2007.11.06 Tuesday
腰痛でわかってきたこと
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の話9
72、骨粗鬆症の治療2
今回は、薬の話です。こちらもいろいろな本に書いてありますので、書いてないことを述べていれば、幸いです。
現時点での骨を強くする治療薬の第一選択薬は、骨が壊れる方を抑える内服薬。
前にお話したように、骨は壊されては造られている生きた組織です。ここ数年で、骨が壊れる方を抑える作用のある薬が、骨の量を増やすことがわかってきて、骨が特に弱い方は、この薬を、第一に考えます。そのうち、朝一番で飲む薬が、特に効果が高いです。食道から、胃にかけての部分で、炎症を起こしやすい副作用が注目されていて、出来るだけ、多くの水と共に飲むように、(200CC以上)その後、また寝ないこと、起きていて、薬がちゃんと胃に入るようにすることがまず大事です。
週一回だけ、飲のめばよい薬も出ましたが、飲み方を間違えて、うまく吸収されないと、効果が出ません。効果が出ない方は、うまく吸収されていないのではないかとも考えています。要点は、出来るだけ水は多く飲む方がよいと考えます。いっぺんに飲めない方は、分けて飲んでください。むかむかする副作用も出やすいのですが、400CC飲んだら、気持ち悪くならなくなったという方もおりました。30分以内に、他の飲み物(コーヒー。牛乳、お茶もです)や、食べ物、薬を飲むと薬の吸収が妨げられます。これも個人差があって、吸収が遅い方は、一時間以上開けた方がよいと考えます。その間、水だけを大量に飲み続け、身体は動くことをお薦めします。
この薬で、骨が強くなる効果があったというデータは、女性だけです。男性の方は効果があるかどうかわかっていません。もともと男性で、治療が必要なほどの骨粗鬆症の方は少ないのです。私も男性の方数人にこの薬を飲んでもらっていますが、まだ骨の量が増えているとはっきりしたデータが出ていません。
一方、朝一番で飲まなくても、一日一回食後に飲めばよい薬もあります。こちらは、女性ホルモンを補う形で、骨が壊れる方を抑えます。(女性ホルモンが減ると、骨粗鬆症が進行します。)したがって、男性の方には投与が認めれていません。閉経後すぐの方には、最も適した薬ですが、血栓が出来やすいため、動脈硬化のある方には要注意です。他にも、女性特有な癌(子宮がん、乳がん)の発生率は下げる、コレステロールを下げるなど作用を併せ持ち、理論上はかなりよい薬なのですが、実際に使用してみて、骨が強くなる効果は、残念ながら、あまりない印象です。
痛みをよく取るカルシトニン製剤の注射
実際の骨粗鬆症の痛みをよく取るのは、週一回行う、この注射です。よくカルシウムの注射と思っている方もいますが、骨が壊れることを抑えて、カルシウムが骨から抜けにくくする 作用のある注射で、カルシウムを打つわけではありません。この注射だけで、骨量が増える方もいますが、一番の効果は、症状をよく改善することです。内服薬でも効いてくると痛みが取れてきますが、骨が壊れることが、ある程度抑えられてからのようで、この注射よりはかなり時間がかかります。
体の中のカルシウムは、ほとんど骨に蓄えられていますが、血液中にある一定の濃度のカルシウムがないと人間は生きていけません。筋肉など機能するときは、必ずカルシウムがいるのです。したがって、カルシウムが不足すると、骨から血液中にどんどんカルシウムを出すようになってしまって、骨がカルシウム不足となり、弱くなるのです。それ(=骨からカルシウムが抜けること)を抑えるのが、この注射です。もとのカルシウム不足を補うために、カルシウム剤の内服、+カルシウムの吸収をよくするためのビタミンD の内服が加えられ、この3者併用が、10年以上前までの骨粗鬆症の治療の定番でした。
なぜ、痛みなど症状をよく改善するのかは、この注射が、それ以外の作用があるためです。
痛みは、伝える神経と、それを抑える神経があります。この注射には、その抑える神経の作用を高める作用があります。他に血流改善作用もあり、たとえ骨粗鬆症でなくても、背中から、腰、下肢にかけての痛みを抑えます。腰部脊柱管狭窄症で、歩くと下肢が痛くなって、立ち止まる方も、少しずつ、痛みが軽くなります。ただし、効果が高いのは、背中から下の下半身です。上半身の痛みを抑える作用はあまりないので、やはり、骨粗鬆症で痛みが出やすい場所と一致しています。
最後に、ビタミンDでも、カルシトニン製剤でも、新しい薬でも、使用すると骨量が増えるというデータが出なくても、骨折しにくくなるというデータがあります。そのようなデータを薬の販売員(MRといいます。以前まではプロパーと呼ばれていました。)が持ってきます。勤務医時代より感じていたことですが、骨粗鬆症の治療に通われてくる方で、大腿骨頚部骨折(股関節の骨折)のような、ひどい骨折を起こす方は少ないのです。その骨折を起こして運ばれてくる方は、ほとんど通院治療していない、初めての方ばかりでした。
私は、これは薬だけの効果だけではないと考えています。通われてくる方は、多少なりとも歩きます。運動します。通院するだけで、リハビリテーションになります。通院すること自体が、骨折を起こしにくくする運動神経を養っているのだと感じております・
