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赤坂整形外科

院長のオリジナルの考えをのせています。今までの考えを残してゆくつもりで筆を執りました。読み物だと思ってください。
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上半身の痛みでわかってきたこと
130、ここで、漢方の話

 突然ですが、ここで漢方の話をします。興味のある方だけ読んでみてください。
 用語の詳しい説明などは行いません。漢方のおおよその考え方と、私の漢方に対する独自のアプローチを話します。こんなものかと思ってくださればよいと考えます。
 西洋薬が効果があるのなら、漢方薬は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

 前回、述べたように、漢方医学的には所見が出ていても、西洋医学的には異常無しになる背中の痛みの話をしました。このような、西洋医学で病気と診断できる前の状態を、テレビコマーシャルでも言われているように、“未病”といいます。必ずしも痛みが出るとは限れません。だるい、気分が優れない、疲れる、肩がこる、頭が重い etc いわゆる不定愁訴となることも多いのです。漢方薬を使用してみて、わかってきたことは、痛みを含めたこのような症状のうち、上半身に出る症状の方が、下半身に出る症状よりも効果がよい という印象でした。そのため、上半身の痛みのシリーズで取り上げることとしました。
 漢方とは、もともとは中国医学で、それを日本人に会うように変化させていったものが和漢(日本の漢方)といわれるものです。中国の漢方と和漢では、診察の仕方や、薬の種類や使い方が違います。健康保険で認められているエキス製剤の漢方薬は、和漢に基づいたもので、ほとんどの先生がこちらを使いますので、和漢の考えが主流です。診察の仕方では、中国医学では脈を診ること(脈診といい、手首の脈を診ます。)を重視します。和漢では、腹を診ること(腹診)を重視します。和漢では、脈診は、脈の強弱や、浮いている沈んでいるなどを診るだけですが、中国医学では、脈を触れる箇所をさらに3つの部分に分けます。(=左右計6箇所で、人示し指、中指、薬指を当てて、どの指に脈を強く感じるかで判断します。)そして、そのうちのどの指で感じる脈が変化しているかで体の状態を判断します。この脈を診る診断方法は、中国医学の“気”の流れを判断する根拠にもなります。気とは、元気、やる気、気力などの気です。ここでいう気の流れは、鍼灸の時に使う“つぼ”をつなぐ経絡(けいらく)と呼ばれるものです。つぼ治療では、この中国式の脈診で、どの気の流れの中のつぼを利用するかを決めます。したがって、中国医学では、薬で治療する漢方医学と、つぼを利用して気の流れを改善する鍼灸医学の二つがあることになります。専門医になるには、6年制の専門大学がそれぞれ別々にあると聞いています。いかに奥が深いかがわかります。

 実際には、この気の流れは西洋医学的には証明されていません。漢方医学が西洋医学を学んできた医師に受け入れられない理由のひとつです。そんなものはあるはずがない と言われれば、その通りです。漢方なんかを信じるのか という考えを持っている医療関係者はいまだに多いと思いますが、漢方薬が効くことも明らかな事実ですので、最近では、漢方を使う医者が増えていると思います。私も、漢方薬がどうして効くのか 漢方独自の診断方法でなぜ薬が選べるのか いまだに疑問に思っているのですが、それでも、漢方の診断方法で、選んで飲んでもらった薬で効果が確実にある方がいますので、お薦めしています。

私が漢方治療を行っているわけ

 西洋医学である、整形外科の考え方や、治療だけでは、症状が改善しない方がいる。
 さらに、麻酔科のペインクリニック領域の治療である、神経ブロック治療を加えても、症状が改善しない方がいる。
 =西洋医学の考えや治療だけでは、どうしても改善しない患者さんがいる。
 ただし、また申し上げます。西洋薬、西洋医学治療が効果があるのなら、漢方薬、漢方医学治療(鍼灸医学も含めて)は、その効果にはかなわない場合が多い ということが大前提です。

 これが、開業前に勤務していた西窪病院時代のひとつの結論でした。幸いなことに、整形外科を担当するのは、私一人(=整形外科の責任者であり、自分単独の判断で治療方針を決めて、いろいろ治療が出来ました。)でしたので、次に注目したのが、漢方医学でした。
 そこで、漢方治療を行おうとして、まず、その奥深さに驚きました。少しぐらい勉強したぐらいでは、全くわからない分野だということがわかってきました。加えて、当時の病院は院内薬局でしたので、漢方薬(比較的かさばる大きさの箱単位での購入となります。)をそろえるには、薬局が狭すぎて、薬を置くスペースがなかったこと、(=とにかく小さい病院で、待合室、診察室、病室も狭かったです。)内科の先生が、全く漢方を行わない(=前述した認めていない?)先生でしたので、使いづらい状況であったこと、などで、独立して自分で行うしかない(=開業)と考えていました。漢方薬は、めまい、動悸、疲れる、だるい などの症状が含まれるため、どうしても内科医の処方する薬と重なるのです。西洋医学では、いろいろな症状を訴える患者さんには、ひとつの症状それぞれに、ひとつの薬を出すので、すぐに10種類ぐらいの薬の数になってしまいます。一方、漢方薬では、1種類で、いろいろな症状を改善できる場合が多く、薬の種類をかなり減らすことが出来る可能性があります。今まで、何種類も薬を使っていたのが、1種類ですむようになることもあるのですから、患者さんにはありがたいのですが、この違いは西洋医学の考えで薬を処方している先生にとっては、侮辱?になるか と思います。
 この 漢方治療を行ってみたい と考えたことが、開業のための、大きなモチベーションとなったことは事実です。
 そして、開業後に、本格的(=必死?)に独学で学んだのですが、患者さんを診て、この方がどの漢方薬が合うのか と判断することが難しい。=はっきり決めかねることも多いのです。西洋医学では、この症状にはこの薬、と大まかに決められています。選ぶことに苦労することは、漢方薬ほどは考えられません。このことも、漢方医学がなかなか受け入れられない理由のひとつと考えています。

