと考えますので、
 例えば、肺と心が触れるときは、小柴胡湯(ショウサイコトウ)+半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)=柴朴湯(サイボクトウ)、(=精神的に影響して起こる咳を抑える作用が強い薬です。)脾と肝が触れるときは、小柴胡湯(ショウサイコトウ)+桂枝湯(ケイシトウ)=柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)となります。
 一般に、漢方薬は1種類で効果があるものを選ぶ とされますが、このようにもともと2種類の薬が合わさっている合剤もあります。配合の割合があるのですが、実際は、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)だけ1種類飲むより、小柴胡湯(ショウサイコトウ)と桂枝湯(ケイシトウ)同時に2種類の飲む方が効果があるなど、細かな薬の配合割合より、量が多い方が効果が高いのが、現実です。そこで、私は、2種類までは薬を組み合わせて出すことが多くなりました。もちろん、一緒に出すと、明らかにおかしい薬はありますし、3種類の同時服用は、作用が競合して、効果がわからない印象です。
 胃の調子が悪い方で、主に脾が触れる方は、桂枝(ケイシ)系の薬、一方、心が触れる方は、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)を基本にした、六君子湯(リックンシトウ)などを選びます。心と脾ともによく触れる場合でしたら、半夏(ハンゲ)と桂皮(ケイヒ)が両方入っている、当帰湯(トウキトウ)が考えられます。この薬、背中の痛みには効果がありますが、万能ではありません。実はこの二つをそれぞれ含んだ別の薬を同時に2種類飲むと、具合が悪くなった人もいて、(もちろん飲める方もいます。)作用が競合する印象です。そこで、問診にもよりますが、桂皮(ケイヒ)が入っている薬で、精神的作用の強い、桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシ カ リュウコツボレイトウ)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)、桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)などを選ぶことが多いです。
 腎の脈が特に触れるときは、腎臓の機能を改善する、水を調節する柴苓湯(サイレイトウ)五苓散(ゴレイサン)、特にむくみが出ている時はこの処方です。腰、下半身に痛みが出ている時は、午車腎気丸(ゴシャジンキガン)八味地黄丸(ハチミジオウガン)を考えます。

2、川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)を使う

 この薬、単独で飲むと、効いているのか効いていないのか、さっぱり?な薬です。風邪や、頭痛の時使用します。単独で効果があった方もいますが、自分で飲むと、こういう印象です。ここで、注目したのは、茶の成分(=カテキン)が入っていることです。カテキンはあらゆる微生物に効くと言われます。細菌、ウイルスなど、区別はありません。そこで、皮膚の感染症に使う、排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)に加えて処方してみました。効果はより高い印象でした。漢方薬だけでは、西洋薬ほど切れ味はないのですが、西洋薬のように、効果のある細菌、ない細菌という区別はありませんので、西洋薬の効果が悪い時には、加えてお薦めしています。また、ウイルスにも効きますので、風邪(=ウイルスによるものです)の時も有効です。ひき始めには、葛根湯(カッコントウ)と、ひいてから日数が少したっている時は、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)と組み合わせて飲むと、それぞれ1種類だけ飲むときよりも、効果が高くなります。
(以上は、自分で飲むときもそうしています。)
| 漢方 | 12:53 | - | - | - | - |
上半身の痛みでわかってきたこと
130、ここで、漢方の話

 突然ですが、ここで漢方の話をします。興味のある方だけ読んでみてください。
 用語の詳しい説明などは行いません。漢方のおおよその考え方と、私の漢方に対する独自のアプローチを話します。こんなものかと思ってくださればよいと考えます。
 西洋薬が効果があるのなら、漢方薬は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