72、骨粗鬆症の治療2
今回は、薬の話です。こちらもいろいろな本に書いてありますので、書いてないことを述べていれば、幸いです。
現時点での骨を強くする治療薬の第一選択薬は、骨が壊れる方を抑える内服薬。
前にお話したように、骨は壊されては造られている生きた組織です。ここ数年で、骨が壊れる方を抑える作用のある薬が、骨の量を増やすことがわかってきて、骨が特に弱い方は、この薬を、第一に考えます。そのうち、朝一番で飲む薬が、特に効果が高いです。食道から、胃にかけての部分で、炎症を起こしやすい副作用が注目されていて、出来るだけ、多くの水と共に飲むように、(200CC以上)その後、また寝ないこと、起きていて、薬がちゃんと胃に入るようにすることがまず大事です。
週一回だけ、飲のめばよい薬も出ましたが、飲み方を間違えて、うまく吸収されないと、効果が出ません。効果が出ない方は、うまく吸収されていないのではないかとも考えています。要点は、出来るだけ水は多く飲む方がよいと考えます。いっぺんに飲めない方は、分けて飲んでください。むかむかする副作用も出やすいのですが、400CC飲んだら、気持ち悪くならなくなったという方もおりました。30分以内に、他の飲み物(コーヒー。牛乳、お茶もです)や、食べ物、薬を飲むと薬の吸収が妨げられます。これも個人差があって、吸収が遅い方は、一時間以上開けた方がよいと考えます。その間、水だけを大量に飲み続け、身体は動くことをお薦めします。
この薬で、骨が強くなる効果があったというデータは、女性だけです。男性の方は効果があるかどうかわかっていません。もともと男性で、治療が必要なほどの骨粗鬆症の方は少ないのです。私も男性の方数人にこの薬を飲んでもらっていますが、まだ骨の量が増えているとはっきりしたデータが出ていません。
一方、朝一番で飲まなくても、一日一回食後に飲めばよい薬もあります。こちらは、女性ホルモンを補う形で、骨が壊れる方を抑えます。(女性ホルモンが減ると、骨粗鬆症が進行します。)したがって、男性の方には投与が認めれていません。閉経後すぐの方には、最も適した薬ですが、血栓が出来やすいため、動脈硬化のある方には要注意です。他にも、女性特有な癌(子宮がん、乳がん)の発生率は下げる、コレステロールを下げるなど作用を併せ持ち、理論上はかなりよい薬なのですが、実際に使用してみて、骨が強くなる効果は、残念ながら、あまりない印象です。
痛みをよく取るカルシトニン製剤の注射
実際の骨粗鬆症の痛みをよく取るのは、週一回行う、この注射です。よくカルシウムの注射と思っている方もいますが、骨が壊れることを抑えて、カルシウムが骨から抜けにくくする 作用のある注射で、カルシウムを打つわけではありません。この注射だけで、骨量が増える方もいますが、一番の効果は、症状をよく改善することです。内服薬でも効いてくると痛みが取れてきますが、骨が壊れることが、ある程度抑えられてからのようで、この注射よりはかなり時間がかかります。
体の中のカルシウムは、ほとんど骨に蓄えられていますが、血液中にある一定の濃度のカルシウムがないと人間は生きていけません。筋肉など機能するときは、必ずカルシウムがいるのです。したがって、カルシウムが不足すると、骨から血液中にどんどんカルシウムを出すようになってしまって、骨がカルシウム不足となり、弱くなるのです。それ(=骨からカルシウムが抜けること)を抑えるのが、この注射です。もとのカルシウム不足を補うために、カルシウム剤の内服、+カルシウムの吸収をよくするためのビタミンD の内服が加えられ、この3者併用が、10年以上前までの骨粗鬆症の治療の定番でした。
なぜ、痛みなど症状をよく改善するのかは、この注射が、それ以外の作用があるためです。
痛みは、伝える神経と、それを抑える神経があります。この注射には、その抑える神経の作用を高める作用があります。他に血流改善作用もあり、たとえ骨粗鬆症でなくても、背中から、腰、下肢にかけての痛みを抑えます。腰部脊柱管狭窄症で、歩くと下肢が痛くなって、立ち止まる方も、少しずつ、痛みが軽くなります。ただし、効果が高いのは、背中から下の下半身です。上半身の痛みを抑える作用はあまりないので、やはり、骨粗鬆症で痛みが出やすい場所と一致しています。
最後に、ビタミンDでも、カルシトニン製剤でも、新しい薬でも、使用すると骨量が増えるというデータが出なくても、骨折しにくくなるというデータがあります。そのようなデータを薬の販売員(MRといいます。以前まではプロパーと呼ばれていました。)が持ってきます。勤務医時代より感じていたことですが、骨粗鬆症の治療に通われてくる方で、大腿骨頚部骨折(股関節の骨折)のような、ひどい骨折を起こす方は少ないのです。その骨折を起こして運ばれてくる方は、ほとんど通院治療していない、初めての方ばかりでした。
私は、これは薬だけの効果だけではないと考えています。通われてくる方は、多少なりとも歩きます。運動します。通院するだけで、リハビリテーションになります。通院すること自体が、骨折を起こしにくくする運動神経を養っているのだと感じております・