脈診を信じたわけ

 当院では、鍼灸は使っておりませんが、つぼを利用する治療は、SSP治療だけではなく、超音波や、レーザー(スパーライザー)治療、トリオ治療など(すべてホームページ参照)、器械によるリハビリ治療には考え方としては、欠かせませんでした。
 薬を使う漢方治療と、つぼを利用する鍼灸治療は、中国では別々の専門大学があり、別ものと考えますが、“気”という概念は共通ですし、私は何とか結び付けられないだろうかと考えました。中には、気の流れである経絡と、漢方薬を結びつけた本もありましたが、満足できる内容ではありませんでした。そこで、とにかく、つぼの勉強もしようとして、経絡の図を見ていましたが、脈でつぼを選ぶという文献?が目にとまり、脈を真剣に見ることにしたのです。中国医学の脈を診る独特な方法は、和漢では行われていませんが、本で読んで大まかには知っていたことは、幸いでした。
 患者さんの脈を診るようにしていたところ、この脈診は、信じられるものだ という患者さんにすぐに出会いました。それまでは、脈だけでわかるはずがないと思っていましたので、非常に驚いたことを覚えています。その方は、肝炎で、強力ミノファーゲンC(強ミノ)という薬を注射していました。脈を診たところ、肝脈(患者さんの左手首に人示し、中、薬指3本を当てて脈を診る時、中指に感じる脈です。)だけが強く脈打っているのです。驚きました、本当に体の状態が、脈に表れていたのです。
 またある時、出かける予定の甥(当時、小学生高学年)がおなかが痛いと言い出したことがあります。診察道具がないところでしたので、おなかと、脈と舌を見る漢方診察を行った(私は内科は漢方診察します)ところ、舌には消化器が悪くなっている所見もなく、脈では心の部分がよく触れていました。腹だけ診るだけでは、虫垂炎など、明らかに悪い所見はすぐにわかりますが、そうでないとはっきりわかりません。消化器系に負担がかかっていると、ご存知のように口の周りに発疹、水泡が出来きます。さらに、舌の表面も、白や、黄色い苔が出来たりして荒れるのです。地図のような模様も出来ることもあります。脈は、消化器系に負担がかかっているなら、脾(脾臓ではなく、消化器を表します。) の脈が触れるはずです。これは、患者さんの右の手首の脈を検者の左中指で触れる部分の脈です。一方、心 の脈は、患者さんの左手首の脈が、検者の右人示し指で触れる部分の脈です。心とは、心臓ではなく、精神的なもの、こころを表すと考えてください。急に起こった症状で、舌にまだ所見が出ないとしても、虫垂炎などの炎症がある所見なら、脈が速く、浮いて強いなどの症状も加わるはずです。このような状態でなかったため、行きたくないための心因性に起こる消化器の機能障害による腹痛と考えました。私も、小学生高学年の頃、 行きたくない時に、本当におなかが痛くなって、休んだ記憶がありますから、全く同じことが起こっているのだ と思ったものです。
 
飲んでもらう漢方薬を決めることが難しいので・・・

 漢方薬(和漢薬)は、個人個人のその時の状態で選びます。そのための診断は難しく、時間もかかり、それでも、いったいどの薬がその方に一番会うのか 迷うこともしばしばです。
 和漢では、腹と、舌と、脈の強弱、浮沈で診ますが、それだけで、その方がどういう状態にあるかなかなか決められません。そこで、詳しい問診があるのです。いろいろな症状を聞いて、診断します。混雑している外来では時間がなくてとても行えません。そこで、信じるに足りる中国式の脈診を利用して、簡単な問診(=訴える症状)だけで和漢の薬を決められないだろうかと考えました。つまり、腹、舌、中国式脈診+簡単な問診です。
 答えは、おおよそOKという印象です。大きく外れることはありません。脈は漢方で言うところの肺、脾、心、肝、腎(西洋医学の名前が付いている臓器とは少し違う概念です)の状態をあらわしますので、それぞれ、どの漢方薬と結びつけるのかが問題(この考え方では和漢薬は分かれていません)ですが、おおよそうまくいきました。
 おかげで、ある程度、1分間診断の漢方処方が出来るようになりました。これは、全く私の独自の考えですので、正しいとはいえませんが、脈で気の流れを診る鍼灸医学のつぼの考え方と、主に気を調節する漢方薬を結びつけることが少し出来た と考えています。

 次回は、どんな時に漢方薬が効果があるのか や、この脈で選ぶ、気を調節する漢方薬の具体的な話をする予定です。
| 漢方 | 17:19 | - | - | - | - |