 前回、述べたように、漢方医学的には所見が出ていても、西洋医学的には異常無しになる背中の痛みの話をしました。このような、西洋医学で病気と診断できる前の状態を、テレビコマーシャルでも言われているように、“未病”といいます。必ずしも痛みが出るとは限れません。だるい、気分が優れない、疲れる、肩がこる、頭が重い etc いわゆる不定愁訴となることも多いのです。漢方薬を使用してみて、わかってきたことは、痛みを含めたこのような症状のうち、上半身に出る症状の方が、下半身に出る症状よりも効果がよい という印象でした。そのため、上半身の痛みのシリーズで取り上げることとしました。
 漢方とは、もともとは中国医学で、それを日本人に会うように変化させていったものが和漢(日本の漢方)といわれるものです。中国の漢方と和漢では、診察の仕方や、薬の種類や使い方が違います。健康保険で認められているエキス製剤の漢方薬は、和漢に基づいたもので、ほとんどの先生がこちらを使いますので、和漢の考えが主流です。診察の仕方では、中国医学では脈を診ること(脈診といい、手首の脈を診ます。)を重視します。和漢では、腹を診ること(腹診)を重視します。和漢では、脈診は、脈の強弱や、浮いている沈んでいるなどを診るだけですが、中国医学では、脈を触れる箇所をさらに3つの部分に分けます。(=左右計6箇所で、人示し指、中指、薬指を当てて、どの指に脈を強く感じるかで判断します。)そして、そのうちのどの指で感じる脈が変化しているかで体の状態を判断します。この脈を診る診断方法は、中国医学の“気”の流れを判断する根拠にもなります。気とは、元気、やる気、気力などの気です。ここでいう気の流れは、鍼灸の時に使う“つぼ”をつなぐ経絡(けいらく)と呼ばれるものです。つぼ治療では、この中国式の脈診で、どの気の流れの中のつぼを利用するかを決めます。したがって、中国医学では、薬で治療する漢方医学と、つぼを利用して気の流れを改善する鍼灸医学の二つがあることになります。専門医になるには、6年制の専門大学がそれぞれ別々にあると聞いています。いかに奥が深いかがわかります。

 実際には、この気の流れは西洋医学的には証明されていません。漢方医学が西洋医学を学んできた医師に受け入れられない理由のひとつです。そんなものはあるはずがない と言われれば、その通りです。漢方なんかを信じるのか という考えを持っている医療関係者はいまだに多いと思いますが、漢方薬が効くことも明らかな事実ですので、最近では、漢方を使う医者が増えていると思います。私も、漢方薬がどうして効くのか 漢方独自の診断方法でなぜ薬が選べるのか いまだに疑問に思っているのですが、それでも、漢方の診断方法で、選んで飲んでもらった薬で効果が確実にある方がいますので、お薦めしています。

私が漢方治療を行っているわけ

 西洋医学である、整形外科の考え方や、治療だけでは、症状が改善しない方がいる。
 さらに、麻酔科のペインクリニック領域の治療である、神経ブロック治療を加えても、症状が改善しない方がいる。
 =西洋医学の考えや治療だけでは、どうしても改善しない患者さんがいる。
 ただし、また申し上げます。西洋薬、西洋医学治療が効果があるのなら、漢方薬、漢方医学治療(鍼灸医学も含めて)は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

 これが、開業前に勤務していた西窪病院時代のひとつの結論でした。幸いなことに、整形外科を担当するのは、私一人(=整形外科の責任者であり、自分単独の判断で治療方針を決めて、いろいろ治療が出来ました。)でしたので、次に注目したのが、漢方医学でした。
 そこで、漢方治療を行おうとして、まず、その奥深さに驚きました。少しぐらい勉強したぐらいでは、全くわからない分野だということがわかってきました。加えて、当時の病院は院内薬局でしたので、漢方薬(比較的かさばる大きさの箱単位での購入となります。)をそろえるには、薬局が狭すぎて、薬を置くスペースがなかったこと、(=とにかく小さい病院で、待合室、診察室、病室も狭かったです。)内科の先生が、全く漢方を行わない(=前述した認めていない?)先生でしたので、使いづらい状況であったこと、などで、独立して自分で行うしかない(=開業)と考えていました。漢方薬は、めまい、動悸、疲れる、だるい などの症状が含まれるため、どうしても内科医の処方する薬と重なるのです。西洋医学では、いろいろな症状を訴える患者さんには、ひとつの症状それぞれに、ひとつの薬を出すので、すぐに10種類ぐらいの薬の数になってしまいます。一方、漢方薬では、1種類で、いろいろな症状を改善できる場合が多く、薬の種類をかなり減らすことが出来る可能性があります。今まで、何種類も薬を使っていたのが、1種類ですむようになることもあるのですから、患者さんにはありがたいのですが、この違いは西洋医学の考えで薬を処方している先生にとっては、侮辱?になるか と思います。
 この 漢方治療を行ってみたい と考えたことが、開業のための、大きなモチベーションとなったことは事実です。
 そして、開業後に、本格的(=必死?)に独学で学んだのですが、患者さんを診て、この方がどの漢方薬が合うのか と判断することが難しい。=はっきり決めかねることも多いのです。西洋医学では、この症状にはこの薬、と大まかに決められています。選ぶことに苦労することは、漢方薬ほどは考えられません。このことも、漢方医学がなかなか受け入れられない理由のひとつと考えています。

