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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
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コーヒーブレイク
109、私が整形内科医になったわけ2

 今回も引き続き、私の経歴を述べてゆきます。前回は、3番目の出張病院までの話でした。

 4番目の勤務病院は、外傷中心の病院で、ここでも貴重な経験をさせていただいたと思っております。今回は、整形外科でも特殊技術が要る手の外科の話しをします。
 私は、今でも思っていますが、日本で一番メスが 切れるのではないかと思う、手の外科の先生の手術に数多く、助手として立ち会えたことが一番の経験です。勤務した当初は、手の外科を専門にと考えている医局員以外の先生が、研修目的で、その先生の助手についていました。(当時の病院勤務は、医局の人事ですべて決っていました。医局員を派遣する病院を関連病院と呼び、医局員でいる間は、それらの決まった病院を次々に変えながら回ります。ただ、どうしても人数が足りない病院では、医局員以外のフリー?の先生を雇っている病院もありました。)その研修目的の先生が、病院を止めた後(やはり医局に属していないとだめと感じて、自分の出身大学の整形外科の医局に入るとのことでした。)は、私が、助手としてつくことが多くなったのです。

 1年以上経っても骨折がつかなかった時は、骨移植と言って、別の体の部分の骨をとってきて、付かない部分の骨の橋渡しをして、骨がつながることを促す手術を行います。それでも、骨がつかないこともあり、その場合は、血管(動脈)をつけたままの骨を、そのつかない部分にもってきてつながることを促す手術になります。今までお話した下腿の場合では、すねの太い方の骨である脛骨が骨移植をしてもつかないときは、その隣の腓骨を血管をつけたまま持ってきて、橋渡しをします。(=腓骨の中央部分は必要ないという話がありましたね。この場合は、隣に骨を移動するだけですから血管はそのまま切らずに使えます。)その先生は、神経や、抹消血管をつなぐことが大変お上手で、別の箇所の骨を、血管(=動脈)をつけて持ってきて、別の場所の骨の橋渡しをする手術を行っていました。別のところから持ってきた血管は、その場所の血管とつなげる必要があります。確実に血管がつながって、血流が再開しなければならず、非常に高度な技術です。これを遊離の血管柄付き骨移植といいますが、実は、この手術が出来る先生は、手の外科の専門の先生でも少ないのです。後の西窪病院勤務医時代に、その手術を他の手の外科の先生にお願いしたところ、遊離は出来ないといわれてしまいました。結局、隣の腓骨を血管をつけたまま移植することとなりました。さらに後にわかったのですが、私の同級生の形成外科の先生がこの手術を行っていて、教授になりました。(つまり、形成外科の先生が専門にそればかり行うような手術です。整形外科はそれ以外にも多くの種類の手術をこなさなければならず、そこまで専門的な技術を習得することは通常無理です。)非常に時間もかかり、間に、手を降ろして、トイレ休憩も必要です。この大変な手術にいくつか立ち会えたことは、非常に貴重な経験でした。

 骨折の時は、プレートやスクリューで固定して、骨がついた後、それをまた抜くのですが、その先生が骨折の手術を行った後、それらの金属を抜く手術を行うと、ほとんど、癒着していない(=組織がくっついていない)のです。これは、手の外科では特に重要な ア トロウマティック(トロウマティックでない=組織を壊すような方法でない)と言う手技に徹していたためです。組織がくっつかない=癒着しない ことは、腱の手術、血管神経の縫合手術には大切です。腱がくっついてしまえば、動かなくなりますし、血管がくっついてしまえば、開通しません。神経も縫合部から回復して伸びてきません。
 手の外科の手術はこの先生と、2番目の出張病院の手の外科の先生の影響を非常に受けました。手術は出来るだけ組織が癒着しないように、くっつかないように点と線で行います。特に切れた腱をつなぐ時には大変重要です。まず、腱をカンシと呼ばれる道具でつまむと、トロウマティックとなり、それでもうくっつく原因になります。小さな針で刺して持ちます。つまり点で持つのです。(2番目の出張病院の手の外科の先生のお言葉です。)皮膚は誰でもメスで線として切りますが、その後、組織を開いて傷めている部分に到達する時は、手の外科の専門の先生でも、カンシで押し広げてゆくのが通常です。ここでも、出来るだけメスで切ってゆく(=線で行う)と、組織に余計なダメージを与えることなく、くっつきにくいのです。ただし、これは、神経や、血管をそのまま切ってしまう可能性が高いため、神経血管を見極められる高度な眼力と、繊細なメス捌きが必要です。先のとがったメスは重みで切ってゆけば、神経血管を切らないというのが、その先生の持論でしたが、はっきり言って名人芸です。その後、私も真似して行っていましたが、何回か、神経を切っています。

 ノーマンズランドという言葉があります。誰も手をつけてはいけない と言う意味なのですが、指の付け根の手のひら側の部分のことです。この部分は、指を曲げる2本の腱が交差していて、切れた時に、両方元通りに縫うと、くっついてしまい、元に戻らないので、このような呼び名がつきました。そのため、通常、指の両方の関節を曲げることが出来る、深指屈筋腱だけを縫い、浅指屈筋腱はそのまま放置するのです。後の、西窪病院勤務医時代には、これを2回ほど破りました。鋭い刃物できれいにきれていれば、点と線の方法で行えばくっつかないと考えて、両方元通りに縫いました。
 その先生の持論のもうひとつが、手の外科の手術は、手術が50点で、あとのリハビリが50点と言う言葉です。手術が100点満点でうまくいっても、その後のリハビリを行わず、0点でしたら、結果は、50点となり、満足な結果にならず、落第と言う意味です。逆に、手術があまりうまく出来なくても、リハビリが100点で完璧に行えれば、何とか満足行く結果となります。
 したがって、縫った後のリハビリがさらに重要だと考えて、手術時の縫合の強度を覚えておいて、可能な限り、固定中もはずしては、動かせる範囲を動かしました。腱がしっかりつくには6週ほどかかり、その間、固定しっぱなしにすると、くっついて指が動かなくなるからです。
 結果は、2例ともほぼ100点でした。つまり元通りに握れるようになりました。ノーマンズランドならず です。

余談  その病院の勤務中に専門の分野を決めなければなりませんでした。私は脊椎外科にしたのですが、その先生と話していて、先生(=私)は手の外科に行くと思っていたと言われました。手の外科を専門にすることを考えたことも事実ですが、専門分野の応募がかかったとたんに、同級の2人が手の外科専門になると手を上げて、即時に締め切られてしまったため、後から行きます と、非常に言い出しづらくなったことが、あきらめた原因のひとつです。もうひとつは、自身が強度近眼なため、顕微鏡を見ながらの、マイクロサージェリーに目が耐えられるか不安だったことです。その先生の下に、マイクロサージェリー(顕微鏡を見ながらの手術)までやらせていただいたのですが,年を取ってからも、これをずっと行ってゆく自身がなかったのです。それ以後、マイクロサージェリーは行っていませんし、今、この年になって、近くのものが非常に見づらくなっていることも事実です。やはり、長くは持たなかっただろうと感じています。
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