脈診を信じたわけ

 当院では、鍼灸は使っておりませんが、つぼを利用する治療は、SSP治療だけではなく、超音波や、レーザー(スパーライザー)治療、トリオ治療など(すべてホームページ参照)、器械によるリハビリ治療には考え方としては、欠かせませんでした。
 薬を使う漢方治療と、つぼを利用する鍼灸治療は、中国では別々の専門大学があり、別ものと考えますが、“気”という概念は共通ですし、私は何とか結び付けられないだろうかと考えました。中には、気の流れである経絡と、漢方薬を結びつけた本もありましたが、満足できる内容ではありませんでした。そこで、とにかく、つぼの勉強もしようとして、経絡の図を見ていましたが、脈でつぼを選ぶという文献?が目にとまり、脈を真剣に見ることにしたのです。中国医学の脈を診る独特な方法は、和漢では行われていませんが、本で読んで大まかには知っていたことは、幸いでした。
 患者さんの脈を診るようにしていたところ、この脈診は、信じられるものだ という患者さんにすぐに出会いました。それまでは、脈だけでわかるはずがないと思っていましたので、非常に驚いたことを覚えています。その方は、肝炎で、強力ミノファーゲンC(強ミノ)という薬を注射していました。脈を診たところ、肝脈(患者さんの左手首に人示し、中、薬指3本を当てて脈を診る時、中指に感じる脈です。)だけが強く脈打っているのです。驚きました、本当に体の状態が、脈に表れていたのです。
 またある時、出かける予定の甥(当時、小学生高学年)がおなかが痛いと言い出したことがあります。診察道具がないところでしたので、おなかと、脈と舌を見る漢方診察を行った(私は内科は漢方診察します)ところ、舌には消化器が悪くなっている所見もなく、脈では心の部分がよく触れていました。腹だけ診るだけでは、虫垂炎など、明らかに悪い所見はすぐにわかりますが、そうでないとはっきりわかりません。消化器系に負担がかかっていると、ご存知のように口の周りに発疹、水泡が出来きます。さらに、舌の表面も、白や、黄色い苔が出来たりして荒れるのです。地図のような模様も出来ることもあります。脈は、消化器系に負担がかかっているなら、脾(脾臓ではなく、消化器を表します。) の脈が触れるはずです。これは、患者さんの右の手首の脈を検者の左中指で触れる部分の脈です。一方、心 の脈は、患者さんの左手首の脈が、検者の右人示し指で触れる部分の脈です。心とは、心臓ではなく、精神的なもの、こころを表すと考えてください。急に起こった症状で、舌にまだ所見が出ないとしても、虫垂炎などの炎症がある所見なら、脈が速く、浮いて強いなどの症状も加わるはずです。このような状態でなかったため、行きたくないための心因性に起こる消化器の機能障害による腹痛と考えました。私も、小学生高学年の頃、 行きたくない時に、本当におなかが痛くなって、休んだ記憶がありますから、全く同じことが起こっているのだ と思ったものです。
 
飲んでもらう漢方薬を決めることが難しいので・・・

 漢方薬(和漢薬)は、個人個人のその時の状態で選びます。そのための診断は難しく、時間もかかり、それでも、いったいどの薬がその方に一番会うのか 迷うこともしばしばです。
 和漢では、腹と、舌と、脈の強弱、浮沈で診ますが、それだけで、その方がどういう状態にあるかなかなか決められません。そこで、詳しい問診があるのです。いろいろな症状を聞いて、診断します。混雑している外来では時間がなくてとても行えません。そこで、信じるに足りる中国式の脈診を利用して、簡単な問診(=訴える症状)だけで和漢の薬を決められないだろうかと考えました。つまり、腹、舌、中国式脈診+簡単な問診です。
 答えは、おおよそOKという印象です。大きく外れることはありません。脈は漢方で言うところの肺、脾、心、肝、腎(西洋医学の名前が付いている臓器とは少し違う概念です)の状態をあらわしますので、それぞれ、どの漢方薬と結びつけるのかが問題(この考え方では和漢薬は分かれていません)ですが、おおよそうまくいきました。
 おかげで、ある程度、1分間診断の漢方処方が出来るようになりました。これは、全く私の独自の考えですので、正しいとはいえませんが、脈で気の流れを診る鍼灸医学のつぼの考え方と、主に気を調節する漢方薬を結びつけることが少し出来た と考えています。

 次回は、どんな時に漢方薬が効果があるのか や、この脈で選ぶ、気を調節する漢方薬の具体的な話をする予定です。
| 漢方 | 17:19 | - | - | - | - |